【投資戦略2015】日本の変化が実感され日経平均2万1000円をめざす=SMBC日興証券・阪上氏

 SMBC日興証券のチーフ株式ストラテジスト阪上亮太氏(写真)は、「15年は、14年に芽生えた日本経済の変化の芽が全般に広がって、日本の変化を実感する年になるだろう。それを受けて日本株は全般に堅調な展開になる」と見通している。特に、実質賃金が上昇に転じることで、日本のデフレ脱却を多くの国民が実感できるようになり、ROE向上など企業体質を強化した日本企業の変化は海外の投資家にも支持されて、日本株買いが盛り上がると語っている。 ――2015年の日本株式市場の見通しは?  15年は、日本で「“変化”が実感できる年」になると考えている。14年は、アベノミクスへの期待で沸いた13年を受けて、その期待が現実に変わる前の疑心暗鬼が出てくる年とみていたが、着実に“変化の芽”は出てきたと思う。15年になると、この「変化」が広く実感できる年になる。  この「変化」とは、一つには「実質賃金がプラスに転じること」だ。これまでのアベノミクスは、大企業に恩恵が偏りがちであったり、株高のみに貢献したとの批判が多かったが、多くの人々の賃金が上がることで、プラス効果の実感がひろがるだろう。実質賃金の上昇はデフレ脱却の確度をより高める結果になると見込まれる。  次に、「企業の変化」も実感できるようになる。日本企業はコーポレートガバナンスが弱い、株主還元の姿勢も低く、ROEも低いと言われてきたが、これが大きく変わったことが実感できる1年になると思う。14年の動きは、たとえば自社株買いを初めて実施した、あるいは、5年以上の期間を経て久しぶりに実施したという企業が目立った。これらが変化の芽となって、15年には広く一般的に、株主還元やROEを意識した経営が広がるだろう。  そして、「日本企業の立ち位置の変化」も実感されよう。来期の日本企業の業績は、現下の円安を主因に、主要国・地域の中で最も増益率が高くなると見込まれる。  このような日本企業の変化は、外国人投資家に高く評価され、企業のファンダメンタルズを見て株式を買ってくる外国人投資家が、これまで以上に日本株投資を活発化させるだろう。14年の外国人投資家の日本株買い越し金額は現時点で1兆円弱程度だが、15年は買い越し基調がより強まるとみている。  日本経済の状況を背景に、日本株式市場はTOPIXで高値1700ポイント(日経平均2万1000円)をめざす展開になるだろう。TOPIX-EPS予想は、1ドル=120円を前提にすると、15年度が110.2ポイント(前年度比+16%)、16年度が123.5ポイント(同+12.1%)。PER15倍で考えると、15年度ベースでTOPIXは1650ポイント強(日経平均2万円)、16年度ベースで1850ポイント強(日経平均2万2500円)となり、15年度中に16年度業績まで市場が織り込んでいく可能性を考えると、TOPIX1700ポイントは、十分に達成可能とみている。  1-3月は強く始まるだろう。3月半ばの春闘の一斉回答日に向けて賃上げ期待が高まり、賃上げの状況を受けて4月に日経平均株価で1万9500円程度の高値をつけるとみている。春闘については、要求水準が4%程度の賃上げで、例年その80%-90%の水準で妥結していることから、3%程度の賃上げが決まりそうだ。中小企業や非正規雇用を含めたマクロベースの賃金上昇率は、それほど大きくないだろうが、ボーナスや残業代などを含めると、日本全体で1.5%-2%程度の賃上げが実現する見通しだ。  4月に高値を付けた後は、米国の利上げ(6月を想定)などの影響で海外市場が低調となり、日経平均株価で1万8000円程度までの調整が入るだろう。利上げ時の米国株価は、5%-10%程度の一時的な株安につながっている。その後、中間決算で企業業績の上方修正などが発表されることで投資マインドが復調し、11月頃には日経平均株価で2万1000円程度を実現するとみている。 ――リスク要因は?  海外に不安定要素がある。たとえば、14年12月に起きたロシアルーブルの急落のように、原油安をきっかけに、鉄鉱石などの資源全般に価格が下落していることの影響が広がる可能性がある。新興国の中でも、原油安の影響を受けやすいロシア、鉄鉱石の輸出比率が高いブラジルなどで、通貨安による国内インフレ懸念が台頭しやすい。新興国経済は総じてインフレに弱いため、通貨安によるインフレが景気を悪くし、その景気低迷が、通貨安を加速させるという悪循環に陥る可能性がある。  そして、ロシアの景気低迷は(貿易面での相互依存が強い)欧州経済に波及する可能性もある。さらに、ブラジルについては欧州の金融機関が海外融資の70%程度を占め、その50%程度はスペインの金融機関に集中しているため、ブラジルの不調はスペインの金融機関のダメージにつながる。このように、ロシアやブラジルの不況は、欧州危機を再燃させる可能性を持っている。  加えて、欧州には5月に総選挙を実施する英国で、EU離脱を唱える勢力が議席を伸ばすと、それをきっかけに欧州に対する懸念が大きくなるようなことも注視しなければならない。  また、資源価格の下落は、地政学的なリスクを増大させることにつながりかねない。    一方、米国の利上げが予想以上に景気に悪影響を及ぼした場合には、現在の想定よりも株式市場の調整幅が大きくなるリスクがある。米国企業は設備投資もキャッシュフローの範囲内で行い、過剰な在庫も持っていないので、利上げによる影響は一過性のものとなり、米国経済は半年ほどの足踏みの後で拡大基調を取り戻すというのがメインシナリオだが、ちょうど、日本が2006年に金利を引き上げた際に、それをきっかけに景気が腰折れしたことと同様の動きが米国で起きることはあり得るリスクとして意識した方がいいだろう。 ――15年の投資テーマとして注目しているのは?  ひとつには、「コーポレートガバナンスの強化」によって、ROEの向上や株主還元重視の企業が活躍するだろう。  次に、「人手不足」が、実質賃金の上昇による消費の好調、また、人材ビジネスなども好調になろう。また、「訪日観光客の増加」は一段と増大する見通しだ。  そして、「地方経済の復活」もテーマだ。中央に比べて地方経済の立ち上がりは遅れる傾向にあるが、賃金上昇なども徐々にキャッチアップして好況が広がるだろう。ここには政策のサポートも効いてくる。円安によってダメージを受ける業種には、それをサポートする政策が打たれるだろう。また、原油安メリットは灯油やガソリンを多く消費する地方経済が強く受けやすいという傾向があるため、この点でも地方経済の活性化が後押しされるだろう。  最後に、「新外需」にも注目したい。円安メリットで従来の輸出企業が取り上げられる展開になっていたが、これから海外進出していく企業、また、海外での活躍が目立ってくる企業は、まだ十分に評価されていないので、これからスポットライトが当たってくると考える。このような「新外需」とは、食品や医薬品など、これまでは内需関連に分類されていた企業に多い。海外に進出することで収益率が一段と高まっているという事例も見受けられ、低収益の企業収益を改善する企業として注目が高まるだろう。(取材・編集担当:徳永浩)
SMBC日興証券のチーフ株式ストラテジスト阪上亮太氏(写真)は、「15年は、14年に芽生えた日本経済の変化の芽が全般に広がって、日本の変化を実感する年になるだろう。それを受けて日本株は全般に堅調な展開になる」と見通している。
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2014-12-30 10:00