日本はまだまだ観光後進国、観光立国英仏に学ぼう!
日本経営管理教育協会が見る中国 第339回--有元舜治(日本経営管理教育協会監査役)
● 訪日観光客1300万人突破確実に
昨年はじめて1000万人を超えた海外からの観光客は今年も順調に増加し、1300万人を突破するのは確実な情勢だ。日本政府観光局の発表によると11月までの訪日客数は昨年の同時期に比べ28%増加して1200万人を突破し、年末までに1300万人を超えると見られている。このペースでいくと2020年に2000万人突破の目標も、2017年にも実現可能な勢いだ。
特に増加が著しいのが中国で、前年比82%増の222万人、首位台湾の262万人(27%増)、2位韓国の248万人(9%増)に迫る。円安効果、10月からの消費税免税制度の拡充、訪日ビザ発給要件の緩和など増加の勢いが増している。
しかし、1300万人を超えるといっても世界の標準からすればまだまだ後進国、外国人観光客が最も多いのはフランスで8500万人、2位はアメリカで7000万人、3位のスペインが6000万人、8位のイギリスが3100万人。日本は韓国などより下位の27位だ。
● 観光産業は最大の成長産業
最近インターネット上で、イギリス人アナリスト、デービッド・アトキンソン氏の観光立国論が話題になっている。アトキンソン氏は1990年代ゴールドマン・サックスのアナリストとして活躍、日本の銀行が抱える不良債権が20兆円にも上るとするレポートを書き、銀行業界に大論争を巻き起こした。
その後彼の主張の正しさが明らかになり、一躍有名になった。彼によると凍結死蔵状態の文化財保護予算を増やすことによって「雇用400万人、GDP8%成長」が実現できるという。「観光産業を世界の平均並みに引き上げるだけでGDPを38兆円押し上げる効果がある」そうだ。観光業は世界ではGDPに対し9%の貢献というのが一般的だが、日本はまだ2%。これを世界標準の9%にすれば38兆円の経済効果があるというのだ。また世界全体でみれば観光業は自動車産業よりも成長率が高く、主要産業の中では最も成長率が高いそうだ。
● 10年、50年先を見据えて発想の転換を
英国は文化財の保護に500億円程度の予算を出しているが、日本は81.5億円。大英博物館を訪れる外国人客が年間420万人、世界に冠たる観光都市京都の外国人観光客は195万人。外国人に魅力のある街づくりをすれば十分なリターンが期待できる。従来型の製造業での繁栄は期待薄。観光業への期待は大きい。3000万人、8000万人の観光客を受け入れるには、日本人にとって住みよい街から外国人にも魅力的で感動を与えられる街づくりへと発想の転換が必要だ。「個人のおもてなし」から「システムとしてのおもてなし」ができるよう、人づくり、仕組みづくりに取りかかろう。本気で取り組まなければ観光立国はおぼつかない。
写真は世界遺産登録された中尊寺金色堂。(執筆者:有元舜治・日本経営管理教育協会監査役 編集担当:水野陽子)
昨年はじめて1000万人を超えた海外からの観光客は今年も順調に増加し、1300万人を突破するのは確実な情勢だ。日本政府観光局の発表によると11月までの訪日客数は昨年の同時期に比べ28%増加して1200万人を突破し、年末までに1300万人を超えると見られている。
china,column
2014-12-31 14:45