「安全性と信頼性」が問題?・・・米カリフォルニアの高速鉄道建設 「中国企業の入札はチャレンジ」=中国メディア

米カリフォルニア州で6日午後、ジェリー・ブラウン州知事も出席して、高速鉄道の起工式が行われた。車両や運行システムの入札はこれからで、中国企業も事実上の参画をする予定だ。ただし、内部事情に詳しい人によると、発注側は「価格面ではなく、安全性を重視」するという。
中国には「中国北方機車車両工業集団(北車)」と「中国南車股フェン有限公司(南車)」という鉄道車両や関連設備製造の二大グループがある。カリフォルニア州の鉄道建設については、北車傘下の唐山軌道客車が、米国企業のサングループUSAと“協力”して、受注競争に乗り出す。
同州内の高速鉄道の全長は1100キロメートル以上になる見込み。まずは現在は9時間かかるロサンゼルス・サンフランシスコを3時間以内で結ぶ路線を2029年に開業させる計画だ。同区間の総事業費は680億米ドル(約8兆1400億円)だ。列車運行の最高速度は時速350キロメートルを想定している。
中国メディアの国際在線は6日付で「米国カリフォルニア州の高速鉄道は編数が多い。中国企業の入札はチャレンジ」との見出しの記事を発表した。
同記事は、サングループについて「株主は100%米国国民、会長は女性で少数民族。会社登記はサンフランシスコ」と紹介。同社関係者は2014年12月時点で「われわれが(入札競走の)トップにあることは間違いない」と述べたという。
同入札には川崎重工業、独シーメンス、カナダのボンバルディアなど、技術面でも実績でも世界を代表する鉄道関連企業が参加するとみられている。
「中国企業は強力なライバルになる可能性がある」との見方もあるが、国際在線は、「楽観はできない」との考えを貫いた。問題は「安全性と信頼性」だ。
記事は、「業界の内部事情に詳しい人」による説明を紹介。発注側は「価格面ではなく、安全性を重視」するという。安全性を重視するのは米国だけでなく、ブラジルの鉄道当局は昨年(2014年)、高速鉄道の入札について「過去5年以内に、重大な事故を起こした製造業者または運営業者は入札に参加させない」と明言した。
中国では2011年7月23日、江蘇省温州市内の高速鉄道路線で、列車の追突事故が発生。中国政府発表によると40人が死亡した。同路線に関係していたのは中国南車で、同社はブラジルにおける高速鉄道建設からは当面「締め出される」ことになった。
カリフォルニア州当局の専門家も、安全と信頼性についての意見を次々に発表しているという。記事は、「カリフォルニアにおける高速鉄道プロジェクトでは、(中国企業は)困難に次々に直面する。難関を突破し変化をもたらすために、どのような戦略と方法を取るのだろうか」と論評した。
**********
◆解説◆
過去に発生した高速鉄道の事故としてはまず、ドイツのエシェデで1998年に発生したICE脱線事故がある。時速200キロメートルで走っていた列車が脱線し、車両が道路橋に激突するなどで110人が死亡した。震動や騒音を抑えるために「弾性車輪」という方式が用いられていたが、「弾性車輪」が疲労破壊したために脱線した。
中国では2011年7月23日に高速鉄道の甬台温線の温州市内部分で高速列車の追突事故が発生した。現場では落雷で電気系統が故障した列車が停車。後から来た列車が追突した。後から来た列車は本来、停車中の列車に先行する列車だった。同事故の原因などについて発表された情報は乏しい。
仏新幹線のTVGは、高速車両が専用線だけでなく、在来線にも乗り入れる。専用線部分で脱線事故は発生しているが転覆など死者を伴う事故は発生していない。在来線で高速車両が絡む死亡事故が発生している。
日本の新幹線は、飛び込みなどによるもの以外、死亡事故は発生したいない。しかし過去に、回送列車の脱線や運転所内の過走などの事故は発生している。また、1990年代には山陽新幹線などのトンネル内で、コンクリート片が落下して通過中の列車の屋根を破損させるなどの事故が発生、問題視された。
2004年10月23日の新潟県中越地震では、乗客を乗せて運転中の上越新幹線列車が脱線した。「運」が幸いした部分もあるが、「列車の構造がそれ以上の被害を防いだ」、「大地震にもかかわらず高架橋が崩壊しなかったなど、全体的な安全性が効果を出した」などの見方が出た。
2011年3月11日の東日本大震災では、大きな揺れに直撃された東北新幹線で、運転中だった列車はすべて強制停止した。うち、仙台駅で試運転中だった列車の一部が脱線しただけで、大きな事故が皆無だったことが大きく評価された。ただし、高架橋の損傷や架線柱の倒壊などの被害は発生した。
また、1995年には東海道新幹線三島駅で、発車間際の車両に駆け込もうとして、閉じた扉に指を挟まれた乗客が動き出した列車に引きずられてホーム端から転落する事故が発生している。
上記三島駅の転落事故のように、日本の新幹線でも、鉄道側の責任による死亡事故がゼロであるわけではないが、当初から安全には十分に配慮し、問題が出るたびに関係者が反省と改善を繰り返すことで、「車両や設備の不具合」による「重大事故ゼロ」を開業以来、続けていると言うことができる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)
米カリフォルニア州で6日午後、ジェリー・ブラウン州知事も出席して、高速鉄道の起工式が行われた。車両や運行システムの入札はこれからで、中国企業も事実上の参画をする予定だ。(イメージ写真提供:123RF)
china,technology,economic
2015-01-08 14:45