中国調達:中国サプライヤーもピンキリ、ただその落差が半端じゃない

誰も知らない中国調達の現実(233)-岩城真   日中関係が政治的には大きく後退しても、経済的には後退できないのが現実である。人件費の高騰や人民元高によって、生産、輸入は、アセアン諸国等にシフトしている製品がある一方、依然として中国生産に圧倒的な優位性のある製品群(筆者の専門とする重機械鋳鍛鋼部品ほか)も少なくないことは、今までのコラムで度々書いてきた通りである。   だからと言って、従来取引していた沿海部の取引先とだけ取引を続けているというわけではない。取引先は、沿海部から内陸部へ、外資系から中国ローカルへと確実に移行している。円安人民元高といわれながらも、日本で作って中国で売るということが許される製品は限られる。中国ビジネス(販売と調達)は、以前にも増して混沌とした環境が拡大していると筆者は見ている。   最近まで筆者は、中国で生産(調達)し、日本に輸入するといったビジネスに携わってきたが、少し前から中国で生産、中国で販売というビジネスにも携わるようになった。そこであらためて感じていることは、中国には、中国全体を網羅するような“標準”や、“ふつう”、“一般的” などとういう尺度はないということである。   沿海部にあるハイレベルのサプライヤーは、日系企業との取引にメリットを感じなくなっている。日本の技術者から見ると“まだまだ”の技術も、彼ら自身は、今さら日本から学ぶことはないと思っている。日系企業の下請けに甘んじて、薄利の商売には辟易としているのである。平たく言うと、日系のラブコールにはなびかないのである。実際、人件費が高騰している沿海部では、日系元請に上前を撥ねられたら利益はなくなってしまう。その結果、日系のラブコールに振り向くのは、内陸部の中国ローカル、酷く失礼な表現をすると“キリ”に近い企業ということになる。   一方、豊かになった中国の顧客、ひとことで言うと“ピン”の顧客は、それなりの品質を求めてくる。そういう顧客は日系というブランドに弱い。そういった意味では、日系企業に活路があるかに見えるが、既述のように、いくらなんでも日本から輸出したのではコストで太刀打ちできない。その結果どうなるかというと、内陸の“キリ”のサプライヤーとタッグを組み、“ピン”の顧客へ販売しようという話になる。   中国企業とタッグを組む一番の理由は現地に生産拠点を得ることだが、それ以外に、中国ビジネス特有の部分を彼らに任せられるという期待もある。日本では「標準は○○」、「ふつうは××」、「一般的には△△」といった業界や製品特有の常識というものがある。中国にはないのかというと、ないことはないが、業界すべてを網羅するような常識はないに等しい。ところが、その辺の事情を知らない日系企業が「パートナーだって、曲がりなりにもこの業界で何十年も飯を食ってきているのだから」といった日本的感覚で、パートナーの言葉を鵜呑みにしてしまうととんでもないことになる。何十年の経験と言っても、“キリ”対“キリ”のビジネスを経験しているだけなのである。   力のある企業をパートナーとして選べば苦労は少ないが、合併事業の主導権を握られ、いいように利用されるだけになる。一方、日本企業が主導権を握れるようなパートナーは、中国内では負け組、つまり頼りにならない。じゃぁ、どうしろというのか?というと、負け組をパートナーにして、いっしょにヤケドするか、独資で乗り込み、ひとりで汗を流すか、なのだそうだ。いずれにしても、誰かを頼っていては果実は得られないというのが中国ビジネスだ。   ある友人の言葉が思いだされる――「百万元の機械を売りたいのなら、はじめから百万元の機械の営業をしなさい。一万元の機械をどんなに売っても、百万元の機械を売るノウハウは学べませんよ。」(執筆者:岩城真 編集担当:水野陽子)
日中関係が政治的には大きく後退しても、経済的には後退できないのが現実である。人件費の高騰や人民元高によって、生産、輸入は、アセアン諸国等にシフトしている製品がある一方、依然として中国生産に圧倒的な優位性のある製品群(筆者の専門とする重機械鋳鍛鋼部品ほか)も少なくないことは、今までのコラムで度々書いてきた通りである。
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2015-01-13 01:30