日中韓の富裕層――止まらない格差拡大

日本経営管理教育協会が見る中国 第342回--下崎寛(日本経営管理教育協会会長)
平成26年10月に国税庁から「平成25年国外財産調書」が発表された。(平成25年より年末で国外財産を5000万円超保有している日本人について申告義務がある。)
その結果を見てみると、提出件数は全国で5539件、驚くことに平均申告金額は1人当たり5億円弱、その海外財産資産別内訳は、全体で有価証券が62%、預貯金15%、不動産10%等となっている。日本人の海外投資形態は有価証券、預貯金等の金融資産が77%となっており、海外不動産が少ないとの印象がある。しかし、この数字は、まだ申告初年であり、国税庁側は、申告漏れも多く、申告対象件数はこの5倍はあるものと推測されている。
クレディスイスの「ワールド・ウェルス・レポート2014」による世界の超富裕者(総資産5000万ドル(50億円)以上)を見てみると、アメリカが断トツトップ(6万2858人)であり、2位が中国(7631人)、日本は7位(2887人)、台湾は12位(2037人)、韓国は14位(1871人)となっている。この結果を見ると、中国の超富裕層は、日本の3倍となっている。近年では、中国の富裕層の伸び率が著しいといわれており、共産党幹部による地位を利用した不公平な蓄財をはじめ、シャドーバンキング関連の金融商品から莫大なリターンを獲得し、資産を拡大させているという。中国においては、相続税がなく、雇用にしてもコネが効く社会であることから、貧富の差が拡大し続けるであろう。
一方、韓国放送公社(KBS)ニュースによると、韓国の中所得層の平均年収は2510万ウォン(約239万円)だが、長者番付総合トップ100人の平均年収は215億ウォン(約20億円)で、中所得層のおよそ860倍に上ることが調査で明らかになっている。韓国においても、財閥中心による不正蓄財、不公平な雇用問題があり、韓国においても貧富の差が拡大している。
最近話題となっているフランスの経済学者トマ・ピケティ著『21世紀の資本』によれば、長期的にみると、日本をはじめ中国や韓国においては経済成長率が鈍化する傾向にあり、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きいと富の集中が起こるため、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積される。そして、富が公平に分配されないことによって、社会や経済が不安定となるといわれている。
貧富の格差を縮めるには政府による労働資源の配分や保障制度の充実化だけでは不十分であり、より多くの就労機会を生み出すと同時に、貧困層の就労能力を引き上げる対策を講じる必要がある。特に、中国においては、この舵取りが今後の問題であろう。(執筆者:下崎寛・日本経営管理教育協会会長 編集担当:水野陽子)
平成26年10月に国税庁から「平成25年国外財産調書」が発表された。その結果を見てみると、提出件数は全国で5539件、驚くことに平均申告金額は1人当たり5億円弱、その海外財産資産別内訳は、全体で有価証券が62%、預貯金15%、不動産10%等となっている。日本人の海外投資形態は有価証券、預貯金等の金融資産が77%となっており、海外不動産が少ないとの印象がある。
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2015-01-21 11:00