「反中国で東南アジアに投資が流れた」は本当か?

 2015年がスタートしてもうすぐ1カ月経過です。世界情勢の流れは本当に早いものです。表向きのメディアでは、反中国で東南アジアに投資が流れた等と報道されています。いろんなセミナーに行っても、そういう論調が多いです。  一方でアベノミクス、黒田マジックにより円安に向かって。現在は約118円程度で推移しています。(1月20日現在)、ここで今いちど数字を踏まえて、本当に中国からの投資が離れているのかを確認しました。  一言で言うと、「経済的な中国離れはデータ上からは見られないだけではなく、また中国に戻りつつあることを示している」でした。  TVのコメンテーターや、本や新聞の寄稿もどの時点でのデータを利用し、コメントしているかわかりませんが、有名な方であればあるほど2次情報(私見入り)が拡散されてしまい、直近の情報が見えにくくなります。政治の緊張が解けつつある中で、経済の動きはもっと現実的な対応をしています。  そのシフトしたといわれるインドネシアの経済成長も、原油安や政権運営の見通しの悪さ、米国金融緩和縮小等の影響を受けて、第4四半期の成長率見込みは4.9%です。このところはずっと5%台で推移、それ未満に落ち込むのは過去5年間で初めてです。 やはり「消費地としての中国」の魅力が再び動き始めている予感がします。 ■1. 貿易の動向 (※ 以下、財務省HPからJETROがまとめた数字を使用) ・2014年1-10月まで累計(ドルベース)、(  )内は同期前年比 (期中平均1ドル103.5円(2013/12)→108.1円2014/10) 世界:輸出5,808億ドル(96.9%)、輸入6,894億ドル(99.5%) 中国:輸出1,061億ドル(99.8%)、輸入1,518億ドル(101.6%) ASEAN:輸出880億ドル(94.1%)、輸入997億ドル(99.1%) ・2012年と2013年の前年比は下記の通り。(  )内は同期前年比 (期中為替レート1ドル=79.8円→97.6円) 世界:輸出7,192億ドル(89.8%)、輸入8,389億ドル(94.4%) 中国:輸出1,299億ドル(89.7%%)、輸入1,822億ドル(96.4%) ASEAN:輸入1,117億ドル(86.0%)、輸入1,186億ドル(91.5%)  貿易の観点から下記の3点が言えます。 (1) 2012年から2013年にかけて急激に円安になり、特に輸出が前年比で大きく下回ったものの、2014年はどのダウン分がほぼ押さえられている。 (2) ASEANと中国の比較の中で、この2年間共に、円安による中国貿易の落ち込みは中国の方がASEANに比べて最小限にとどまっているし、貿易上中国の政治的リスクによるASEANへの貿易上のシフトは見られない。 (3) 中国側から見ると、日本に対する貿易黒字となり、非常に有難いお客様である。(日中間の政治リスクを高めて、経済的なシュリンクはあまりメリットがない) ※ちなみに2014年中国は、日本にとって貿易依存度は約20%。 ■2. 対外直接投資の動向 ・2014年1-9月合計( )は前年比 世界:104,011百万ドル(77%) 中国:6,500百万ドル(71.4%) ASEAN:7,839百万ドル(47.3%) インドネシア:3,100百万ドル(71.4%) タイ:2,784百万ドル(27.4%) ・2012年と2013年の比較 ( )は前年比 世界:135,049百万ドル(110.4%) 中国:9,104百万ドル(67.5%) ASEAN:16,587百万ドル(259.3%) インドネシア:3,907百万ドル(102.0%) タイ:10,174百万ドル(1861.3%)  上記のデータからが言えることは、下記の3点です。 (1) 海外直接投資は2014対世界全体的に、前年度割れになっている。円安水準が進んだ2013年と比較して少し遅れた形で2014年の実績に表れている。 (2) 中国に対する日本の直接投資は、2013年に落ち込んだものの、2014年は対世界平均と比較しての前年比はほとんど変わらない。投資金額では、回復とまでは言えないが、投資がASEANにシフトした2013年とは傾向が変わってきている。 (3) ASEANの数字の変動はタイが大きく暴れたため(2011年の洪水による2012年の落ち込み及び2013年の急激な投資、そして円安による投資の冷え込み)  以上です。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
2015年がスタートしてもうすぐ1カ月経過です。世界情勢の流れは本当に早いです。表向きのメディアでは、反中国で東南アジアに投資が流れた等と報道されています。いろんなセミナーに行っても、そういう論調が多いです。
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2015-01-23 10:30