中国人の日本観光―「爆買い」から「体験型」へ

日本経営管理教育協会が見る中国 第343回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員) ● 急増した日本への年末年始の旅行客   この年末年始、日本列島は海外からの旅行客、特に中国人観光客であふれた。   大晦日の夜に神社や寺院を訪問し除夜の鐘を聴くというツアー、雪を見ながら露天風呂で日本酒を飲む日本式の温泉体験するツアーなど、中国の旅行会社が企画した様々な商品が次々とヒットした年末年始であった。   2014年に日本を訪れた外国人は過去最高の1300万人に達した模様だ。11月の訪日外国人数は前年比39%増、伸び率が最も高かったのは中国で、103%増の20万7500人、14年通年では前年の2倍に近い240万人になると予想されている。(日本政府観光局から引用)   第341回のコラム『増加する中国人観光客に真の「おもてなし」を』では、中国人観光客へのあるべき「おもてなし」について提案させていただいたが、今回は、少し異なった視点から見た「日本的おもてなし」について述べてみたい。 ● 買い物ツアーから素朴な体験型の旅行に   年末年始ツアーでは、前述の除夜の鐘・温泉雪見酒体験ツアー以外に、新春初詣ツアー、初売り訪問ツアー、スキーツアーなどが人気だった。特に、都内百貨店で元旦から販売される福袋を買いに行く初売り訪問ツアーだが、中国人はこの福袋を1人10個以上まとめ買いをするそうだ。購入した商品を大きなダンボールにつめて、そのまま空港に移動、空港では想定外の荷物の多さに、飛行機の出発が遅れるハプニングまで出ている。   某新聞では「爆買い」という新語まで生み出したこの正月イベント、日本と中国双方にとって、確かに効果は大きかった。   年間2兆円と、日本の個人消費の1%に迫る規模に膨らみ、彼らの訪日での消費も日本経済にとっては重要な要素だが、他にももっと日本らしさを見てほしいと筆者は思っている。 ● 新たな「おもてなし」を探る   先日、入魂(じっこん)の朋である中国人と会話する機会があった。彼は中国人を日本の有名な観光地ではなく隠れた穴場へ案内するというビジネスに転換して成功を収めている。   日本の代表的な観光地、富士山や京都の金閣寺を案内しても、これらは中国人観光客なら誰でも立ち寄る場所であり、中国で話しても自慢にならない。そこで彼は、有名観光地を一通り訪問した後は、日本ではとても観光地とは思われないような場所に案内するそうである。例えば、大阪府豊中市に地域密着の庄内神社がある。毎年秋になると、ごく普通に秋祭りが開催される。地域の祭りなので当然外国人観光客はいない。同市は大阪市北部のベッドタウンであり、観光地ではないので観光協会がない。従って観光パンフレットもない。しかし中国人旅行客にとってはそれが新鮮でいいようだ。周囲に同朋がいない、地元の祭りに参加して日本の庶民のごく普通の生活に触れるという一般観光客とは一味違った体験をすることで、優越感にひたってもらおうというのである。   元来見栄を張りたがる中国人、周囲の中国人が行ったことのない場所に案内し、そこではっぴを着て日本人と一緒になって神輿を担ぎ、一緒に写真を撮って、日本の文化に触れてもらう。「おもてなし」は日本の独特の文化であるが、「体験型」のおもてなしにも挑戦して、日中友好のさらなる発展を願いたい。   写真は新春で賑わう西宮神社。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子) 
この年末年始、日本列島は海外からの旅行客、特に中国人観光客であふれた。大晦日の夜に神社や寺院を訪問し除夜の鐘を聴くというツアー、雪を見ながら露天風呂で日本酒を飲む日本式の温泉体験するツアーなど、中国の旅行会社が企画した様々な商品が次々とヒットした年末年始であった。
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2015-01-28 11:30