原油安、ギリシャで2月も変動幅大?外為オンライン佐藤正和氏

1月は、スイスフランショックを皮切りに、カナダドルの急落、ギリシャの政権交代、原油安などなど、金融市場を大きく揺るがす事態が数多く発生した。米ドルの独り勝ちが続いている状態だが、スイスフランのようにかつて経験したことのないボラティリティの大きな価格変動も起きている。日々、方向感の定まらない為替市場が続いているが、2月相場でも同じような不安定なマーケットが続くのか……。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、2月相場の行方を伺った。(写真は外為オンラインの佐藤正和氏、写真撮影サーチナ)
――毎日のように方向性が変わる不安定な相場が続いていますが、その背景には何があるのでしょうか?
やはり原油価格の下落が止まらない、というのが大きなインパクトを与えているのだと思います。半年前には1バーレル=100ドルを超えていた原油価格が、いまや44ドル(1月29日現在)にまで下落しました。
原油価格の下落は、一見産油国以外にはメリットばかりのように見えがちですが、金融市場を中心にグローバル化が進んでいる現代では、そう単純なものではないようです。原油価格の下落によってもたらされるデフォルト(債務不履行)のリスクなど、金融市場はどうしても大きなボラティリティを強いられそうです。
ただ、さすがに原油価格も40ドル台程度で下げ止まるのではないでしょうか。30ドル台まで下落するという見方を示す専門家もいますが、チャートではすでに底値に近い状況を示しています。さすがに、最近は下落のスピードや反応が鈍くなっているように思えます。
――原油安の影響で米国の利上げが遅れるという見方もあるようですが……?
市場では、原油安に加えて、欧州景気の低迷や中国の成長鈍化などがあり、FOMC(連邦公開市場委員会)の声明文でやや弱めの景気判断が示されるのではないかと不安視されていました。しかし、1月28日に発表された声明文では「相当な期間」という文言が外されて「辛抱強く」という言葉がそのまま残りました。今年6月にも予定されている「利上げ観測」はそのまま維持され、当面は米国金利上昇のシナリオが継続されたことになります。その影響で、しばらくはリスクオフの状況が続くかもしれません。
一方の日本は、日銀が金融政策決定会合で2015年度の消費者物価(コアCPI)の見通しを、従来の1.7%上昇から1.0%上昇に引き下げたこともあり、日銀による第3次量的緩和政策いわゆる「黒田バズーカ―砲第3弾」も、そう遠くないうちに実施される可能性が高いかもしれません。
原油価格下落のスピードとも関係してきますが、おそらく3月以降になると思います。ただ、黒田日銀総裁は市場予想の裏をかくのが得意ですから油断は禁物です。仮に、バズーカ―砲第3弾があれば、為替は1ドル=125円超えは確実であり、平均株価も日経平均で2万円程度にまで上昇する可能性があります。
――追加緩和があるとしたらどんな内容になるのでしょうか、また2月のレンジは?
日銀によるバズーカ―砲第3弾の内容は、いろいろ取りざたされていますが、国債買取りはもう増やせない状態ですから、地方債買取りなどに行くのではないかと言われています。12月の消費者物価指数が間もなく発表になりますが、市場予想では0.2%程度。状況次第では、マイナスに転落する可能性もあり得ます。
そういった状況を考えると、2月のドル円のレンジとしては、1ドル=115円-120円というところでしょうか。当面は荒っぽいボックス相場が続く可能性があります。
――スイスフランショックやギリシャ政権交代で「ユーロ」はどうなりますか?
スイス中央銀行が3年間続けて来たユーロ買い政策を突然放棄し、その影響で一瞬にして4割もスイスフランが高くなりFX市場に激震が走りました。加えて、ギリシャでは総選挙に勝利した反緊縮政策を掲げるチプラス新内閣が登場し、政権交代が実現しました。
ギリシャの政権交代が、そのまますぐにユーロ離脱というシナリオにはならないと思いますが、金利の急騰などによってギリシャ国債の債務不履行やユーロ離脱といった事態に陥る可能性もあるかもしれません。とりわけ、こうした動きがスペインやイタリアにも飛び火しないか、きちんとウォッチして行く必要があります。
加えて、前回のECB(欧州中央銀行)で実施が決まった量的緩和政策が、この3月から2016年9月まで実施されることになり、出資比率などに応じてECBが各国の国債を買い入れることになりました。そちらの影響にも注目したいものです。
2月相場のユーロのレンジは、「ユーロドル」で1ユーロ=1.0-1.15ドル、「ユーロ円」では1ユーロ=130円-136円というところでしょうか。
――原油安の影響で資源価格も下落。豪ドル、カナダドルも大きく動いていますが?
スイスフランショック同様に、1月はカナダドルの急落というのもありました。カナダの中央銀行である「カナダ銀行」が、市場の予想に反して利下げを実施したために、1月21日に対米ドルで5年9か月ぶりの安値を付けました。
同様に、オーストラリアドル(豪ドル)も、利下げ観測が広まって対米ドルで5年半ぶりの安値を付けています。豪ドル、カナダドルともに資源国通貨を代表する存在ですが、原油安の影響から共に売られている、という状況です。
とりわけ「豪ドル/米ドル」は、利下げ観測の中で一方的な下落トレンドが続いています。最近は、こうした豪ドルの下落を待って買いを入れる「順張り」の投資家も増えつつあるようです。
豪ドル円の2月のレンジは、1豪ドル=91-95円というところでしょうか。レンジは小さくとも、日々の変動幅が大きくなる相場だと考えましょう。
――なかなか方向が掴めない動きが続いていますが、2月相場の注意点とは?
1月同様に、あるいはそれ以上に神経質で、方向感の定まらない相場になりそうです。はっきりしたトレンドが見えない中では、細々とした投資で、小さな利益をコツコツと拾っていく方法が効果的です。
ロングとショート、両方を使って、マメに市場をウォッチして収益を稼ぎ出す。そんな投資行動が2月はお勧めかもしれません。(取材・文責:モーニングスター)。
1月は、スイスフランショックを皮切りに、カナダドルの急落、ギリシャの政権交代、原油安などなど、金融市場を大きく揺るがす事態が数多く発生した。
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2015-01-30 11:00