中国の高速鉄道輸出 「やみくもに売り込むな」と専門家

中国政府・商務部国際貿易経済合作研究所の梅新育研究員は3日、メキシコへの「高速鉄道輸出」が挫折したことなどを受け、高精度、高品質品の鉄道技術をやみくもに売り込もうとすることは避けるべきで、相手国の事情も十分に配慮する必要があると主張する文章を発表した。
梅研究員は2011年7月23日に浙江省内で発生した高速鉄道事故にも言及。鉄道関係者が「罵倒の包囲攻撃」を受けながらも、「高速鉄道防衛戦」に全力で取り組んだと指摘。さらに「私は疑いなく、中国の高速鉄道を重視している」と論じた上で、高速鉄道や鉄道そのものに対する「過大評価」を批判をした。
そのひとつが、中国と欧州を結ぶ鉄道路線だ。中国では「21世紀のシルクロード」と注目されているが、梅研究員は同路線が「取り替えることができない価値を持つものではあるが、鉄道の輸送能力は永遠に海運に及ばない」と指摘し、あくまでも補助的な物流ルートと強調した。
梅研究員は、高速鉄道の輸出については、相手国側の収益性も考えるべきと指摘。「鉄道の場合、(乗車時間が)5時間を超えると、航空機利用に比べての優勢さはなくなる」と紹介し、「中国側にとって最先端で最も高価な品」を闇雲に売り込むのではなく、相手国との研究や意見交換を行った上で、相手国にとって、最も役立つ交通システムを選んで提案すべきと主張した。
梅研究員によると、相手国側の支払い能力も十分に検討することも必要だ。新興国の場合、市場経済や国民経済の収入源が、経済変動の影響を受けやすい一次産業や比較的初歩的な工業製品である場合が多い。そのため、経済状態がよかった時点で巨額の契約に意欲を示しても、その後に取り消すケースも珍しくないと指摘。
梅研究員は、中国側と高速鉄道建設で契約を交わしながら撤回し、さらに高速鉄道の建設計画そのものを取り消したメキシコを例として挙げた。
さらに、鉄道の輸出先とは長期間にわたり幅広い交流関係の維持が必要と指摘。「政策のパイプ」、「方向性の連関」、「貿易の順調さ」、「貨幣の流通」、「民心の通じ合い」などの維持が必要と指摘。
梅研究員はとりわけ、「政策のパイプ」を重視した。景気循環という現象を十分に利用し、相手国側が客観的な経済法則を認識し、景気循環が発揮する作用を忍耐づよく待つように手助けすべきと主張。そのことが、重要な地域、重要なプロジェクトについて中国側が必要になると判断してもらうことに結びつくと主張した。
**********
◆解説◆
梅新育研究員が高速鉄道を含む鉄道プロジェクトの輸出について主張した内容をかいつまめば「自分らの都合だけでなく、相手にとって真に役立つものを提案せよ」、「時間をかけても相手の信頼を得てこそ、ビジネスチャンスが生じる」であり、「商売道」として、極めて正統的と言える。
しかし、梅研究員が指摘した点だけではまだ、中国が陥りやすい問題のリスクを払拭することはできない。中国は他国と向かい合う際、「相手国」=「相手国政権」を、「当然の大前提」とする傾向が強いことだ。
民主的な政権交代システムが確立していれば、民意で選ばれる「相手国政権」は、「相手国民の総意」から長期にわたって大きく外れることは考えにくいが、独裁国の場合、「民意から離れて行った政権が、最終的に人民に打倒される」という現象も、それほど珍しくない。
そして中国は、西側諸国などから「人権弾圧」などと批判されている国の政権とも、親密な関係を構築することが多い。多くの場合目的は資源獲得を含めたビジネス」で、「内政不干渉」を理由として世界的に孤立している政権と親密な関係を構築する。
その場合、相手側の独裁政権が崩壊すれば、中国は改めて関係構築に努めねばならなくなる。典型的な例のひとつがリビアで、カダフィ政権が崩壊した直後に中国高官が「カダフィは中国の友人ではなかった」と発言し、批判を浴びた。
中国は軍事政権下のミャンマーと親密な関係を構築したが、民主化後のミャンマーは中国と一定の距離を置くようになった。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真は「CNSPHOTO」提供)
中国政府・商務部国際貿易経済合作研究所の梅新育研究員は3日、高精度、高品質品の鉄道技術をやみくもに売り込もうとすることは避けるべきで、相手国の事情も十分に配慮する必要があると主張する文章を発表した。(イメージ写真は「CNSPHOTO」提供)
china,economic,
2015-02-04 16:00