2月の外為市場は方向感がなく、全般にこう着状態が続く=外為どっとコム総研

外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「2月はドル/円、ユーロ/ドルなど主要通貨の動きに方向感が見出しづらく、全般的にこう着した相場になるだろう」と見通している。「米FOMC開催が3月のため、間が空く。また、ギリシャ問題も少なくとも2月末の期限まで結論は出ないと考えられるため、市場に結果待ちの姿勢が高まる。ただ、値幅が大きく出やすい相場付きになっているため、膠着時のレンジを超えて動く時には思わぬ大きな値幅につながりやすく注意したい」と語っている。(写真は外為どっとコム総研研究員の石川久美子氏、写真撮影サーチナ)
――ドル/円は昨年12月に1ドル=121円台にまで上昇しましたが、今年に入ってからは1ドル=118円を中心にしたもみ合い相場になっています。当面のドル/円相場を見通すポイントは?
ドル/円は、当面は動きづらく、方向感のない展開が続くと考えられます。日米の金利差拡大を手がかりに、ドル高・円安の動きが続いてきましたが、日米双方の金融政策に、新たな動きが期待しづらい時期を迎えています。
まず、日本は、昨年10月末の追加金融緩和で、2%のインフレ目標に強い意欲を感じさせましたが、最近はトーンダウンといえる発言が聞こえてきます。1月21日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は、インフレ目標を2015年度に達成するといってきたことについて、「多少前後する可能性がある」と述べ、2%インフレの達成時期が2016年度に遅れる可能性も示したと受け取られています。また、日本の政府筋からも追加金融緩和は当面は必要ないという声が出てきており、日本が追加の金融緩和を行う可能性は当面のところ低くなっていると考えられます。
一方、米国では、FRBのイエレン議長が昨年12月のFOMC後の記者会見で、「少なくともFOMCの次の2会合では利上げが始まる可能性は低い」という発言をしています。FOMCの開催予定は、1月の次は3月17-18日です。ただでさえFOMCの開催予定のない2月はダレやすい市場環境な上イエレン氏の発言によって、3月政策変更の可能性も極めて低いとの見方が広がっている以上、3月FOMCを手掛かりに仕掛けるのも難しい状況と言えます。ドル/円は動きにくい状態となりそうです。
また、日米の金融政策以外の材料をみても、原油価格は一方的な下落にブレーキがかかってきましたし、ユーロが抱えるギリシャの問題の交渉期日は2月末です。ギリシャ問題は2月末に向かって、いろいろと材料視される場面も考えられますが、最終的にはユーロ圏を離脱することなく決着をつけるだろうという見方が強く、ギリシャ問題によってドル/円の行方が大きく左右されることはないと考えられます。
したがって、ドル/円は1ドル=117円台~118円台を中心で推移し、大きな方向感は出にくいとみています。ただ、一度も狭いレンジを超えしまうと、思わぬ値幅が出ることがあるので注意が必要です。当面のレンジは、下値は昨年12月16日の1ドル=115.50円、上値は120円まではあると思います。上下どちらに動いても、一時的な動きで大きなトレンドを形成するまでにはならないでしょう。
次の展開は、米国の3月のFOMC声明を待ってからの展開になると予想します。その時にはギリシャ問題も一服していると考えられますので、新たな方向性が見い出せそうです。
――ギリシャ問題で揺れるユーロは? ECBの量的緩和を受け、ユーロ/ドルは一時、1ユーロ=1.12ドルを割り込むまで下押しました。1月26日に付けた1ユーロ=1.109ドルは当面の底値と判断できますか?
ギリシャとトロイカ(ECB、EU、IMF)の交渉が続いているため、少なくとも、2月末までは互いのボールの投げ合いがニュースとなって、ユーロは一喜一憂する展開が続く可能性があります。
1ユーロ=1.10ドルのフシ目は簡単には割れることがないと思いますが、ここを下回ると2003年9月に付けた1ユーロ=1.07ドルまでフシ目が見当たりません。交渉決裂を決定付けるような大きな話題が出た場合は、1.10ドル割れから一段安ということもあり得ます。
ただ、現時点では、交渉で着地点が見いだせるという楽観論が大勢を占めています。これまでユーロは、ECBの量的緩和とギリシャ不安という2つのエンジンで下落を続けてきました。ECBの量的緩和は実施され、現在はギリシャ問題に焦点が絞られています。このため、ユーロが下落する局面では、これまでほどの大きな動きになるとは考えにくく、ユーロ/ドルも動きにくい時期にきていると思います。
これまでユーロの下落期間が長かっただけに、ギリシャ懸念が和らぎ、ひとたびユーロが反発し始めると、1ユーロ=1.18ドルまで戻ってもおかしくないと思います。動き始めた時の値幅が大きく出やすい環境ですので、リスク管理に気を配って臨みたいところです。
――その他の通貨ペアで注目されているのは?
現在はわかりやすく方向感が出そうな通貨を見出しにくいところですが、あえて値動きがある通貨をあげると、英ポンドです。2月11日には四半期ごとに発表されるインフレ報告があります。そこで発表される経済見通しによって、ポンド/ドルが動く可能性があります。
これまで英国の利上げ時期の見通しは徐々に後退し、当初は米国よりも英国の利上げの方が早いとまでいわれていたものが、今では米国が2015年半ばに利上げ開始見通しあることに対し、英国は2016年第1四半期まで後退しています。このため、ドルに対してポンドは大きく下落してきました。
また、1月のBOE理事会で0.25%の利上げを主張していた2人の委員が、利上げ主張を撤回するということもあって、英国の利上げ時期は一段と後退したとみられています。
2月12日発表のBOE四半期インフレ報告は、英国の利上げ時期の思惑を修正する手掛かりとして重要です。最近の英国の経済指標は弱めのものが目立ち、原油価格の下落の影響でインフレ率も抑えられています。今後の経済成長率やインフレの見通しについて、下方修正することがあれば、ポンドの一段安の可能性があります。
そして、ポンドには2月18日にBOEの議事録が公表されます。こちらも注目です。ただ、市場の最大の関心がギリシャ問題である間は、ポンド/ドルが独自材料で動ける場面はかなり限られ、ギリシャ関連の報道を受けたユーロ/ドル、ユーロ/ポンドの動きに連れる場面が多いと考えられます。
ポンド/ドルは下落した場合、1ポンド=1.50ドルを割り込むと、2003年の安値1.4812ドルを越えて1.45ドル台まで下落する余地がありそうです。反対に、上昇した場合は1ポンド=1.53ドルまでの戻りは期待できそうです。(編集担当:徳永浩)
外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「2月はドル/円、ユーロ/ドルなど主要通貨の動きに方向感が見出しづらく、全般的にこう着した相場になるだろう」と見通している。
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2015-02-05 11:15