日本の環境対策 「住民の心理面にも配慮をしている」=中国メディア

 中国メディア「新京報」は8日、「日本のごみ焼却場はなぜ丸い煙突がないのか?」と題する記事を発表した。日本は技術力や法制度だけに頼って環境保護を進めているのではなく、行政と業界の協調、住民の理解と信頼を得るための努力が重視されていると紹介した。  記事によると、日本における環境問題への取り組みを知るために、環境省やごみの焼却処分を行っている有明清掃工場(東京都江東区)などを取材したという。  有明清掃工場については、東京湾沿岸の臨海地区にあり、2020年の東京五輪大会の選手村にも近く、周囲には富士山を眺めることのできる高級マンションもあると紹介。ごみ焼却施設には「大量の有害ガスと粉塵を発生させるイメージ」があるとして、「なぜ高級マンション地区に存在するのか?」と驚きを示した。  実際に有明清掃工場を訪れたところ、「ごみを焼却している臭いは全く感じらえなかった」と紹介。二階堂久和工場長の説明として、東京都のごみ焼却施設が排出している気体は「空気」に近く、ダイオキシン含有量も「ゼロに近い」と紹介した  記事は、日本における大気汚染の解消が、かならずしも順調ではなかったと紹介。当局は当初、立法措置による規制強化で対処しようとしたが、「1960年代後半になっても、日本のほとんどの大都市で大気の質は基準を達成していなかった」と指摘した。  その後の成功については、環境省職員の言葉として、「日本における大気汚染低減は、技術と制度だけに頼ったのでなく、政府と企業の共同作業の過程だった」と紹介した。  同職員は、「大気汚染の低減に本腰を入れ始めた時期には政府と企業の若干の対立があった」、「しかし、政府も企業も『大気汚染を低減するためには一定の経済的なコストが必要だ。ただし、公害がもたらす損失は、予防のためのコストよりもはるかに莫大な額になる』との認識で一致するようになった」などと説明したという。  同職員はさらに、政府が環境問題に対して規制を強化しようとした場合、業界団体が「強烈な反対」をする場合もあると説明。事態を打開する第1の方法としては、「科学的なデータをまとめ、(行政側だけでなく)企業と業界団体で共有すること」という。職員はさらに「メディアの力」を強調。「日本ではメディアが反対すれば、政府の政策も阻止される。逆にメディアが理解すれば、政府と企業の意見のすり合わせも比較的順調に進む」と説明したという。  記事は、日本社会によくある「自主規制」の方法も評価した。汚染物質の排出について、政府との協議により業界団体側が「自主的な目標設定」を行うことがあると紹介。政府側は目標達成が出来なかった場合のみ、「強制措置」に進むと紹介した。  記事は日本の環境対策は、住民の「心理面」にも配慮していると紹介。有明清掃工場の場合には丸い煙突がなく建物と一体化したような形状と指摘。工場全体がオフィスビルのようにも見え、さらに煙突から排出される気体に含まれる水蒸気も「白い煙に見えたのでは住民の不安が発生する」として、高温で透明にして排出すると紹介した。  記事はさらに、「日本企業は排出する汚染物質の情報を公開することが義務づけられている」と紹介。有明清掃工場も1時間に1度の割合で更新する排出気体のデータを公開していると指摘した。二階堂工場長は「最初は毎日の足を運ばれ、データを確認する人がいらっしゃいましたが、今はあまりいらっしゃいません」と説明。記事は、有明清掃工場に対する住民の不安が減少したことに注目した。  記事はさらに、有明清掃工場が外部者の見学を積極的に受け入れ、来訪者の質問に積極的に回答していると紹介。公表する数字についてはさらに、「われわれ職員は規則により、数字を変えることができません。第三者の検査と監督も受けています」との清掃工場側の説明も紹介し、日本では環境問題について、住民の理解と信頼を得ることが極めて重視されていると紹介した。 ********** ◆解説◆  中国では日本を「一時は深刻化した環境問題を克服した国」と評価する見方が強い。しかし、「日本がなぜ環境を改善できたか」との理由に迫る報道は少なく、「先進的な技術があり、政府の管理も徹底しているから」程度に認識している人が多い。  上記記事は、環境基準の厳格化について「業界側の抵抗」もあると指摘した上で、行政側の「客観的データ提出」、「メディア、ひいては世論を味方につける」などの方法を紹介し、最終的には「行政と業界の協調路線」を目指す、「政府側のテクニック」までも紹介した点で、やや珍しい。  中国では、ごみ処理事業の立ち遅れが大きな社会問題になっている。現地当局が焼却施設の建設をめざし、住民側に「有害物質は排出しない」と説明しても、反対運動で挫折することも、珍しくない。  上記記事が、環境問題における「住民心理」あるいは「住民感情」への配慮を強調したのは、中国でも「上からの押しつけ」だけでは問題は解決せず、「だれもが納得し信用するデータの公開」が必要と主張してと理解できる。  中国ではこのところ、日本人や日本社会を称讃する文章の発表が目立つようになった。いずれも「日本のよい面は学ぶべき」との主張が読み取れる。そのため、日本を過分に称讃したり、日本が抱える問題点についてはあえて触れないことも多い。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)
中国メディア「新京報」は8日、「日本のごみ焼却場はなぜ丸い煙突がないのか?」と題する記事を発表した。(イメージ写真提供:123RF)
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2015-02-10 11:15