岩盤規制緩和で今後の医療産業に期待

日本経営管理教育協会が見る中国 第345回--有元舜治(日本経営管理教育協会監査役) ● 経常黒字はピーク時の1割に   財務省が発表した2014年の国際収支速報によると、ものやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は、前年比18.8%減の2兆6266億円の黒字。現行統計が始まった1985年以降では最低を記録し、ピークだった2007年の1割に縮小した。このうち輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字は、前年比1兆5903億円増えて、10兆3637億円になり、1996年以降で最大となった。輸出は自動車、化学光学機器が好調で前年比9.3%増えたが、輸入が10.3%増え赤字幅が拡大した。火力発電向けの液化天然ガス輸入増が大きい。   貿易赤字が拡大する一方で、企業の海外子会社の稼ぎを反映する第一次所得収支の黒字は18兆712億円と、前年比1兆5957億円増えた。製造業の空洞化で、モノの輸出減少による貿易赤字を海外子会社などへの直接投資や知的財産権等使用料などの収入で賄う構図が強まっている。ここで心配なのが、海外投資や知的所有権収入は国内の雇用を生み出さないことだ。かつての製造業に代わる産業を作らないと仕事にありつけない人が増えて、格差がより拡大するだろう。 ● 医薬、医療機器は大幅輸入超過   昨年1300万人を超えた訪日外国人。台湾韓国、中国などからの買い物客で銀座や秋葉原はおおいに賑わっているようだ。訪日外国人が国内で使う金額から日本人が海外で支払う金額を差し引いた旅行収支は、1251億円の赤字だった。赤字額は前年比5294億円減少して過去最少になった。2015年には黒字になる可能性があるという。2020年には2000万人の目標も、今の調子なら達成しそうだ。3000万人という声もある。訪日客が急増したときの受け入れには心配な点も多い。病院や宿泊施設、交通・移動手段などは大丈夫なのだろうか。   医薬品の貿易赤字は1.6兆円(2012年)といわれる。輸出は約3204億円。製薬会社の海外生産移管などで輸出はほとんど増えていないが、輸入は毎年増加している。医療機器も約7000億円(2012年)の貿易赤字だ。コンタクトレンズや人工関節、ステントなどハイリスクの医療機器は輸入依存度が高いそうだ。 ● 岩盤規制緩和に期待   政府は成長戦略の柱として農業、雇用、医療などの岩盤規制緩和に取り組む。4月に発足する日本医療研究開発機構(AMED)は、基礎研究を所管する文部科学省と臨床研究を所管する厚生労働省、事業を所管する経済産業省が、従来の縦割り型行政組織の垣根を越えて研究から実用化までを一貫支援する。成果に大いに期待したいが、モデルになったアメリカの国立衛生研究所(NIH)の年間予算3兆円に対してAMEDは1400億円。よっぽど頑張ってもらわないと国際競争には勝てそうにない。訪日客2000万人、3000万人時代を視野に、内向きでないアジアの医療システム構築に本気で取り組む気概を見せてほしい。  写真はメディカルモール。(執筆者:有元舜治・日本経営管理教育協会監査役 編集担当:水野陽子) 
財務省が発表した2014年の国際収支速報によると、ものやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は、前年比18.8%減の2兆6266億円の黒字。現行統計が始まった1985年以降では最低を記録し、ピークだった2007年の1割に縮小した。このうち輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字は、前年比1兆5903億円増えて、10兆3637億円になり、1996年以降で最大となった。
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2015-02-17 17:00