「中国=お酒」という色眼鏡(固定概念)を外そう

 中国人と商売する際に、酒がないと付き合うことが出来ないと言われている。確かに、白酒、黄酒といった強いお酒が存在しているし、私自身も昼からビールを飲まされた経験がある(中国人の中で、ビールはお酒に入らないという人も存在する)。  殷の時代から酒文化が形成されたという記録もあり、酒は生活には欠かせない存在になっている。ビールの消費量は世界でNo.1。最近では、中華料理にワインという新しい文化が形成されつつあり、世界で第五位の消費量でもある。(2013年。国際ブドウ・ワイン機構調べ)  ただ、私は最近、中国に行っても、酒を飲まないことが続いている。いくつかの事例を紹介しその背景を考えてみたい。ちなみに、事例は習近平国家主席の最近の倹約令が出る前の出来事だ。 ■最近私が中国で会ったお酒を飲まない中国人 ・上海市の役人 50代後半  大の酒好きだが、個人的に合う時にはお酒は少しも飲まないようにしているそうだ。酒を飲まない理由は、仕事でさんざ酒を飲んできたから、親しい間柄の人とは休肝日にしたいとのこと。実際に周囲で、酒で体を壊した人がいるので、気をつけている。酒を100%絶っているわけではないので、日本から出張の際には是非日本のお酒を持ってきてほしいと頼まれた。彼は、「珍しい、本物、美味しいお酒は特に大歓迎」とつけ加えた。 ・ビジネスウーマン社長(北京) 50代前半  米国で数年か暮らし、今は社会貢献の意味も込めて、会社経営している。周りにいる関係者は政府の役人、民間企業の有力者等の知人が多い。商談する際に、彼女が最初に「ビールは飲みたい人だけ飲んでください。飲みたくない人は飲まなくて結構です」という宣言をして、夜の会食が開始された。  お酒を飲まない理由を彼女に聞くと、「ビジネスの話をするのに、酔った勢いで話をしたくありません。崇高な理念を持って考えていることが台無しになる」とのことだった。 ・民間企業で勤務する女性(広州)20代  英語が達者で、日本人的な仕事の進め方を非常に理解している。仕事一筋で、アフターファイブで一緒に食事するくらいなら、昼間ビジネスの話をしましょうというスタンス。酒の雰囲気は全く感じられなかった。  酒を飲まない理由を聞くと、おじさんのように酒ばっかり飲んだ付き合いはしたくないとのこと。そんなことで人間関係を構築しても無駄の様な気がする。それよりも、双方でメリットのある話(公私にわたり)をすることが、お互いの長期的な関係を構築するのに有効とのことだった。 ■最近私が中国で会ったお酒を飲まない中国人  もちろんこれらの事例はほんの一部でしかないことも理解しているが、この4、5年の間に政府の関係者や民間人との付き合いで、お酒と少し距離を置きつつある人も出始めているのも事実である。  それらが意味することは、中国の酒文化の負の側面に対して、少し嫌気をさしたり、酒がなくても保てる人間関係を構築したいという気持ちが発生していることだ。そして、健康に気遣いたい中年の男女の姿も目に浮かぶ。確実に人間関係の構築の仕方が変わりつつある傾向がみえる。  中国人の「酒離れ」からは、自国が経済力をつけたために、多くの外国人と接することとなり、相手に対する思いやりや、自分自身に対する健康管理等により一層注意を払いつつあるという変化も垣間見ることができる。  13億人もいれば、いろんなニーズがあって当然だ。中国人と接する際に、中国人=酒という色眼鏡を外すと、また違う世界が見えてくるかも知れない。この経済発展が早い中国では意外に重要なことかもしれない。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
 中国人と商売する際に、酒がないと付き合うことが出来ないと言われている。確かに、白酒、黄酒といった強いお酒が存在しているし、私自身も昼からビールを飲まされた経験がある(中国人の中で、ビールはお酒に入らないという人も存在する)。
china,column
2015-02-18 14:00