ニューノーマルがもたらす地方経済の成長格差に全人代はどう応えるか=大和総研が注目

 全国人民代表大会(全人代)の開催を3月5日に控え、各省・自治区・直轄市での人民代表大会が開催され、各地域ごとの2015年の経済目標が明らかになった。大和総研経済調査部のシニアエコノミスト齋藤尚登氏が各地方の経済目標に基づいて2015年2月20日にレポート「地方政府から見たニューノーマル」(全9ページ)を発表した。経済構造の高度化を推し進めようとするニューノーマル(新常態)は、重工業を産業の中心に置く地方経済の成長鈍化をもたらしている。齋藤氏は、「全人代で資源・重工業の比率が大きな省へのサポート政策が示されるか注目される」としている。レポートの要旨は以下のとおり。 ◆ニューノーマル(新常態)には、経済構造の高度化や質的向上を内包する、前向きなニュアンスが込められているが、その痛みが、一部地方に集中して発現していることも事実である。2014年の実質経済成長率は、中国全体の前年比7.4%に対して、山西省は同4.9%、黒竜江省は同5.6%、遼寧省は同5.8%にとどまった。これらは石炭など資源や鉄鋼・セメントなど重工業を中心とする地方であり、内需減速による需要低迷や過剰生産設備を抱える重工業分野の新規投資の落ち込みなどが、鉱工業生産の低迷や固定資産投資の大幅減速をもたらした。遼寧省に至っては、2014年の固定資産投資は同1.5%のマイナスに落ち込んだ。 ◆2014年の実質成長率の実績と2015年の目標を比較すると、19地方が2015年の目標を低くし、3地方が同じ、9地方が実績より高い目標設定となっている。2015年の成長鈍化を想定する地方は、(1)製造業投資は質の高いものを厳選する一方、産業構造高度化に寄与する戦略的新興産業向け投資などを促進するというメリハリを付けつつ、固定資産投資の全体の伸びは抑制する、(2)伝統的サービス産業に加え、ハイテク関連サービス(情報、研究開発)など現代サービス産業をリード役とする、との方針を掲げたところが多い。 ◆2015年の目標を2014年の実績よりも高く設定した地方は、経済発展段階が低いためにやや高めの成長率を維持したい西部のいくつかの省と、2014年の成長率が大幅に低下した資源・重工業大省に二分される。難しいのは、中国全体として固定資産投資の減速が想定されるなか、後者を如何にして下支えするかであろう。大和総研は、3月5日から開催される全人代で、景気失速リスクを抱える資源・重工業大省への政策対応、特に財政政策でどのような方針が打ち出されるかに注目している。2015年は財政赤字と地方債発行のある程度の拡大が想定され、財政支出の向け先や地方債発行の配分における資源・重工業大省へのサポートが注目される。さらに、一部地方政府の財政収入の伸び鈍化が想定されるなか、中央政府からの財政移転の重要度が増していることは言うまでもない。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
大和総研経済調査部のシニアエコノミスト齋藤尚登氏が各地方の経済目標に基づいて2015年2月20日にレポート「地方政府から見たニューノーマル」(全9ページ)を発表した。
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2015-02-20 13:00