JPX日経400、TOPIXや日経平均に次ぐ第3のメジャー指数に

新株価指数「JPX日経インデックス400(JPX日経400)」は、2014年1月28日に連動するETF(上場投資信託)が東京証券取引所に上場され、新たな段階に進む。算出が開始された1月6日には、新指数に連動するインデックス・ファンドが設定されるなど市場関係者の関心も高い同指数について、JPX(日本取引所グループ)では、どのような意図を持って開発にあたったのか、東京証券取引所情報サービス部商品企画運用グループのグループ長、田中大介氏(写真)に聞いた。
――「JPX日経400」を新たな株価指数として設立した狙いは?
新株価指数について議論を始めたのは2012年後半、日本の株価が低迷していた時期です。TOPIX(東証株価指数)が750ポイント前後で推移し、米国など先進国の株価が上昇する中で、日本の株価が取り残されているような状況でした。その中で、日本の株式の魅力をアピールする方法はないかという議論のひとつに、新株価指数の開発がありました。
日本の株価は、2012年の安倍内閣の誕生によって「アベノミクス」という強いメッセージが打ち出され、TOPIXは2013年5月には1200ポイントを回復するほどに上昇しましたが、取引所として日本株の魅力を広く世界にアピールするという議論は継続しました。
新株価指数の開発にあたっては、海外の投資家にヒアリングすると指摘されることが多かった「日本株のROE(株主資本利益率)が低い」という点の改善を促す必要を強く感じました。ROEが高いということは、投資家にとっては、投資したお金が有効に活用されているということが確認できるわけですから、投資する価値が高いということにつながります。そこで、ROEを意識した株価指数を開発する具体的な設計を進めました。
新株価指数は、400銘柄だけをピックアップして作る指数です。取引所が世界に向けて発信する株価指数に採用されることは、上場企業にとってメリットもあり、多くの企業にROEを意識した経営を行ってもらえれば、そのことで日本の株式全体の魅力を高めることにつながる好循環が生まれるのではないかと考えました。
――「JPX日経400」には、東証1部だけではなくJASDAQなど新興市場に上場している銘柄も採用された狙いは?
2013年1月に東京証券取引所と大阪証券取引所が統合し、7月には両証券取引所の売買を一本化した新しい現物市場が誕生しました。「JPX日経400」は、この新しい現物市場のシンボル的な指数として企画した側面もあるので、東証1部市場や大証JASDAQなどといった市場区分を意識せず、全上場銘柄を対象とした指数にしました。
――「JPX日経400」の指数としての特徴は?
価格推移については、2006年8月から「JPX日経400」の算出方法に則った指数の推移を計算しましたが、結果、TOPIXを平均して年0.9%上回るという結果が出ました。運用実務を考慮して一定の流動性を持つ銘柄で構成された指数にするため、直近3年間の売買代金、また、時価総額において、上位1000銘柄を選定し、そこから、400銘柄をピックアップしています。
また、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数として、「3年平均ROE」「3年累積営業利益」「時価総額」によってスコアリング、さらに、定性的な評価軸として、独立した社外取締役2人以上の選任、IFRS(国際財務報告基準)の採用、決算情報英文資料のTDnet(適時開示情報伝達システム)を通じた開示を加点要素にしています。
これら選定基準上の詳細部分においても、実務的に連動運用ができる指数かという点に配慮して設計しました。この指数は財務数値により銘柄選定を行うのが大きなポイントとなっていますが、財務数値というのは毎年の変動が比較的激しいため、どうしても毎年の銘柄入替えが大きくなりがちになってしまいます。しかし、実務的に連動運用が可能な株価指数として考えた場合、この入替え規模があまり大きいと、連動運用者に売買コスト負担が増してしまいますので、なるべく大きな銘柄変動が生じないような基準となるよう設計しています。
たとえば、企業の基礎体力のようなものを見るために企業の財務内容は3年という中期的な期間で見ることとしていますが、同時に、これによって財務数値の変動が平準化され、採用銘柄の入替えが抑制されるという効果もあります。他にも、過度な入替えを抑制するために、既存採用銘柄は次回入替え時のスコアが440位以内であれば継続採用する「バッファールール」や、時価総額が非常に大きい銘柄が新規採用・除外された時の影響を限定するために指数への組み入れ比率上限を1.5%にするなどといった様々な工夫を行っています。
このように「JPX日経400」で採用する選定基準は、投資者に魅力的な企業を選ぶという「理念」と、実務面への配慮のバランスを考慮した一つの解として、現在の基準が設けられています。
――先物取引の開始など、「JPX日経400」の普及に向けた取り組みは?
先物市場を創設してほしいという要望の声が出ていることは承知していますので、どういうことができるか検討を行っているところです。
株価指数としては、現在、メジャーなインデックスとして東証1部上場銘柄全体の値動きを映す「TOPIX」、流動性に優れた代表銘柄で構成された「日経平均株価」がありますが、「JPX日経400」は、これらの指数とは性格が異なり、企業の財務面に着目した新しい指数です。「TOPIX」や「日経平均株価」にとって代わるものではなく、「TOPIX」などと並立して使われる指数として、「TOPIX」、「日経平均株価」に次ぐ指数として活用していただける指数に成長するものと期待しています。
現在、JPXでは東証ホームページのトップ画面で、TOPIXに並べて「JPX日経400」をリアルタイムで表示しています。また、東証が算出するリアルタイム指数は15秒更新が一般的なのですが、「JPX日経400」は、「TOPIX」や「TOPIXコア30」、「TOPIX500」、「TOPIX1000」といった主力指数と同じように1秒更新で算出表示しています。
さらに、日経新聞では毎日、「JPX日経400」の数値が掲載されています。また、JPXが国内外で行うIR活動や講演の際に「JPX日経400」の紹介を行うなど、広く普及活動に取り組んでいます。
また、2014年1月6日に新指数の算出を始めたばかりですが、すでに、複数のインデックス・ファンドが設定・運用され、1月28日には「JPX日経400」に連動するETFが上場します。これほど、早期に複数のインデックス・ファンドやETFが出てくるのは、過去の株価指数には見られなかったことなので、「JPX日経400」に対する反応は、大変強いものがあると感じています。
新しい証券取引所「JPX」の新しい株価指数として多くの方々に利用していただけるよう、引き続き積極的な普及活動を続けていきたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
JPX(日本取引所グループ)では、どのような意図を持って「JPX日経400」の開発にあたったのか、東京証券取引所情報サービス部商品企画運用グループのグループ長、田中大介氏(写真)に聞いた。(写真は、東京証券取引所の田中大介氏。サーチナ撮影)
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2014-01-27 13:00