日本の公的年金制度史概要 <その1>

日本経営管理教育協会が見る中国 第347回--坂本晃(日本経営管理教育協会特別顧問)
● 1875年(明治8年) 「恩給」の開始 公務員への公的年金制度の産声
「恩給」は国を守る使命をもつ軍人に対し、生涯の生活を保障する目的で創設されたと推測される。陸軍が4月、海軍が少し遅れて8月にスタートした。
1923年(大正12年)には恩給法が制定され、公務員にまで拡張される。例えば兵の場合は12年、文官や教育職員は17年間以上、忠実に勤務して退職した場合や今日でいう労災相当で退職した場合に支給された。
2014年(平成26年)現在、本人としての恩給受給者人数は5万1000人、65歳以上で最低保障額113万2700円となっている。遺族に対しては扶助料として長期在職者の場合94万4800円が支給され、43万9000人が受給している。
第2次大戦後の一時期、軍人軍属に対する恩給制度は廃止されたが、1953年(昭和28年)には復活した。
公務員に対する年金制度は、1959年(昭和34年)に国家公務員共済組合法に変更、地方公務員へは1962年(昭和37年)から変更され、今日に至っている。
● 1944年(昭和19年) 「厚生年金保険法」制定
これに先だって船員を対象に1940年(昭和15年)に船員保険法を制定、1942年(昭和17年)、厚生年金保険制度の原型「労働者年金保険法」が開始、民間の10人以上の事業所で働く男子現業労働者を対象に開始された。
1944年(昭和19年)には、対象範囲が拡大され、「厚生年金保険法」となり、5人以上の事業所の職員や女子も対象となった。これらは第2次世界大戦に向けて、戦力増強が目的のひとつであったと推測される。
● 1954年(昭和29年) 第1回厚生年金制度改革
適用事業所を常時5人以上の労働者を使用する法人か常時5人以上を使用する適用対象事業所となった。
年金額の算定に報酬比例のみから定額制も取り入れられ、支給開始年齢は55歳から60歳に変更、支給の基本的な考え方を従来の積立方式から修正積立方式に変更した。
厚生年金制度発足当時の保険料算定の基礎となる厚生年金保険の標準報酬月額、これは月給の平均額と考えられるが72円、1945年(昭和20年)で92円、それが5年後、1951年(昭和25年)に6335円と68倍、1955年(昭和30年)に1万1913円へと、更に2倍近くに変更された。当時はインフレで貨幣価値の目減りが著しく、過去に積み立てた金額では、退職後の生活の安定が図れなくなったためである。そこで過去の基準を物価の変動に応じて計算し直す仕組みが必要だったのである。今日話題となっている世代間負担の是非の種がまかれたといえよう。
● 1961年(昭和36年) 国民年金制度のスタートで国民皆保険制度へ
● 1986年(昭和61年) 第2回厚生年金制度
基礎年金制度が導入され、2015年(平成27年)の現状に至る。(執筆者:坂本晃・日本経営管理教育協会特別顧問 編集担当:水野陽子)
「恩給」は国を守る使命をもつ軍人に対し、生涯の生活を保障する目的で創設されたと推測される。陸軍が4月、海軍が少し遅れて8月にスタートした。
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2015-02-25 11:45