春節の爆竹模様、景気事情 ~北京オリンピック時の北京と2015年武漢の違い~

 2015年1月29日、湖北省武漢市品質監督局は、2015年の春節に向け、前年同様、武漢市中心部での爆竹販売の禁止を発表しました。2014年時、武漢市民の中には、販売禁止区域外で爆竹を購入のうえ、爆竹を打ち鳴らしている人がいましたが、2015年の春節では、一部の爆竹製品は、都市中心部地域以外でも販売および燃焼が禁止されることとなりました。  今回は、北京オリンピック直後の北京市と現在居住する湖北省武漢市の爆竹模様の比較を通じた、中国の変化に関する現場コラムです。 ■1. 爆竹販売の店  北京オリンピックを終えて間もない2009年春節を迎える北京市では、爆竹を販売する特設店が多く街頭に現れていました。まかり間違って、特設店に火でも付いたときには、街中で大爆発が始まる危険があるなと感じたことを覚えています。  春節を迎えたときには、筆者が居住していた北京市内のマンション付近を歩くにも危険を覚えるほど、あちらこちらの道で爆竹が破裂していました。マンションの窓から外をのぞくと、窓のすぐ前で爆竹や花火がなり散らしており、マンション近くの木々に火がつき、マンション自体が火事にならないかと心配なほどでした。建設中の中央電視台ビルが春節の爆竹、花火のために燃えてしまったのも記憶に新しいときでした。  2014年春節、湖北省武漢市内では、春節を迎えた直後でも花火は最低限の15分間だけ飛び、爆竹は鳴ることはありませんでした。北京市で迎えた春節の騒がしさ、危険さがなくなったものです。この2014年の春節の状況は、他の上海市、広州市などの大都市でも同様だったようです。花火や爆竹を鳴らせる場所が制限されたり、使用量が制限されたりしている状況です。この状況が、今年2015年春節でも引き継がれました。 ■2. ぜいたく禁止令と景気の高揚感  2009年当時、北京市のあちらこちらで、中国人から聞いた言葉があります。「日本は大変だよね。金融危機で」――。まるで他人事、中国は景気が良いから金融危機は関係ない、といった雰囲気でした。  しかし、2015年現在、筆者が中国各地のビジネスの現場で多くの中国人から聞くのは、「中国も景気が悪くなって大変だ」という言葉です。前向きで、自己肯定的な性格の人が多い中国にして、このようなことをもらす中国人が多くなったことに、切実なものを感じるようになっています。  ぜいたく禁止令だけの問題ではなく、花火や爆竹を打ち鳴らすこと自体が、ぜいたくだと考える人も出てきています。あまりに花火を打ち上げ、爆竹を打ち鳴らすと、ただでさえ厳しい大気汚染がより深刻となることも懸念しているようです。  武漢の花火大会は2014年には中止されました。以前の中国で感じられた、また、中国人自身も感じていた景気の高揚感が、ビジネスの現場では感じられなくなっている事実にも出会います。  以前は、春節のときには外の店はどこも閉まっていることが多かったようですが、今では、武漢市のような内陸都市でも、営業している店が増えてきています。打ち上げ花火、爆竹のように景気が良い一方の中国ではなくなってきていると中国人の多くが感じているようです。 ■一方で「爆買い」する中国人  一方、世界の贅沢品購入者の過半数は中国人であり、その中国人の7割は海外で贅沢品を購入しているというニュースがあります。  実際、円安の関係もあり、筆者が居住する武漢市で購入するよりも、日本で購入したほうが格段に安い品が多くあります。筆者の周りの日本人の中には、「中国は物価が高い」という人が多くいます。香港やマカオで購入するよりも、免税品などは日本で購入したほうがさらに安いものが多くあります。そういったことが、昨今の中国人による日本での「爆買い」報道につながっているようです。  筆者が、この春節、日本から中国に戻る飛行機の中では、日本への旅行を終えた多くの中国人観光客が大きな荷物と共にいました。筆者の横に座っていた若い中国人女性は、最後の買い物の場なのか、飛行機内で高級な免税品を躊躇なく数種類購入していました。その購買力たるもの、感嘆するものがあります。  中国ビジネスの現場で中国人の多くが口にする高揚感がなくなってきた現状と、日本などで見受ける「爆買い」の実態の両方が現状の中国のようです。 ■3. 中国の変化のスピード  中国では最低賃金も日々上昇し、景気の高揚感もなくなっている業界も多くあります。そのため、多くの日系企業は、今までの安い人件費等とうなぎのぼりの中国景気を前提とした展開はできなくなってきています。しかし、中国は、変化のスピードが日本と比べてより一層早い国です。中国人の多くは、楽観的で、悪い状態をあまり引きずらない前向きな人たちです。中国の変化のスピードに適応し、前向きに中国市場を分析し、溶け込む必要がありそうです。(執筆者:奥北 秀嗣 提供:中国ビジネスヘッドライン)
2015年1月29日、湖北省武漢市品質監督局は、2015年の春節に向け、前年同様、武漢市中心部での爆竹販売の禁止を発表しました。2014年時、武漢市民の中には、販売禁止区域外で爆竹を購入のうえ、爆竹を打ち鳴らしている人がいましたが、2015年の春節では、一部の爆竹製品は、都市中心部地域以外でも販売および燃焼が禁止されることとなりました。
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2015-02-27 15:45