【相場の福の神トップインタビュー】モジュレ「じどうパソコン」は企業のIT活用を新次元に導く起爆剤になるか

企業のIT部門に対するオーダーメイド型のアウトソーシングサービスを提供するモジュレ <3043> 。独立系のITサービス会社として、小型PCに限定したITサービスを提供するユニークな事業展開を進めている。昨年12月にリリースした「じどうパソコン」は、オフィスワーカーの単純作業を自動化する画期的なサービスとして注目が高い。同社代表取締役CEOの松村明氏(写真:左)に、「相場の福の神」として活躍するSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:右)が、今後の展望を聞いた。
――モジュレを2000年に創業された狙いは?
創業当時のITサービス会社は大手メーカーの系列に占められていて、ものを売ることが基本でした。ITサービスは販売した製品のアフターフォローという位置づけだったのですが、実際にはIT技術によって業務を効率化したいというニーズは多くありました。
ところが、ITサービス会社はメーカー系列なので、各系列メーカーの機器を利用した提案しかできなかったのです。中には別メーカーの機器を使った方が顧客の満足度を高められることがわかっていても、系列の製品を無理に使ってシステムを構築するということもしなければなりませんでした。そこで、当時の仲間6人で、メーカーに属さない独立系のITサービス会社を設立したのです。
現在では、コンピュータメーカーの系列ではない多くのITサービス会社が設立されていますが、依然として機器の販売を前提としたサービスが主流です。当社のように、ITサービスそのものを事業の中核にした独立系の企業は、ユニークな存在であると思います。
――ITサービスとは何であるのかイメージしにくいのですが、具体的にどのようなサービスを行うのですか?
現在、各企業には「情報システム部」等という名称のコンピュータ部門が必ずあります。ところが、そこに配属されている人は、必ずしもコンピュータの専門家ではありません。たとえば自動車メーカーに入社する人は、自動車を作りたいと志望したと思うのですが、学生時代にPCの扱いが得意だったなどの適正によって、システム部に配属されたりします。本当にコンピュータ関連の仕事がしたい人は、IT系企業に就職しますから、多くの企業において、IT部門は専門家でない方々によって運営されています。
もちろん、大手企業では数十人のチームでシステム部門を担当し、それぞれにスキルを磨いて専門家に負けない知識や技能を身につける方もいます。もっと大きな企業では情報子会社を設立してIT専門家を育成しているところもあります。しかし、中小企業をはじめ多くの企業は、自社でシステムの運用や保守管理をしていくことに限界を感じています。
「ドッグイヤー」という言葉があるように、IT業界は変化が激しい業界です。20年ほど前は、世界には3つくらいしか主要なアーキテクチャ(設計思想を基にした技術の塊)がなく、その1つでもしっかり学んでいれば、一人でも何でもできるコンピュータの専門家(スーパーマン)が存在し得たのです。ところが今や、ノートパソコン1台にも20種類くらいの複数メーカーの製品が搭載され、PCはネットワークされ、しかも、インターネットに接続されている時代です。技術の進歩は日進月歩であり、もはや、企業のIT部門は1人のエンジニアで支えることは不可能なのです。さらに、人事ローテーションで5年もシステム部から離れていると、文字通り浦島太郎のような状態になってしまいます。そこで、当社のような専門家集団が企業のIT部門をサポートしています。
当社は、各企業のニーズに応じたオーダーメイド型のアウトソース・サービスに特化しています。基本的なサービス料金は、1カ月当たり20万~30万円からです。中には、契約期間9年間で総額20億円という大きな契約もあります。
――なぜ、アウトソース先として御社が指名されるのですか?
ひとつには、当社が小型PCに特化したサービスを行っているためです。いわゆるメインフレームやホストコンピュータなどと呼ばれる大型コンピュータの分野は取り扱っていません。この分野は、機器メーカーやその系列のITサービス会社が得意としています。
当社では、従業員1人ひとりが使っているパソコンやモバイル端末などに特化しています。ここでは利用している機器のメーカーやOS等が特定されていません。運用の障害への対応や操作指導・ヘルプデスク対応など、実際に必要とされるサポートを実施することから、社内システムの構築に関するコンサルティングや企画まで、企業のシステム運用に必要なことをワンストップで提供しています。
また、メーカー色がないということも強みになります。当社は複数のメーカーと代理店契約をしていますが、その契約には販売ノルマというものが一切ありません、したがって、お客さまが使っておられる機器を、そのまま活用してシステム構築も行います。技術的にも中立ですので、本当の意味で、お客さまの立場に立ったITサービスを提供できます。
――足元の業績は?
計画通りの進捗です。当社のサービス契約は1年単位の契約ですから、今見えている収益が急激に変化するということがほとんどありません。売上高20億円のうち、半分程度は継続的なお取引先からの売上という内容ですから、着実に収益を積み上げていくという業績パターンになります。
引き続き新規のお客さまを獲得していく努力を続ける一方、一部分のサービスでアウトソースしていただいている企業様から、できるだけ多くのサービス提供をさせていただけるよう取引関係を深耕していく活動を進め、成長を続けたいと考えています。
――昨年12月にサービス開始した「じどうパソコン」は、御社の業績を大きく伸ばすきっかけになるのでは?
「じどうパソコン」は、デスクワークの繰り返し業務をパソコンが自動で行うようにする自動化ソフトです。機能としては、キーマウス操作を自動で記録する「じどうレコーダー」、画面座標に頼らない操作コントロールを実現する「じどうインテリジェンス」、画像及び類似画像を認識する「じどうイメージトレース」、また、操作記録の編集・加工ができる「じどうスクリプト」などの機能を搭載しています。
たとえば、オンラインバンキングを使って取引先に振込の手続きをする、あるいは、同じ文面の挨拶状をBCCでは失礼にあたるので1件1件アドレスを入力して送信する、交通費の清算をするために路線案内サイトで区間運賃を調べて請求画面に転記するなどの単純な繰り返し作業を、クリック一つでパソコンが自動的に実行します。
毎月末の請求書のチェックと発行は、2時間かかっていた作業時間が30分に、月末のオンライン振込処理は1時間が5分になったという報告があります。また、パソコンが自動的に作業しますので、人が行う時に発生する入力ミスがゼロになります。
さらに、社員はアイコンをクリックするだけで、作業はパソコンが行ってくれるので、従来の単純作業にあてていた時間を他の仕事ができるようになるという大きな効率化効果があります。
現在のパソコンは、記憶容量も大きくなり、機能も高度化されたため、通常のオフィスではパソコン機能の30~50%程度しか使われていません。また、打ち合わせや外出時には、その社員のパソコンは死んでいるも同然ですから、パソコンには遊休時間が大量に存在するのです。このような“遊んでいるパソコン”の容量や時間に、しっかり働いてもらうことができるようになります。
「じどうパソコン」は、パソコンを利用するデスクワーカーがいる会社ならば、どんな会社でも効果が見込まれます。従来は、オリジナルでプログラム開発を行うというコストと手間がかかる方法でしか対応できないことにも対応します。あるいは、マクロ言語を使って一部の業務だけを自動化していたことと比べると応用範囲も広く、多くの企業でご活用いただけると思っています。週1日の出張サポート付きで、毎月30万円からご利用いただけます。
――「じどうパソコン」を導入することによって業務監査、情報漏えいや不正使用を抑止するセキュリティ対策として応用することも可能では?
すべての操作ログを保管することも可能なので、ご要望があれば業務監査に使うことは可能です。パソコンの操作方法には、使用者のクセが色濃くでることが分かっていますので、たとえば、パソコンのなりすまし操作などを発見することも可能になると思います。
また、操作ログを分析することによって、繰り返し業務を発見し、自動化可能な作業を洗い出し、その分野を自動化することもできます。
――今後の展望は?
中小企業のための「情報システム部」になりたいと考えています。大企業と比較すると、中小企業のシステム投資は割高なコストを支払っているのが実態です。パソコンを導入するにしても、大企業はまとめて数千台などを購入しますので、1台あたりのコストは原価に近いか、場合によっては、原価割れでも導入することが可能ですが、中小企業はせいぜい家電量販店で1台あたり数%の値引きで購入することくらいしかできません。サービス価格にしても、利用者1人あたりでコスト換算すると、中小企業向けサービスは割高になってしまいます。
これを当社がインフラの機能を担うことによって、中小企業でも大企業並みのコストでITサービスを利用できるような環境にしていきたいと思っています。どこの資本にも属さない独立系企業であるからこそできることだと思っています。この実現のためには、もっと多くの企業とのお取引が必要ですが、一歩ずつ前進していきたいと考えています。(編集担当:徳永浩)
モジュレが昨年12月にリリースした「じどうパソコン」は、オフィスワーカーの単純作業を自動化する画期的なサービスとして注目が高い。同社代表取締役CEOの松村明氏(写真:左)に、「相場の福の神」として活躍するSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:右)が、今後の展望を聞いた。
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2015-02-27 17:00