米国金利、6月上昇確実か?外為オンライン佐藤正和氏

 予想を上回る2月の米雇用統計が発表されたことで、米国の金利上昇が早まるのではないかという観測が広がっている。ドル円相場も、2014年12月以来の121円台の高値を付けて来た。いよいよ米国金融緩和の終焉が見えるところまで来たと言っていいだろう。株価は強い基調を見せているものの、円安がなかなか進展しない中で、この3月相場はどうなるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに伺った。 ――予想を超える米国の雇用統計の結果が出ました。この影響は?  雇用統計発表以前に発表された個人消費支出などの米国景気指標が、いずれも強かったためにドル円相場は3週間ぶりに1ドル=120円台を回復。そんな中で発表された雇用統計でしたが、非農業部門雇用者数29万6000人増と予想の24万人を大きく上回りました。  失業率も、2008年5月以来となる5.5%に低下。米国景気が力強いことを改めて強調する内容になりました。この結果を受けて、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利の上昇時期が早まるのではないかと予想する市場関係者が増えて、ニューヨーク株式市場は大きく下落。ドル円相場は、瞬間的に1ドル=121円台を回復しました。  アベノミクスがはじまって以来の最安値である121円85銭には届きませんでしたが、121円台を回復したことで相場の潮目が変わったと言っていいかもしれません。 ――3月のドル円相場はどんな展開になるのでしょうか?  3月17日~18日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では、金利の道筋を示すフォワードガイダンスから「忍耐強く(patient)」という文言が削除されるかどうかがポイントになっていました。今回の雇用統計の結果によって、削除されるのは確実という見方が広まっています。 今後、2回目以降のFOMCでは、金利上昇がいつあってもおかしくないとイエレンFRB議長もすでに明言していることを考えると、6月の金利上昇の可能性も出てくることになります。金利上昇幅は0.25%程度と考えられていますが、長い間続いた金融緩和の歴史も、ついにその出口が見えてきたことになります。米国の金利上昇は、ドル買いにつながりますから、3月も依然としてドルの独り勝ちと言っていいと思います。 一方の日本ですが、株式市場は大きく上昇しており、GPIFや学校共済などの年金資金が日銀と並んで株式市場に投資をつつけており、株式市場に資金が流入しています。企業業績も軒並み好調で、このトレンドは続くと考えていいのではないでしょうか。以前ほどではありませんが、株高=円安の図式は3月以降も続きそうです。 ――円安はどこまで進むのでしょうか? 3月の予想レンジは?  3月は日本企業の決算集中時期に当たります。通常であれば企業が外貨を売って円を買う「レパ取り」が行われ、円高に振れやすい時期に当たりますが、最近は日本企業が海外企業を買収、合併する「M&A」が盛んに報道されています。海外企業のM&Aは、円を売って外貨を買う動きになりますから、レパ取りの影響は相殺されて、そう大きなものにならないと考えていいと思います。 米利上げ観測が高まったものの、金利高は米国株式市場にとってマイナス材料です。 そのため、今後米国株式市場が調整局面入りするようだと、ドル円の上昇を抑えることも考えられます。 ドル高円安傾向が鮮明になりつつありますが、それは緩やかなものになるだろうと予想します。  残るのは、日銀による第3次量的緩和、いわゆる第3次黒田バズーカ―砲の可能性ですが、株高、円安が続いている現時点では考えにくい。3月のドル円の予想レンジは、1ドル=117円-122円と考えていいと思います。 ――ギリシャ危機はとりあえず4か月先延ばしされましたが、3月「ユーロ相場」の見通しは?  ギリシャの政権交代によって、デフォルト(債務不履行)リスクが顕在化しましたが、とりあえず4か月間延長という形で回避されました。今後も、財政緊縮に反対する現政権との交渉が続けられるわけですが、依然としてギリシャリスクは残ったままです。  一方、この3月9日から開始されたECBによる国債買い入れなどの量的緩和政策ですが、「ユーロ安ドル高」のトレンドを作っており、こうした状態は当面続くと考えられます。特に、対ドルに対してはユーロは大きく下落することが予想されます。  3月のレンジとしては、ユーロ円が1ユーロ=128円-134円、ユーロドルでは1ユーロ=1.05ドル-1.12ドルというところです。 ――金利を下げた中国の影響で「豪ドル」はどんな動きになるでしょうか?  クロス円では、やはり豪ドルへの注目度が高いと思います。中国が政策金利を引き下げるなど資源安の影響を強く受けており対ドルで豪ドル安が進んでいますが、この傾向が3月も続くかどうかがポイントになります。  オーストラリア準備銀行(RBA)のロウ副総裁が「(豪ドル相場が)適切な水準に近づいた」と発言し、3月3日には金利を2.25%のまま据え置きました。今後も、対ドルで豪ドル安が進むかどうかが焦点になると思います。  豪ドルの3月のレンジは、1豪ドル=91円-95円というところでしょうか。この他、3月は英国ポンドが注目されています。景気が好調であるのに加えて、ユーロ離脱といった情報が流れており、英国ポンド人気に拍車がかかっているのかもしれません。 ――3月相場の注意点とは?  ある程度、米国の金融緩和への道筋が見えてきましたが、そうはいっても「ゆっくり、じっくり」と実行して行くことになるのは間違いありませんから、あまり先走らないほうがいいのではないでしょうか。  そう大きなボラティリティは期待せずに、下値を拾うスタンスで、こつこつと将来の円安に備える感じでいいと思います。日本の追加緩和策、そして米国の利上げという具合に、ドル高円安のシナリオはっきりしています。(取材・文責:モーニングスター)。
予想を上回る2月の米雇用統計が発表されたことで、米国の金利上昇が早まるのではないかという観測が広がっている。
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2015-03-09 10:00