中国調達:内陸部ではまだまだ熱烈歓迎!沿海部だけでは判断できない中国事情
誰も知らない中国調達の現実(235)-岩城真
筆者が初めて訪中した2000年頃からしばらくの間は、中国のどこのサプライヤーに行っても熱烈に歓迎された記憶がある。当時の彼らには日本企業との取引から広義の技術を学びたいという熱意があり、日本企業と取引(販売)していること自体が自分たちのブランド価値を高めることなると思われていた。
北京オリンピック前の好景気の頃から日本企業歓迎の熱が急速に冷めていったように思う。日本から学ぶべきことはなくなったという自信や、日本との面倒でスピード感の欠如した取引をしなくとも中国内の仕事で十分に潤っているからだろうと片付けられてきたが、現在の景気低迷の中国、確実に景気回復している日本といった両国の現状を見ると、我々日本企業のバイヤーは、ついついかつての熱烈歓迎が復活するのではないかと期待してしまう。ところが沿海部を見る限り、サプライヤーにあの熱気は感じられない。円安の進行や中国企業の技術的成熟といったことを冷静に考慮すれば、現在の冷めた空気にも説明がつく。
日本で取り上げられる中国製造工場の話の多くは沿海部の話である。既述の冷めた空気も沿海部のことである。今回取りあげる中国内陸部の工業都市は、工業都市である以前に鉱業都市である。多くの鉱業都市が石炭バブルに沸き、バブルの破綻(炭鉱の閉山や大規模な縮小)によって、企業も人も行き先を見失ってしまっている。実際に筆者が滞在している鉱山都市も炭鉱は閉山し、それに関わる企業も仕事を失い、一時帰休の企業が散見される。そのような背景のもと、筆者の在籍する日本企業は地元の国有企業と合作事業を開始した。そこで筆者が感じた空気は、10年以上前の日本企業熱烈歓迎を彷彿とさせるものだった。
日本との合作事業がなければ、その国有企業にはほとんど仕事らしい仕事はなく、自宅待機の従業員にいくばくかの補償金を支払い続けていたはずである。景気低迷の中国の中で、例外的に活況を呈している環境関連事業であることに加え、巷で話題となった訪日中国人観光客による爆買いに象徴される、高品質を安価で提供できる日本のシステムへの期待があることを感じた。筆者自身、尖閣問題に端を発した反日感情の再燃や既述の日本企業自身の価値喪失といったネガティブなことがまったくの杞憂であったことに、ある種の驚きと安堵を感じでいる。
後日知人友人の話を聞いても、このような事情は中国の東北部(黒竜江省、吉林省、遼寧省)では散見されることがわかった。マスコミで報じられることの多い沿海部とはだいぶ空気が違う。沿海部の力のある企業は円安日本に見切りをつけ、欧米やアフリカの顧客を見ている。
筆者は広大な国土の中国を、日本や韓国と同様に国単位で捉えようとするところ無理があると常々論じている。ドイツとギリシャをEUとして一括りで捉えないように中国もせめて、東北部、華北、華中、華東、華南、西部ぐらいに分けて考えないと、大きな誤解が生じる。上海の高層ホテルから見た都市風景と、その8時間後に見る東北地方の炭鉱町の殺伐とした風景は落差が大きすぎて同じ枠内では論じられない。中国国内線航空機はタイムマシーンではないかと思ってしまうこともしばしばである。
東北部の炭鉱町の国有企業の製造現場には、咥えタバコでのんびりと仕事する作業者がまだまだおり、話しかけると彼らの口からは白酒の強烈なアルコール臭がすることさえある。日本の30年前を想起させられる光景だ。しかしながら彼らのポケットの中にはスマホがあり、日本、上海と変わらない時も流れている。(執筆者:岩城真 編集担当:水野陽子)
筆者が初めて訪中した2000年頃からしばらくの間は、中国のどこのサプライヤーに行っても熱烈に歓迎された記憶がある。当時の彼らには日本企業との取引から広義の技術を学びたいという熱意があり、日本企業と取引(販売)していること自体が自分たちのブランド価値を高めることなると思われていた。
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2015-03-10 11:30