フィデリティ投信「フィデリティ・USリート・ファンド」、米国リートは米景気回復により当面年10%程度の収益率も視野に

世界の年金資金等、安定運用を求める資金がリートへの投資意向を強めている。フィデリティ投信が設定・運用する「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は、モーニングスター ファンド オブ ザ イヤー2014の国際REIT型部門で最優秀ファンド賞を受賞した。同ファンドを実質的に運用する米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーのポートフォリオマネージャー、スティーブ・ビューラー(Steve Buller)氏(写真)にファンドの特徴と運用状況について聞いた。
――「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は、「ファンド オブザ イヤー2004」、「ファンド オブ ザ イヤー2011」、「ファンド オブ ザ イヤー 2012」、「ファンド オブ ザ イヤー2013」で過去4度優秀ファンド賞を受賞し、今回初めて最優秀ファンド賞を受賞しました。長年にわたって優秀な運用成績を残してきていますが、ファンドの特徴は?
ボトムアップアプローチによって銘柄を厳選し、集中したポートフォリオを構築しています。ポートフォリオの構成銘柄数は60銘柄程度であり、組み入れ業種配分などにこだわらず、優れた銘柄選定に専心してポートフォリオを構築していることが、他のリート型ファンドと比較して優れた運用成績につながっていると思います。
フィデリティはリートに特化した運用会社ではなく、株式や債券など様々な投資資産を調査分析する230名以上のアナリストの調査レポートをリートの運用でも参考にしており、総合的な判断で組み入れ銘柄をピックアップしています。
たとえば、商業施設など小売りセクターのリートに投資する場合は、米国の個人消費全体の動向や、商業施設の核テナントの業績情報などが、その商業施設の収益性を判断する上で重要な要素になります。また、ヘルスケア関連の施設では老人ホームなどの運営を行う事業者の業績動向や医療関連機関のR&D投資の行方など、ヘルスケアビジネスの現状と将来見通しが施設の収益力を左右する要素になるので、それら分析結果も銘柄選定に活かしています。
米国リート市場は、投資対象となる不動産物件も幅広く多様であり、リートの運用会社も様々な投資戦略を用いてリートの成長を図るなど、様々な投資対象が存在するという特徴があります。それらを調査・分析し、成長性の高いリートを選定していく優れた調査力が、当ファンドのパフォーマンスにつながっていると思います。
また、マザーファンドを運用している米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーは1986年から、25年以上にわたり米国リート運用に携わってきました。長年の運用実績が評価され、フィデリティの米国リートの運用資産残高は、運用会社別でトップレベルの実績になっています。
現在、世界的に米国リートへの資金流入が活発化しています。世界的にリートへの関心が高まる中、日米においてフラッグシップといえる大きなリート・ファンドを運用している実績があるため、運用の効率性の向上や個別銘柄の調査において優位性を保つことができるなど、様々なメリットがあることもパフォーマンスを引き上げる要素のひとつです。
――2014年のトータルリターンは48.30%と大きなリターンを記録しました。この要因は?
米国リート市場全般が好調だったことが追い風になっています。2014年は、米国リート指数が年率30%の成長(米ドルベース)になりました。ただし、2014年12月末の米国リートの価格は、純資産価値を約7%上回る水準に留まっています。この水準は、過去の長期間の平均水準と比較してみても、割高感はないと言えます。また、近年、世界の年金基金が米国不動産市場への投資を拡大しており、巨額な長期資金の流入は米国リートの下支え要因となるでしょう。
米国の不動産市況は景気回復によって、賃料や入居率が上昇するなど好調が持続しています。また、住居用不動産については、雇用が回復し賃金が戻る中で持ち家が回復するとみられていたものが、持ち家の回復が鈍く、賃貸住宅の稼働が引き続き好調です。持家購入から賃貸住宅利用への構造的なシフトも起きているようで、これが住宅リートの価格を押し上げています。ヘルスケア関係のリートも好調で、このような銘柄を選定していたことがパフォーマンスを引き上げました。
更に、日本の投資家の方々は、米国リート価格の上昇に加えて、為替の円安による効果が加わったので年50%近いパフォーマンスになりました。
――毎月の分配金については、過去2年あまりにわたって1万口あたり80円を継続していますが、分配金に関する考え方は?
分配金については、分配原資と基準価額の水準を勘案しながら、分配金額を検討しております。毎月分配金を必ず支払うことを約束しているものではありませんが、できるだけ安定的な分配金額になるように努めています。
――今後の米国リート市場の見通しは?
2014年に米国リートの価格は大きく値上がりし、これによって2013年末の割安状態が解消されたと考えます。そのことによって、今後は、年率10%程度の収益性が期待できる米国リート市場の本来の成長軌道に戻ったといえます。
現在の米国リートの平均配当利回りは3%台半ばであり、米国10年国債利回り2%程度に対して一定の利回り格差を有しています。また、米国商業用不動産の賃料や入居率の上昇を受けて、米国リートについては増配の期待も高まっていることから、現在の利回り水準に過熱感があるとはいえません。
また、世界的な低金利によって、世界の年金資金等が実物不動産やリート等への投資姿勢を強めています。今年になってリート・ファンドへの資金流入も活発になっていますが、米国の優良不動産への投資でも米国外の年金資金と米国リートが購入を巡って競い合うというような状況も現れています。
一方、今後は、米国の短期金利が上昇していく見通しにあります。米国リートは米10年国債の動きに反応しますので、短期金利につれて長期金利が反応するような局面があると、リート価格にも影響が出てきます。ただし、重要なのは米国の景気の行方になります。期待されているように米国の景気が順調に回復していくものであれば、たとえ金利上昇による米国リートの調整があったとしても、その影響は一時的なものとなり、米国リートの成長も続いていくことになるでしょう。
IMF(国際通貨基金)などが世界の経済見通しを発表していますが、先進国では米国が一人勝ちという見通しです。このため、世界の資金が米国市場をめざす展開になっています。その中にあって、米国リートは、米国債を上回る配当利回りがありながら、不動産市況の回復によって成長期待も高まるなど、非常に投資魅力が高いアセットクラスと目されています。当面は、米国リートに死角といえる弱点はありません。資産形成の有力な手段として、米国リートへの投資をご検討いただきたいと思います。
【ファンドの基本情報】
ファンド名:フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)
設定日:2003年12月9日(原則として毎月15日決算)
信託報酬:年1.512%(税抜1.4%)
解約時信託財産留保額:基準価額に対し0.3%
販売手数料:上限3.78%(税抜3.5%)
騰落率(2014年12月末現在):設定来179.50%、過去3年:136.41%、過去1年:48.30%。
(編集担当:徳永浩)
フィデリティ投信が設定・運用する「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は、モーニングスター ファンド オブ ザ イヤー2014の国際REIT型部門で最優秀ファンド賞を受賞した。(写真は、米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーのスティーブ・ビューラー氏)
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2015-03-16 11:15