事務職の派遣に新しい就労形、正社員で常用雇用のスタッフサービス「ミラエール」が好発進

「非正規雇用」(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員等)が全雇用者の35%以上に達し、正社員との待遇格差が社会的な課題として意識されて久しい。このような中で、派遣社員でありながら、身分は正社員という「特定派遣」の仕組みを事務職にも取り入れたスタッフサービスの「ミラエール」が、新しい就業のカタチとして存在感を高めている。スタッフサービスでは「当初の予想以上に応募者が多く、また、派遣先企業の評価も高いことから、『ミラエール』は計画を上回る採用を行っている」(スタッフサービスのミラエール営業部マネージャー福田智之氏)という。派遣先企業や「ミラエール」として働くスタッフにも取材して、新しい働き方を検証した。(写真は、「ミラエール」から派遣を受けるリクルートジョブズの河村晋作さん<左>と、「ミラエール」スタッフの室之園彩さん<右>)。
厚生労働省の2013年調査によると、近年は高齢層(55~64歳)で非正規雇用が広がっていることから非正規雇用比率は緩やかに拡大し、若年層(15~24歳)の非正規雇用比率が2003年以来30%超で高止まりしている。また、やむなく非正規で働いている「不本意非正規」の割合が平均19.2%(15~24歳で17.8%、25~34歳で30.3%)になっている。非正規雇用には「雇用が不安定」、「賃金が低い」、「能力開発機会が乏しい」、「セーフティネットが不十分」等の課題があり、厚労省では「キャリアアップ助成金」などの支援制度を充実し、労働契約法の改正(有期労働契約が5年を超えた場合は「無期労働契約」に)など、「不本意非正規」の正社員化を促す政策が採られている。
「ミラエール」は、事務職を対象とし、スタッフサービスが正社員雇用して、同社と契約している企業に派遣スタッフとして派遣している。働き方は、従来の「派遣社員」(登録派遣)と変わらず、派遣先の就業規則などに従って働くが、“身分”は「正社員」なので、社会保険や交通費など福利厚生が充実し、派遣期間が終了した後でも常用雇用が確保されるためスキルアップなどのキャリア形成がしやすいというメリットがある。
事務領域の派遣会社として成長してきたスタッフサービスは、「やむをえず派遣登録をして働いている方々が、本来希望している正社員として採用されない大きな要因は、『経験』。正社員として採用されるルートは、『新卒採用』か『中途採用』の2つですが、『中途採用』はキャリア採用ともいわれ、募集業務について一定年数の経験が求められます。20代の方々や、キャリアチェンジを考える方には経験値において中途採用のハードルが高くなってしまいます。ところが、派遣社員の依頼は常に存在しています。正社員を希望される方に、正社員としての処遇を用意し、さらに、派遣を通じて希望する職業でのキャリアを身に着けていただくため、『ミラエール』をスタートさせました」(スタッフサービスの福田氏)という。従来は、SE(システムエンジニア)など技術系で主に採用されていた「特定派遣(正社員、または、契約社員として常用雇用したスタッフの派遣)」を、本格的に事務職領域に広げたもの。
「ミラエール」への反響は大きく、2014年4月から実験的にスタートし、同11月に正式リリースしたにもかかわらず、2015年3月現在で約750人を正社員として採用した。当初計画は2014年末に500名採用という目標だったため、採用目標を50%超過し、さらに、新規の採用面接には旺盛な応募が続いている。しかも、「ミラエール」で採用した全員が就労しているという。登録派遣では、グループで約107万人が登録し、うち6万人超が就業している実績と比較して、「ミラエール」の就業率の高さが際立つ。
「ミラエール」の採用基準は、「成長意欲があることが大前提」という。「新しい経験を通じて自己成長を遂げたいという意欲が強いこと。登録派遣に登録なさっている方は、ご自身のスキルを活かした仕事をしたいという希望を持たれていますが、『ミラエール』に応募される方は、スキルや経験が今はないものの、働くことでスキルを獲得し、それを磨いてキャリアアップしたいという強い希望をもっています。採用するにあたっては、ポテンシャルとして伸び代があると判断できる方に絞っています」(福田氏)としている。
派遣先の企業からも「ミラエール」に対する評価は高い。派遣を受け入れているリクルートジョブズの採用コンサルティング部スタッフィング1グループのグループマネジャー河村晋作氏は、「最初は通常の派遣社員を求めたのですが、『ミラエール』の存在を知り、当社では長く働いていただいて業務を覚えて戦力になってほしいという思いがあったことから、『ミラエール』のコンセプトに共感しました」と採用を決めた理由を語る。「『ミラエール』から来る方には、半年ごとにミッションシートを更新することになっていて、スタッフサービスの担当の方と、派遣社員と一緒に、向こう半年で何を覚え、どのような業務ができるようにしたいのかという目標を共有しています。ミッションをクリアすると、それに応じて報酬も上がりますが、それだけ戦力として貢献してくれるので納得感は高いです」という。
実際に「ミラエール」として働いている室之園彩さんは、「派遣前は、未経験で大丈夫なのだろうかという不安もあったのですが、配属先では周りからのサポートもいただけ、思っていた以上の仕事も任せていただき、頑張りがいがあります」と目を輝かせていた。「オフィスワークの経験がなかったので、基本的なことは配属前に研修を受けました。働き始めて2カ月あまりですが、職場の雰囲気が良く、配属先の方々から分からないことは親切に教えていただき、スタッフサービスの担当の方からバックアップもありますので、仕事を続ける上での不安はありません」と語った。
スタッフサービスの福田氏は、「『ミラエール』の課題は、事務職の特定派遣という新しい制度について、採用していただく企業の方々に理解を深めていただくことと感じています。これまでは、派遣社員には必要なスキルを補完するという役割を求められていましたが、『ミラエール』は、“派遣社員を使う”というところから一歩踏み出して、“人を育てる”、“協働する”という発想を持っていただきたいと思っています。育てることにコミットしていただくことで、採用いただいた企業様には、これまで以上のメリットがある制度だと実感していただけると考えています」と、「ミラエール」の定着に本格的に取り組んでいく。(編集担当:風間浩)
派遣社員でありながら、身分は正社員という「特定派遣」の仕組みを事務職にも取り入れたスタッフサービスの「ミラエール」が、新しい就業のカタチとして存在感を高めている。(写真は、「ミラエール」から派遣を受けるリクルートジョブズの河村晋作さん<左>と、「ミラエール」スタッフの室之園彩さん<右>)
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2015-03-16 15:30