経済成長率は下がっても市民は爆買い、国防費増の中国

日本経営管理教育協会が見る中国 第350回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員) ● 第12期全国人民代表大会始まる   中国第12期全国人民代表大会(全人代)の会議が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相は2015年の実質経済成長率の目標を14年より0.5ポイント下げ、「7%前後」とする方針を正式に表明した。成長目標を下げるのは3年ぶりとなり、景気の減速で14年の実質成長率は7.4%と24年ぶりの低成長となった。李首相は改革の進化と構造調整を強調、高い成長を追わず、経済改革を通じて安定成長への軟着陸を目指すとの正式発表があった。   今回は、最近の中国経済環境から感じられる状況について考察してみたい。 ● 春節で日本を襲った爆買中国人   経済の安定成長の一方、中国メディアによると、今年の春節は約45万人が日本を訪れ、消費金額は約60億元(約1140億円)にも上ったという。中国のSNSの代表格「微博(ウェイボ)」を分析すると、医薬品・化粧品等が前年比200%以上の伸びを示しているとのことであった。電器製品の分野では、定番であった炊飯器が消え、温水便座が出てきた。来客があっても、これがあれば中国人特有の「メンツ」が保てるというものだろう。     年間を通して見てみると、昨年度の訪日外国人旅行客が約1340万人、そのうち中国は台湾・韓国に次いで第3位の約240万人で全体の18%だ。しかし1人当たりの旅行支出額を見ると、中国はなんと23万1753円と、台湾の2倍、韓国の3倍の旅行支出を締めている(観光庁「訪日外国人消費動向調査(速報)」より引用)。したがって、日本への旅行消費額もダントツのトップ(27.5%)である。   経済成長が低下しても、絶対的な成長額は格段に飛躍しており(分母が大きい)、日本の流通業がその恩恵を得ているのは間違いない。 ● 経済成率長鈍化でも増える国防費   経済成長率の鈍化を公表したが、一方、15年の国防予算(中央政府分)は前年実績比10.1%増の8868億9800万元(約16兆8500億円)と、5年連続で2桁の伸びを維持し、さらに国力を増してきている(日本経済新聞3月5日記事より引用)。日本に代表されるアジア太平洋への回帰を掲げる米軍に対抗して、海洋進出を積極化する姿勢がうかがえる。中国発の国産空母の建造やサイバー問題・宇宙問題と絡めて共同の軍事開発を進めているようである。   経済成長の鈍化・爆買・軍事費増、この3つの現象を見て、これからの中国の動向を見逃すことができないと思うのは私だけだろうか?   写真は北京人民大会堂と観光客。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)  
中国第12期全国人民代表大会(全人代)の会議が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相は2015年の実質経済成長率の目標を14年より0.5ポイント下げ、「7%前後」とする方針を正式に表明した。
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2015-03-18 10:00