自己実現の結果にコミットする「RIZAP」で成長を加速する健康コーポレーション

「結果にコミットする。」というメッセージでパーソナルトレーニングジム「RIZAP」を展開する健康コーポレーション。「自己投資産業で世界No.1ブランドをつくる」を目標に掲げ、2020年を最終年度とする中期経営計画をスタートしている。同社代表取締役社長の瀬戸健氏(写真:右)と、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:左)が、「RIZAP」の急成長の背景から見る健康コーポレーションの強みと今後の戦略をテーマに対談した。
朝倉 2003年4月に会社を設立されていますが、創業にあたって掲げたビジョンは?
瀬戸 創業当時はインターネット関連ビジネスが大きく注目され、ITベンチャーが華々しく活躍していた時代でした。その中で、「人にとって必要なものはなんだろう」と考え続けた結果、人や社会が元気であるためには、“健康”が一番大事だと思い、体だけでなく、心まで健康づくりを応援する企業を立ち上げようと考えました。
そこで、社名には、当時の流行だったカタカナやアルファベットを使わず、あえて漢字で「健康」という言葉を冠した社名にしました。
朝倉 名は体を表すといいますが、社名に「健康」を掲げて、社会に対するコミットメントを明確にしたのですね。「健康コーポレーション」とは、いい名前だと思います。その後、上場に至るまでの経緯は?
瀬戸 当初は、「豆乳クッキーダイエット」からスタートしました。普段の食事の1食を豆乳クッキーに置き換えることで、食べながら痩せる、体に無理をかけずにやせることを提案しました。初年度は2400万円の売上だったのですが、楽天市場などの通販サイトで大変な人気となり、2年目は8億9000万円に急拡大しました。楽天市場では当時1600万アイテムくらいの取扱商品があったのですが、その中で2年連続売上1位という記録を作りました。
そして、3年目に売上高が24億円を超えて2006年5月に札幌証券取引所アンビシャス市場に上場します。4年目の2007年3月期の売上高は100億円を突破しました。
朝倉 目を見張るほどの急成長を遂げていますが、御社の強みはどこにあるのですか?
瀬戸 徹底したマーケティングに特徴があると思います。当社は、売上高が100億円の時に60億円以上を広告宣伝費に使いました。一般的なメーカーは、売上に占める広告宣伝費は、せいぜい数%程度のところ、当社では戦略的な広告宣伝を展開しています。
これができるのは、当社製品が企画から、開発、販売まで自社で行っているからです。通常であれば、作った商品を小売店舗に卸して、販売店は一定の手数料を上乗せして販売するのですが、当社では販売まで直接行っています。それだけ、同じ収益率でも広告宣伝に回せる費用を潤沢に確保することができます。
そこで、チラシ1枚、看板1つにまで、神経を使って反響の管理を行っています。たとえば、現在、積極的に広告展開している「RIZAP」の申し込み受付電話番号は150以上の番号を使っています。チラシ、看板、交通広告など、様々な広告媒体に掲載する電話番号を1つ1つ管理し、どのようなクリエイティブで、いつ、どこで出した広告からの反響なのかということを、1件1件分析して次回の広告宣伝に応用する他、情報を蓄積しています。すでに10年以上にわたるデータがありますので、今後の事業展開において、もっとも効果的な広告宣伝プランを自社で計画することが可能なのです。
朝倉 「RIZAP」は急成長しているようですが、「RIZAP」の成長戦略は?
瀬戸 「健康」をキーワードに、日本の社会を考えた時に、「心が満たされていない」というところに課題を抱えていると感じました。
「マズローの欲求5段階説」では、「生理的欲求」、「安全への欲求」、「社会的欲求」、「尊敬・評価の欲求」があって、高次の欲求の最上位に「自己実現の欲求」があるとされています。日本の社会は、低次の欲求である「生理的欲求」や「安全への欲求」は満たされています。ところが、高次の欲求については満たされていないという方が少なくないと思います。そこで、自分の能力を引き出したいという自己投資、自己実現をめざす場を提供するのが「RIZAP」です。
広告等では引き締まった体を手に入れることを訴えていますが、それは手段のひとつです。トレーニングによって必ず変わることができることを実感していただいて、自信を持てる体を手に入れるという自己実現を体験していただきたいのです。
「RIZAP」では最初の2カ月間が重要だと考えます。「結果にコミットする。」と言っていますが、トレーナーと二人三脚で2カ月間のプログラムを“やり遂げること”をめざします。やり遂げることが大事なのです。やり遂げれば、必ず体は変わります。
これまで、さまざまなフィットネスジムがありましたが、「やり切る力」に焦点をあてたジムはありませんでした。この“やり遂げること”を実現するために、心理カウンセラーと徹底的に研究し、やり切る力を引き出すノウハウを構築しました。「結果にコミットする。」という「RIZAP」の宣伝文句は、食事療法も含めた科学的なアプローチでシェイプアップに取り組み、それをやり切ることによって、2カ月間で誰もが見違える体になることを表しています。
「RIZAP」では、パーソナルトレーナーの採用を進めていますが、この「やり切る力」を引き出すノウハウを持ったトレーナーは、ほとんどいません。研修を通じて、人との接し方や話し方をはじめ、コミュニケーション能力を1から身に付けてもらってから、トレーニングにあたっていただいています。
朝倉 自己実現の欲求を持っている人の潜在需要は大きそうです。「RIZAP」の成長を確実なものにする上でも、人材育成に力を入れているそうですね。
瀬戸 「RIZAP」は、トレーナーが主役です。機械や技術ではなく、一人ひとりのトレーナーが、お客さまの喜びを心から自分の喜びとして成果を感じ、日々の業務にあたってもらうことが全てだと考えています。このため、「RIZAP」は現在、入会の順番待ちの状態にあるのですが、毎月1度は全トレーナーを集めた研修会を実施しています。
「RIZAP」の存在は何のため? 「RIZAP」が提供したい価値を届けられているのか? などを自問自答し、日々の業務の振り返りを行います。また、お客さまに喜んでいただいた事例のコンテストや、一人ひとりのトレーナーの現在に至るまでのドラマを作って、トレーナー間で、お互いの存在を確認し合うことも取り入れています。
朝倉 従業員を大切にし、社員のモチベーションに気を配る経営者は、成長産業に不可欠であると思います。今後の展望は?
瀬戸 シニア市場に大きな可能性があると感じています。日本の幸福度は、年齢が上がるほどに下がっていくという残念な調査結果があるのですが、人は、生涯輝けると思います。「RIZAP」が提案する自己実現のための自己投資も、シニアの方々にもっとご活用いただきたいと思っています。
また、医療機関とタイアップした「RIZAP」の展開を本格化します。「RIZAP」には医師の方々の利用も多いのですが、利用された医師の方から、「RIZAP」のトレーニングプログラムを生活習慣病の改善に利用したいというお申し入れをいただいています。これまで健康診断や人間ドックなどで、異常な数値が出た場合、医師はアドバイスすることしかできず、1年後にも状況が改善されていないなどということが良くあるそうです。
それが、「RIZAP」のやり遂げるトレーニングを実行すると、異常値の改善が図れることを、医師の方ご自身で体験され、理解されています。そこで、病院に併設する形で、「RIZAP」を開設し、アドバイスにとどまらず、生活習慣病の予防のための具体的な手段を提供しようと考えてくださっています。すでに、今年1月に福岡県で第1号の医院併設型「RIZAP」をオープンしていますが、実際に利用なさった方々が、生活習慣病につながる数値が改善したという報告を多数いただいています。
現在、トレーニングなどの内容が、健康診断で測る数値に、どのような影響を与えているのかということのデータを蓄積していっています。多くのデータを集めることによって、生活習慣病を予防するための具体的なソリューションを提供できるようになるのではと期待しています。
朝倉 海外への展開は?
瀬戸 1年半前にスタートした中国の上海での「RIZAP」は既に大型化して黒字転換しました。現在、シンガポール、台湾に展開していますが、いずれも順調で、ニューヨーク、香港への開設準備を進めています。
いずれの地域でも、フィットネスジムはあるのですが、「RIZAP」のように「結果にコミットする。」というサービスを行っているところはなく、日本発のサービスとして受け入れられ始めています。
朝倉 中国の13億人市場への展開は、今後の高齢化の進展を考えても、大きなポテンシャルのある事業になりそうですね。
瀬戸 創業して11年、「RIZAP」は3年目という、まだまだスタートしたばかりの企業グループですが、「日本を元気にしたい」という志を持って、全力で頑張っていきたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
「結果にコミットする。」というメッセージでパーソナルトレーニングジム「RIZAP」を展開する健康コーポレーション。同社代表取締役社長の瀬戸健氏(写真:右)と、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:左)が、「RIZAP」の急成長の背景から見る健康コーポレーションの強みと今後の戦略をテーマに対談した。
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2015-03-20 11:00