三井住友アセットマネジメントの「椰子の実」、アジアの調査チームが日本人のファンドマネージャーとコラボした運用の強み

 日本の投資家の海外投資に対する目線が、アジアに戻り始めている。中国経済の成長鈍化からアジアへの投資熱は全般に後退していたが、世界的に見て比較的高いアジアの経済成長率、そして、昨年来の原油安のメリットを受けやすいという追い風を受け、アジア市場のパフォーマンスに再び注目が高まっている。モーニングスターのファンド オブ ザ イヤー2014の国際株式型部門で最優秀ファンド賞を受賞した「三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(愛称:椰子の実)」は、1年間のトータルリターンが22.07%と、目立って好調な成績だった。同ファンドのファンドマネージャーである三井住友アセットマネジメントの橋爪謙治氏(写真)に、同ファンドの運用の特徴等について聞いた。 ――「三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(愛称:椰子の実)」がファンド オブ ザ イヤー2014の国際株式型部門で最優秀ファンド賞を受賞しました。このファンドは2010年にもファンド オブ ザ イヤーで優秀賞を受賞するなど、継続して高い評価を得ています。ファンドの運用の特徴は?  運用コンセプトは、ファンド名のとおり、アジア・オセアニア地域の好配当株式を主要な投資対象としたアクティブファンドです。好配当株式というのは、先進国の株式で見ると、成熟産業や公益企業など、不人気で退屈な銘柄という印象になりますが、アジア地域においては、好配当=成熟産業とは言えません。  多くの企業が成長途上にあり、かつ、アジア市場においては「インカム重視」という投資スタイルが定着していないため、個別の企業内容をよく調べると、継続して安定した収益を確保しているにも関わらず、一般の投資家に注目されずに放置され、結果的に好配当株式に分類されるような企業が少なくありません。しかも、業種も製造業や消費関連など、幅広く分散していることも特徴です。  当ファンドでは、現地調査に基づいて、企業内容が良いにも関わらず、割安に放置されて配当利回りが高くなっている銘柄をピックアップし、80~120銘柄でポートフォリオを構築しています。  運用にあたっては、東京、香港、上海の拠点に在籍する25名の運用・調査スタッフからの情報・調査レポートを活用しています。ファンドマネージャーである私自身が現地法人の訪問、来日面談も含めて年間約250件のミーティングを行って各企業から情報を直接取得するようにしている他、チームのミーティング件数は年間約1,800件に及びます。安定した配当を実施するかどうかについては、経営姿勢が大きく影響しますので、投資先や投資候補先企業の経営陣との面談をできるだけ実施するようにしています。  ファンドの設定は2005年7月ですが、私は1997年からアジア株式への直接投資を行ってきました。18年目になるアジアへの投資を振り返って、一番強く感じるのは、その時々に人気化する投資テーマは裏切られるケースが多いということです。優れた経営戦略を持ち、世界のトップシェアを握っている企業などで「知られざる優良銘柄」を発掘し、地道に企業調査を行い割安な銘柄にコツコツ投資した方が、5年-10年という投資期間で考えると、より高いパフォーマンスにつながりやすいということです。この確信が、ファンドを運用する基本姿勢にも通じています。 ――2014年のトータルリターンは22.07%と、類似ファンド分類の平均を8.92%上回りました。昨年の運用を振り返って、好パフォーマンスの要因は?  昨年のパフォーマンスは、インド株式への投資が大きく寄与しました。年初にインド企業の中に、歴史的な配当利回りの水準になっている銘柄が多くリストアップされました。当時はインド経済の先行きに悲観的な見通しが多く、株価の見通しも弱気だったのです。そこで、企業内容を熟知している企業で、配当の実績や現在の業績を考え、投資する価値があると判断した銘柄を、2月に組み入れていきました。  インド株式については、5月の総選挙の結果を受けて大きく値上がりし、2月に投資した銘柄の中には、1日で20%値上がりした銘柄もあります。  割安株への投資には、「バリュートラップ」と言われる、割安のままにいつまでも株価が上がらないこともありますが、当ファンドは、「株価が上がらなくても、魅力的な配当利回りが安定的に獲得できれば、十分な投資価値がある」と判断します。このような投資判断を継続的に行って、昨年はインド株への投資が大きな成果につながりました。 ――ファンドの強みは?  まず、アジア・オセアニアの好配当株式に投資するというコンセプトが、現在の市場環境に合っていると思います。  また、現在の運用体制もうまく機能していると思います。香港拠点は、韓国、台湾、マレーシア、インドなどアジア各国の国籍を持つ調査担当者が在籍しています。「ホームバイアス」という言葉のとおり自国のことに関しては、悲観的・楽観的どちらかに偏る傾向がありますが、全体をマネージメントしているのが日本人であり、アジアの経済についてニュートラルな判断ができるというメリットがあります。アジア現地の調査チームと日本人のファンドマネージャーのコラボレーションが強みのひとつです。  この運用チームは、当ファンドの設立と相前後して拡充してきたのですが、すでに10年近く運用を重ね、連携も良くなっています。ここまで作り上げるのに苦労はありましたが、自社でアジアに調査ネットワークを整備できたメリットは大きく、他社には追随できないような強みになっていると思います。 ――毎月の分配金が2015年1月から1万口あたり90円になりました。昨年は6月以降に75円の分配でした。分配金に対する考え方は?  ファンド設定以来、継続して毎月分配金をお支払いし、安定的な分配をめざして分配水準の見直しは適宜行ってきました。今回の見直しは、堅調に推移してきた基準価額の水準等を勘案し、分配金を1万口当たり90円にしました。分配対象額は、経費控除後の利子、配当等収益と売買益等の範囲内とし、基準価額水準、市況動向等を勘案して決定しています。 ――アジアには地政学リスクなど、依然として不安定要素があると思いますが、今後の運用環境を、どのように見ていますか?   地政学リスクは常に存在するリスクとして意識しています。ただ、日本の企業が今後、直接投資を行いたいと考えている上位20カ国のうち、半分強はアジアの国々です。このような日本からの直接投資も活発で、経済交流が進んでいる地域には、成長期待も大きいと考えます。経済基盤の脆弱性や政治の不安定さなど、さまざまな投資リスクは存在しますが、たとえマイナス成長の時期があったとしても、トータルでのリターンが他の地域を上回る可能性が高いのが、アジア・オセアニア地域であると考えます。  また、アジア企業には、アジア危機やリーマン・ショックなどの世界的な経済危機を乗り越えて、存続し発展を続けているしたたかな企業も少なくありません。そのような銘柄を、「好配当」という尺度でスクリーニングし、地道な調査の積み重ねによって選別投資していけば、引き続き良好なパフォーマンスが続けられると思います。資産運用のコアとなるファンドのひとつとして、「椰子の実」を考えていただきたいと思います。 【ファンドの基本情報】 ファンド名:三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(愛称:椰子の実) 設定日:2005年7月29日(毎月18日決算、ただし休業日の場合は翌営業日) 信託報酬:年1.7064%(税抜1.58%) 販売手数料:上限3.24%(税抜3.0%) 騰落率(2014年12月末現在、税引前分配金を再投資した場合の数値):設定来123.5%、過去3年:106.6%、過去1年:22.07% (編集担当:徳永浩)
ファンド オブ ザ イヤー2014の国際株式型部門で最優秀ファンド賞を受賞した「三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(愛称:椰子の実)」は、1年間のトータルリターンが22.07%と、目立って好調な成績だった。同ファンドのファンドマネージャーである三井住友アセットマネジメントの橋爪謙治氏(写真)に、同ファンドの運用の特徴等について聞いた。
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2015-03-25 09:15