【相場の福の神トップインタビュー】IBJ、婚活サービスのブランドを磨きライフデザイン領域へと提携・連携で勇躍めざす

 婚活サービスを展開するIBJ <6071> は、成婚率が50%超の会員制ラウンジ事業など日本最大規模の婚活サービス実績をベースに、「結婚」を軸としたライフデザイン領域へと成長ステージを拡大しようとしている。地方自治体の婚活サービスと連携する試みや、ブライダル産業や不動産、保険など結婚がきっかけになる生活関連産業との連携など、本業から派生する分野への事業展開は、営業利益で年20%成長という目標をクリアしてきた同社の業容を飛躍的に拡大するエンジンになりそうだ。IBJ代表取締役社長の石坂茂氏(写真:左)に、「相場の福の神」として活躍するSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:右)が、今後の展望を聞いた。 藤本 御社は2000年に創業し、一時期ヤフーの子会社になったこともありましたが、2006年に現経営陣によるMBO(経営陣による株式の買取り)によって独立してIBJを設立以来、事業の成長がスピードアップ。2012年に東京証券取引所JASDAQに新規上場を果たし、2014年12月には東証2部に上場市場を変更するなど、急速に成長を遂げています。まず、御社のビジネスモデルについてご紹介ください。 石坂 当社は2000年に日本で初めてのインターネット結婚情報サービス「ブライダルネット」をオープンしたことに始まります。婚活サイトを運営し、会員を対象にしたパーティなどのイベントを開催している会社は少なくありませんが、当社では、婚活サイトの運営に加え、昔ながらの仲人業を併営しています。  婚活サイトが男女の出会いの機会を作るマッチングを目的に運営されていますが、出会うだけでは成婚には至りません。そこで、成婚までのサポートを行い、成果報酬型の婚活サービスに転じたことで成婚率が大幅に上昇し、年間の結婚カップル数が2500組に達する日本最大規模の婚活サービス企業に成長しました。  現在、婚活サイト「ブライダルネット」と、婚活パーティ・街コンを行うイベント事業の登録会員を含めると、サイトで登録いただいた会員数が約27万人。また、東名阪に直営のIBJ結婚相談所9店舗と、全国の加盟店相談所約1000店舗というリアル店舗で登録いただいている約5万人の会員、合わせて婚活会員数約32万人にサービスを提供しています。これだけの規模で全国展開し、ネットとリアル店舗によるコンサルティングを提供している企業は、当社が唯一といえます。  直営のIBJ結婚相談所に登録いただいている会員の成婚率(結婚退会者数/全退会者数)は50%を超えます。また、加盟店相談所でも成婚率は20~30%という状況です。一般の婚活サイトは成婚まで追跡した情報を公開していないので明確には把握しかねるのですが、当社基準の成婚率は概ね数%だと思います。婚活サポートのあるなしで、それほど大きな差がついてしまうのです。 藤本 足元の業績は、2014年12月期に売上高33.17億円(前年度比28.8%増)、営業利益6.43億円(同42.8%増)と好調ですが、当期(2015年12月期)の営業利益20%増という目標を実現するための施策は? 石坂 当期は売上高38.6億円(16.4%増)、営業利益7.85億円(22.1%増)を目標に掲げていますが、この数値は固く見積もっています。現在、新規事業として位置づけている婚礼関連企業や不動産、保険会社との提携ビジネスの成長成果や、地方自治体との連携、また、月間4000万~5000万ページビューに達している婚活サイトの会員基盤を活かした広告配信ビジネスの成長などは、予想業績に織り込んでいません。 藤本 それほど力強い成長が期待できる背景は? 石坂 一番大きいのは、婚活サービスが日本の“国策”に沿っていることです。現在の日本は、少子化が成長の阻害要因として意識され、少子化対策が必要とされています。実際に、国の統計で、日本の生涯未婚率は20%(=5人に1人、2010年度)。2014年版「少子化社会対策白書」によると、25~29歳の男性の未婚率は71.8%、女性は60.3%で、未婚化・晩婚化の傾向がますます深刻になってきています。  婚活サービスの利用に二の足を踏まれる方は少なくないため、その潜在需要は膨大です。20~59歳の未婚者数(約1111万人)に、家計調査から割り出される婚活に拠出可能支出年額9.5万円をかけると、年間1兆500億円の市場がある計算です。現在の婚活サービス事業者の売上合計は1000億円以下に過ぎません。向こう数年は、この潜在需要を背景に高い成長が可能だと考えています。  当社サービスを利用しての成婚組数を年間6000組にしていきたいと考えています。これは、現在の日本の成婚組数約65万組(2014年厚生労働省調べ)の約1%です。この水準が実現できると、IBJを使った婚活が、珍しい事例ではなくなり、もっと皆さんが心理的な抵抗なく、当社サービスを利用していただけるようになると思います。 藤本 現在の2500組というのは全体の0.4%程度ですね。中・高校に例えると、1学年に1人いるかいないかの割合だったものが、1%になると1学年に複数人はいる状況ですから、これまでよりずっと身近になります。どのようなサービスにも、ある一定水準を超えると爆発的に需要が伸びるステージに入りますが、御社では年間6000組の成婚が、ターニングポイントになるかもしれません。現在の競合や、対処すべき課題は? 石坂 競合は、あまり意識していません。現在は潜在需要を掘り起こしている段階ですから、婚活サービス会社が会員を募り、イベントを開催するだけで、需要が喚起され市場全体が活性化することにつながると考えています。  課題は、リアル店舗の拡充と、専門性の高い人材確保と人材育成にあると思っています。  拠点の拡充については、全国の地方自治体との連携に可能性を感じています。これまで、山形県、富山県、山梨県、岐阜県、和歌山県、高知県で婚活アドバイザーの研修や婚活支援セミナーを行っていますが、都道府県で取り組む婚活サービスで当社と連携したいというお問い合わせが増えています。  当社では加盟店の育成を目的に、婚活アドバイザーを3カ月~6カ月で1人前にする教育プログラムがあります。さらに、全国1000店の加盟店をネットワークし、5万人以上の登録会員を擁するシステムの利用も可能です。各地方自治体では、少ない費用で婚活に関する専門人材の育成と、全国ネットのシステム活用ができるようになります。地方自治体が少子化対策として本格的に婚活に取り組むことを積極的に応援していきます。 藤本 今後の成長戦略は? 石坂 既存の婚活サービスの取り組みを充実させ、これから市場拡大が期待できる婚活サービスで引き続きNo.1の実績を確保し、シェアの拡大を図ります。  また、新規事業として取り組んでいる異業種企業との連携による「婚活サポートコンソーシアム」による婚活周辺事業への展開にも可能性を感じています。青山商事、エムティーアイ、ギフコ、テイクアンドギヴ・ニーズ、ディップ、藤田観光、プリモ・ジャパン、ミサワホームと連携して少子化対策プロジェクトを始めました。年間2500組の成婚カップルが誕生しますので、これまでも婚約・結婚指輪、式場紹介などの関連サービスを提供してきましたが、不動産(住宅)、保険などの分野にも事業領域を広げます。  さらに、婚活に関していただいている様々な個人情報をビッグデータとして活用し、個人属性データにピンポイントで対応する広告配信システムの構築も可能になると考えています。グループ全サービスの個人属性データを一元管理するデータベースを構築することで、月間4000万~5000万ページビューのサイトを、より有効な広告媒体として活用していだけるようにします。  そして、昨年に自社店舗を開設した台湾での事業が、順調に進展し、今年度内にも黒字化が見込まれる段階に進んできたため、日本での事業をアジア各地に展開することも考えています。各国の事情を精査する必要はありますが、少なくとも台湾においては多店舗展開の可能性を感じています。  さらに、婚活サービスのリーディングカンパニーとして、ブランドを磨いていきたいと考えています。すでに、全国の加盟店では、結婚情報・結婚相談のマル適マークを取得する運動を始めました。婚活サービスでは通常とは異なるプライバシー情報が集まりますので、その個人情報の管理や運用、事業所としての財務の健全性など、適切なサービスを実施しているという第三者機関からの認証を得ることによって、皆さまに安心してご利用いただける環境を整えたいと思います。  婚活サービスは、日本に伝統的にある仲人業のように古くから存在するサービスです。また、高度成長期には、社内結婚も活発で、社内の総務部長が仲人業のような役割を担うこともありました。ところが若者の価値観が多様化し、伝統的な仲人業も会社も婚活サポートとして十分な役割を果たせなくなりました。その役割を担うべく生まれたのが、当社のような婚活サービス会社だと思います。日々、1組1組へのサービスを大切にして、「IBJの婚活サービス」をしっかりしたブランドに育てていきたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
婚活サービスを展開するIBJは、成婚率が50%超の会員制ラウンジ事業など日本最大規模の婚活サービス実績をベースに、「結婚」を軸としたライフデザイン領域へと成長ステージを拡大しようとしている。IBJ代表取締役社長の石坂茂氏(写真:左)に、SBI証券の藤本誠之氏(写真:右)が、今後の展望を聞いた。
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2015-03-30 12:45