礼を怠れば政(まつりごと)を失う

日本経営管理教育協会が見る中国 第352回--水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長) ● 政治の根本は礼にある   中国古典の言葉に「礼を怠れば政(まつりごと)を失う」というものがある。この言葉の意味するところは、礼儀を誤ると、一国の政治が失われてしまう。政治の根本は礼にある。晋の宰相・叔向(しゅくきょう)の言葉ということである。   最近の日中関係での中国指導者の態度を観るにつけこの言葉を思い起こさざるを得ない。 ● 外交上異例の非礼の数々   2014年11月北京で開催されたAPEC首脳会談でホストを務めた習近平国家主席は、三年ぶりに顔を合わせた日本国代表安倍晋三総理に対して、客人を迎えるのに待たせて現れた上に笑顔も見せず、背景に日本国旗も準備せず言葉を交わすことなく応対した。   また、2015年3月21日にソウルで行われた日中韓三カ国外相会談に於いても、中国を代表する王毅外相は、韓国伊外相を中心に日中韓が並んで手を組み写真撮影した際に、あろうことか日本の岸田外相とだけ手を組むことを拒んでいた。   このように明らかに外交上異例の礼を欠いた稚拙な行動は、今や世界第二の経済大国に成長した中国指導者の品格を疑わざるを得ない行為ではないかと残念に思った次第である。さらに、昨年6月、中国の李克強首相は、英国訪問を前に「エリザベス女王と面会させなければ訪英を止める」と英国政府に強引に脅しをかけたと伝えられている。 ● 「裸老族」が大きな社会問題に   その世界第二位の経済規模を誇る大国中国の経済成長予測率は、昨年よりも厳しくなり7.5%前後から7%前後に成長率を引き下げざるを得なくなっている。引き続き持続的な経済成長を図ろうと思うなら、このグローバル経済の下では安定した国際協調関係が不可欠となるはずである。また低成長に伴い国内問題も混乱が増加しているようである。   新しい問題としては、改革解放後に農村から都会に出てきた2億7000万人とも言われている出稼ぎ労働者が高齢化して、年金も貰えず明日の暮らしもままならぬ貧困状態に陥っているということである。これらの人々は「裸老族」呼ばれて大きな社会問題となっている。さらに農村では、開発のため地方政府に土地を安く買い取られて生活が出来なくなった農民達が政府に反抗して暴動を起こす事件が多発しており、その数は全国で30万件にも達していると言われている。 ● 何のために増強された軍事力を使うかについては不明   アジアや東南アジアでは領土問題をめぐる衝突が多発しており、その攻勢は領土だけに留まらず、その舞台もアジア以外にも広がっている。しかも世界中の市場に触手を伸ばし、エネルギーや天然資源を貪っている。   その一方で、中国の軍事予算は毎年二桁台の増加となっており、2015年も前年比10.1%増となった。だが、日本の2倍をはるかに超えた軍事費を何のために使うのかは明らかではない。   今ではパックスアメリカーナ(アメリカによる平和)の影響力が低下してきているところかから、アメリカに代わって覇権国を目指していることも考えられるが、現在の指導層がアメリカに代わって世界の政治・経済・文化をリードすることは全く想像もできないことであろう。 ● 日中友好の心情は日増しに冷え込むばかりだったが改善の兆しも   私は、中国は信頼を重視して礼節を守るお国柄であると信じて、これまで40数年間、中国訪問も80数回を重ねる程日中の経済文化交流に力を尽くしてきたつもりである。しかしながら上記のような最近の中国指導者の礼儀を欠いた行動を見るにつけ、長年抱いてきた友好促進の心情は日増しに冷え込んできている。   ただそのような状況下、日中政治の中心的関係者の間で関係改善の兆しが少し見え始めているとも伝えられてもおり、今後に期待したいものである。     写真は中国政治の中心北京人民大会堂。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:水野陽子) 
 中国古典の言葉に「礼を怠れば政(まつりごと)を失う」というものがある。この言葉の意味するところは、礼儀を誤ると、一国の政治が失われてしまう。政治の根本は礼にある。晋の宰相・叔向(しゅくきょう)の言葉ということである。
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2015-04-01 12:45