【中西文行の中期相場展望】日経平均の3万円台はあるか?

<中西文行の中期相場展望> ■日経平均の3万円台は非現実的、16年3月期の増益率は1ケタにとどまる  新春相場見通しでは、大方の市場関係者は、日経平均株価の年内高値を2万円と見ていた。しかし、3月に入り、主要企業の第3四半期(10-12月期)の決算が出そろうと、15年3月期増益に続き、16年3月期も主要企業は2桁増益との強気の見方が一人歩きしている。その中で、日経平均株価は2万円に急接近した。  株価上昇の背景は、好業績もあるが、日銀のETF購入や公的年金の運用ポートフォリオの見直し(株式比率の拡大)に基づく株式需給の改善も大きい。時間軸効果、期待効果、リバランス効果が揃って示現した株価上昇である。  しかし、4月以降を見た場合、日銀のETF購入は15年末で完了し、公的資金の株式運用比率も年末には目標ゾーンの25%に接近、官制相場は息切れする公算だ。市場のリード役である外国人投資家は官制相場の呼び水に呼応したが、冷静に考えれば、米国は年央にも断続的な利上げに踏み切り、これを警戒してNYダウの上昇ピッチは鈍化、ウクライナ内戦によるロシア経済制裁の余波、イスラム国拡散の中東・北アフリカ情勢、国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)などが6月末を期限としたギリシャの財政再建問題、アジアインフラ銀行(AIIB)不参加に伴う日本企業の不利益、6月にも決着する日米TPP交渉の行方など不透明要因が山積している。  上場企業の業績も15年3月期は、13年1月の1ドル89円台から14年1月の103円台、15年1月の118円台とタイムラグを伴う円安効果の恩恵をフルに享受したが、16年3月期はどうだろうか。  米国は足元ドル高による輸出停滞、輸入増大を警戒し始めており、共和党が主導する米議会が1ドル130円前後を容認するだろうか。15年後半も120円前後なら円安メリットは生まれない。よって増益率は1桁に鈍化するだろう。ユーロ圏や中国の景気回復となれば、輸出企業には朗報だが、欧州株、香港株などとの比較感から、先行した値上がりした日本株の割高感が台頭する。  12年10月を起点とした長期上昇相場で、日経平均株価(概算)は8500円台から1万9500円台に値上がりし、配当利回りは低下した。今後、日経平均株価は15年ぶりに2万円台に復帰するだろうが、15年間に日本の投資家の高齢化も進んだ。いまだデフレ脱却もはっきりしない国内景気にバブル相場は程遠いだろう。  「5月に株を売れ」の相場格言がある通り、官制相場の楽観で2万円を超えた後は、いままでのようには値上がりしないだろう。実際、1単元8000円で買えた株は、もはや2万円が必要になる。単元株への投資金額は増加し、追随できる個人投資家は減少する。日経平均株価2万円は通過点であろうが、内外情勢などを踏まえれば、3万円は非現実的だ。2.3万円程度が妥当で、これでも年初の1万7000円台から6000円も値上がりのミニバブルである。 【プロフィール】 中西 文行(なかにし ふみゆき)  法政大学卒。岡三証券経済研究所、岡三インターナショナル(ロンドン)、SMBCフレンド証券などで内外経済調査、企業調査、チャート分析、投資情報調査に従事。2013年にロータス投資研究所(代表)として独立。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
新春相場見通しでは、大方の市場関係者は、日経平均株価の年内高値を2万円と見ていた。しかし、3月に入り、主要企業の第3四半期(10-12月期)の決算が出そろうと、15年3月期増益に続き、16年3月期も主要企業は2桁増益との強気の見方が一人歩きしている。
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2015-04-02 10:00