ドル/円は方向感が出にくい展開、ポンド/ドルのボラティリティ高まる=外為どっとコム総研

ドル/円は1ドル=120円を挟んだもみ合いが続いている。外為どっとコム総合研究所の取締役 調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「当面は米ドル主役の相場が続くだろうが、ドル/円は大きく動きにくい。売りポジションが過去最高水準に膨らんだユーロ/ドル、また、5月の英総選挙が注目されるポンド/ドルに意外に大きな値動きがありそうだ」と語っている。(写真はサーチナ撮影)
――3月のFOMC(連邦公開市場委員会)を経て、ドル/円ではドル買いの勢いがなくなってきています。1ドル=120円を挟んだもみ合いが続いていますが、当面のドル/円相場の見方は?
3月のFOMCにおいて、市場が期待していた「6月利上げ」の可能性が低下してしまったため、テーマを見失ってしまったような状況になっています。特に、FOMCにおいて政策金利見通しが引き下げられた影響が大きいと思います。
昨年12月の時点では、今年12月の政策金利を1.125%としていたものが、今回、0.625%に引下げられました。現在の政策金利が0~0.25%ですから上昇余地は0.375%しかなく、利上げ幅が0.25%刻みだとすれば年内の利上げは1.5回にとどまるという計算になります。たとえ6月~7月に1回目の利上げが実施されたとしても、追加の利上げは年内にもう一度あるかないかという状況になってしまいました。
米国の利上げ路線には変化はないのですが、利上げペースは、市場の期待よりも大きく後退した印象です。ただ、利上げの方向性に変わりはないので、ドルが崩れるということはないでしょう。少し長期の話ですが、FOMCは2017年末には政策金利を3.125%にまで引上げる見通しを示しています。3年で3%程度の利上げのシナリオに向け、そのスタートを今年に開始する意向であることに変わりはないのです。
今後の動きは、イエレン議長が繰り返し強調している通り、経済情勢次第です。特に、雇用統計には十分に注意していく必要があります。3月までに発表された1月~2月の米経済指標は、寒波の影響もあって力強さを欠く内容でした。今後、寒波の影響がなくなる4月~5月の経済指標が米国経済の復調を裏付けるものであるかどうかを見極めていく必要があります。
雇用統計が4月、5月と続けて強い数値が出てくれば、6月にも利上げ開始にゴーサインが出てくる可能性が残っています。6月の連邦公開市場委員会(FOMC)声明で「慎重なペースで引き上げへ」という文言が確認できれば、市場は7月の利上げを読んで、一気に3月高値の1ドル=122円をうかがうような展開になると考えられます。
反対に、4月、5月の経済統計で引き続き弱い数字が続くようであれば、3月安値の1ドル=118円台前半を下回って117円台に沈み込むことも考えられます。
一方、4月には日本で統一地方選挙が行われます(12日、26日に投開票)。ここで、与党が推す候補が勝利を重ねれば、「アベノミクスが承認された」とみられ円安要因になりそうです。また、4月には日銀の政策決定会合(7日、8日、および、30日)が開催されますが、30日には展望レポートも発表されるため、このタイミングに合わせて一段の金融緩和への期待が高まると考えられます。しかし、それはもし追加緩和がなければ失望感の円買い戻しを誘い兼ねないという事でもあるので要注意です。
このように、4月のスケジュールを見ても、4月中はドル/円に方向感が定まらない展開になりそうです。1ドル=117円~122円で、米国の経済指標をにらんでもみ合う展開が続くと考えます。
――ユーロ/ドルは、3月半ばに1ユーロ=1.05ドル割れの水準に下落した後、1ユーロ=1.07ドル~1.10ドルでもみ合っています。上値が重い展開が続いていますが、当面の見通しは?
米国が利上げスタンスにある中で、ECBは3月から量的緩和に踏み切ったため、この政策スタンスの違いから、ユーロの上値は重いままでしょう。ただ、ユーロ安の影響で、ドイツの景気が持ち直すなど、ユーロ圏において、一段とユーロ安につながる材料は出にくくなっています。
ギリシャの問題がくすぶっていますが、もはやギリシャ国債を大量に抱える機関投資家はおらず、ECBが毎月600億ユーロの国債を買い上げる量的緩和を続けることから、ギリシャ危機がスペインやイタリアに波及する心配もほぼありません。当面、ユーロの下値メドは、先の1ユーロ=1.05ドル割れの水準と考えて良いと思います。
今後はドルの材料によってユーロ/ドルの水準が決まってくると考えられます。ただし、ユーロ/ドルについては、ユーロの売りポジションが大きく膨らんでいます。先週の先物ポジションは2012年6月を上回り過去最高水準です。このため、いったんドル売り・ユーロ買いに転じると意外とユーロ高が進む可能性があります。この点で、ドル/円よりもボラティリティが大きいといえます。ユーロの高値は1ユーロ=1.13ドル程度はあるでしょう。
――その他、当面の動きが気になる通貨ペアは?
当面の主役は米ドルだと思いますので、クロス円が大きく動くことはないと思います。ドルとの関係では、ポンド/ドルが動きそうです。
英国は5月7日に総選挙があるのですが、この勝敗の予想を巡ってポンドの行方が左右されます。ドルの動きと合わさる動きが増幅されて、ポンド/ドルは大きな値動きになる可能性があります。
現在、与党の保守党と、野党である労働党の勢いが拮抗しています。保守党の党首であるキャメロン首相は、2017年までに英国のEUからの離脱を問う国民投票を実施することを公約に掲げているため、与党が勝利すると英国のEU離脱の可能性が意識されてポンド売り要因になりそうです。
一方、野党の労働党は緊縮財政に反対の立場ですので、労働党政権ができることになるとBOE(英中銀)は利上げを急ぐ可能性があります。現在のBOEの金融政策は保守党の緊縮財政を背景に緩和姿勢を取ってきていますので、インフレ率が高まってきても利上げに慎重でした。ところが、労働党が財政出動などの政策に出れば、金融緩和の必要性が薄れると判断することが予想されます。これがポンド高への引き金になります。
すでに英国議会は3月30日に解散し、実質的な選挙戦が始まり、今後は様々な世論調査の結果が報じられることになります。英与党優位の情勢の中で、米国の強い経済指標が重なれば、ポンド安・ドル高が加速しますし、その反対もあり得ます。このため、ポンド・ドルは当面、ボラティリティが高い神経質な動きとなり、1ポンド=1.42ドル~1.52ドル程度の広いレンジで動くと考えます。(編集担当 徳永浩)
ドル/円は1ドル=120円を挟んだもみ合いが続いている。外為どっとコム総合研究所の取締役 調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「当面は米ドル主役の相場が続くだろうが、ドル/円は大きく動きにくい。
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2015-04-02 11:00