日興アセットマネジメントの「月桂樹」、ニュージーランド国債の投資に力点をおき類似ファンドを凌駕する運用成績

安定的な運用成果が期待される債券運用において、2014年は海外債券に投資するファンドで円安の影響を受けて運用成果が大きく上振れるファンドが相次いだ。モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー2014」の債券部門で最優秀ファンド賞を受賞した「高金利先進国債券オープン(毎月分配型)<愛称:月桂樹>」は、2014年のトータルリターンが16.44%と、類似ファンド分類平均を3.96%上回る好成績だった。同ファンドのファンドマネージャーである日興アセットマネジメント ヨーロッパ リミテッドのアンドレ・セベリノ氏(写真)に、同ファンドの運用の特徴等について聞いた。
――債券型部門で最優秀ファンド賞を受賞されました。「月桂樹」の運用成績は、過去10年間のうち8年で類似ファンド分類平均を上回るなど、抜群の成績を残しています。2014年の債券マーケットを振り返って、運用環境はどうでした?
2014年の債券市場は、債券投資家にとって最高の年となりました。米国経済の力強い回復期待を背景に、米国10年国債利回りが約3%台の水準からスタートしました。しかし、予想以上の寒波の影響によって米国経済が減速したことから、米国10年国債利回りは2月までに2.6%まで低下(債券価格は上昇)しました。
世界経済の成長見通しは、2014年を通して低下し、中国におけるクレジット市場に対する懸念も加わって、債券利回りは低下(債券価格は上昇)しました。年央には、原油市場における供給過剰や、景気減速に伴う需要の減少から原油価格が大きく下落し、年末までに高値から約50%の下落となりました。原油価格の大幅な下落は世界的なインフレ率の低下を招き、2014年後半の債券利回りの更なる低下圧力となりました。加えて、日米における金融緩和姿勢の継続と、ユーロ圏での量的金融緩和観測の高まりが債券需要を支えるなど、通年で良好なパフォーマンスとなりました。
――ファンドでは投資対象としてニュージーランド(NZ)国債を多く組み入れています。NZドルなどオセアニア通貨は個人投資家に人気が高い通貨ですが、隣接するオーストラリアとの違いは?
ニュージーランドとオーストラリアの経済は、景気サイクルの面からは、非常に異なるステージにあると考えています。
ニュージーランド経済は、力強い労働市場の伸びと労働生産性、カンタベリー地方における大地震からの復興需要などにより拡大を続けています。中央銀行は、景気の過熱を抑制するため、 2014年に合計1%の政策金利の引き上げを行ないました。
一方、オーストラリア経済は、これまでの鉱業セクター投資が主導した経済成長から、内需の拡大に基づく経済成長への転換の過渡期にあるといえます。オーストラリアの労働市場は失業率が過去12年間で最高水準の6.4%と弱い状態にあり、需要を促進するたに、中央銀行は更なる政策金利の引き下げを行なう可能性があります。
このように、ニュージーランド経済に対する信頼感が高い一方で、オーストラリア経済は、改善はしているものの、いまだ低い水準にあると言わざるを得ません。この2国間の経済格差は中期的に続くものと見ています。また、両国の金利水準の格差も継続すると考えており、その結果、通貨についても、近い将来、金利水準を織り込んだ水準まで戻ることが期待されます。
――ニュージーランドは先進国でもいち早く景気が回復し、金利上昇局面に入ったようですが、今後の経済見通しは?
ニュージーランドの2014年のGDP成長率は、地震の復興需要、個人消費、企業の投資などに支えられた力強い内需によって押し上げられました。住宅価格は、中央銀行によるマクロプルーデンシャルな政策に基づく貸付抑制の後も、上昇が続いています。移民の純流入数も大きく伸びており、住宅市場や消費の下支え要因となっています。力強い労働市場の改善により、ニュージーランド国外の労働者を国内に誘致しているだけでなく、ニュージーランドの労働者が海外で働く必要もなくなっています。
一方、過去数年間の長期トレンドを越えた経済成長にもかかわらず、インフレ懸念は高まっていません。長期にわたる通貨高が輸入物価を抑制しており、国内の物価も力強い内需や労働市場の伸びにもかかわらず、低下しています。加えて、原油価格の大幅な下落はインフレ率の押し下げ要因となるとともに、消費拡大にもつながっています。このようにインフレが抑制されている状況においては、中央銀行の金融政策は当面現状を維持すると見られ、経済も長期トレンドを越える成長が続くと考えています。
――2015年の債券市場の見方は?
当ファンドにおいて、2014年を通してニュージーランドを最大の保有比率としていましたが、我々は米国の保有比率を徐々に引き上げており、2014年末には米国が最大の保有比率となりました。その状態は現在も続いています。しかしニュージーランドが魅力的な投資対象であることは変わらず、2015年2月末現在も2番目に大きな保有比率を保っています。
米国経済は過去数年の回復を経て、成長モメンタムが徐々に高まっていると見られます。2015年のGDP成長率は、3.0%程度の伸びになると予想されます。また労働市場の回復は著しく、今年の末には完全雇用の状態になるかもしれません。物価も、他の先進諸国同様、エネルギーコストの低下を主な要因として、長期トレンドを下回っています。米国は主要な原油生産国の一つとなり、生産量は過去最高水準に達していますが、いまだに原油の純輸入国です。そのため、原油価格の下落は米国のエネルギーセクターにはマイナスとなり、インフレ率の低下圧力でもありますが、消費者や企業にとってはエネルギーコストの減少につながり、成長を促進するなどのプラス面が大きく、全体としてマイナス面を相殺するものと期待されます。実際に、米連邦準備制度理事会(FRB)は、原油価格の低下は、経済に対してはプラスに働いているとしています。
昨年の量的緩和プログラム終了の決定以降、FRBは9年ぶりの金利引き上げのタイミングを注意深く探っています。FRBが金利引き上げを行なうための2つの重要な要素は、労働市場の継続的な伸びと、個人消費支出(PCEコア・デフレーター、食料・エネルギーを除く[前年同月比])が2%近い水準にあることです。労働市場の状況はすでに目標に近いと見られますが、コア・デフレーターは現在1.3%近くまで低下しています。
しかしながらエネルギー価格は安定し始めており、今年に入ってからはむしろ上昇していることに加え、これまでのエネルギー価格の安定と、エネルギー価格の下落による副次的効果により消費の増加が期待できることから、早ければ6月にも利上げが行なわれる可能性があります。利上げは米ドルの押し上げ要因になると期待され、また、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行などが大規模な金融緩和を維持していることも、中期的に米ドルが上昇する要因であると考えています。
【ファンドの基本情報】
ファンド名:高金利先進国債券オープン(毎月分配型)<愛称:月桂樹>
設定日:2003年8月5日(原則毎月10日決算、休業日の場合は翌営業日)
信託報酬:年1.35%(税抜1.25%)
販売手数料:上限2.16%(税抜2.0%)
騰落率(2014年12月末現在):設定来101.75%、過去3年:57.16%、過去1年:16.44%(編集担当:徳永浩)
「高金利先進国債券オープン(毎月分配型)<愛称:月桂樹>」は、2014年のトータルリターンが16.44%と、類似ファンド分類平均を3.96%上回る好成績だった。同ファンドのファンドマネージャーである日興アセットマネジメント ヨーロッパ リミテッドのアンドレ・セベリノ氏(写真)に、同ファンドの運用の特徴等について聞いた。
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2015-04-06 10:45