日本の年金制度の現状

日本経営管理教育協会が見る中国 第354回--坂本晃(日本経営管理教育協会特別顧問)
● 日本の年金制度
年金は、生涯を通じて貯める時期と受け取る時期に分けられる。
貯める時期は20歳以上60歳未満で、外国籍を含む日本国内居住者すべて国民年金の被保険者となることが、日本国の法律で決められている。
本来保険というものは、火災や自動車事故、病気など、何らかの損害があった場合の危険に備えて、あらかじめ損害の確率に基づいて集める保険料を、保険会社などの組織がプールして、損害を被った人が経済的に困らないよう受け取れるようにする、人類が歴史から学んだ仕組みである。
従って支払った保険料に見合う損害がなかった場合は、支払った保険料は損になることを承知して加入しておき、万が一の場合に助かる安心料の仕組みといえる。
多くの人は誰しも高齢になるという危険があるので、そのときに必要なお金が若いときに貯めたお金から返してもらうという考え方が年金の基本的な考え方である。それを国、あるいは準ずる組織が行うのが近代国家に共通した制度である。現在の日本国の国民年金といわれる制度は、日本年金機構と呼ばれる組織が一元的に管理している。
毎月納付する保険料は、2015(平成27年)年度で1万5500円で、1961(昭和36年)年度の国民年金開始当時の保険料35歳未満100円、35歳以上150円から約100倍になっている。
現行保険料で必要加入期間40年480ヵ月分納付すると総額744万円になるが、過去は保険料が少なかったので、実際にこれだけ納付した人は存在しない。
受け取れる年金額は、2015年(平成27年)4月分から40年間満額納付した人の場合、満65歳から年額78万100円、月額にして約6万5000円を死ぬまで受け取れることになっている。仮に80歳まで20年間受け取れた場合は、1560万2000円となり、納付した額の約2倍になる。
納付する保険料と受け取れる年金額の関係は、生涯に渡って物価上昇や賃金水準に変動がなければ、自分が納付した保険料を、自分が年金といて受け取るのが公平であるが、現実は物価変動、とくに物価上昇があるので、世代間負担という知恵で対応せざるを得ないのが現状である。
以上は、日本国民全員に共通した基本的な仕組みであるが、雇用されている人を対象にした被用者年金制度として厚生年金保険、公務員共済組合など、日本国民共通の年金制度に上乗せした制度が別にあり、更に国民年金には障害者のための制度も別にある。
● 日本の年金財政
国民年金制度の加入者数は、2013年(平成25年)3月末現在で日本国民のほぼ半数強、6786万人である。この中で被用者年金制度に加入している人は同時期で3912万人、約59%弱である。
国民年金制度のみの加入者は主に自営業者や農水業で、自ら納付した保険料だけであるが、被用者年金制度に加入している場合は、本人と同額の保険料を企業や行政組織が負担をして同時に納付している。
同時期で国民民金制度の受給権者数は2970万人、平均支給月額5.8万円、支給総額4.2兆円、積立金は7.3兆円と、とりあえずは3.8倍の積立金を保有している。
一方被用者年金制度は、受給権者数は1805万人、平均支給月額16.8万円、支給総額45.3兆円、積立金は152.8兆円とほぼ4.5倍を保有している。この制度に加入している人は、基礎年金として国民年金も受け取れるので、合計すれば月額22.6万円受け取れていることになる。
合計すると支給総額は約50兆円となり、日本のGDP約500兆円の1割を占め、支給された年金が内需の一部を支えている事実は認識しておきたい。
以上、厚生労働省などの資料を参考に記述した。
日本以上に高齢化、官民の年金額格差などの問題を抱える中国が、今後どのように年金制度を改革していくのか、その動向も注目されよう。(執筆者:坂本晃・日本経営管理教育協会特別顧問 編集担当:水野陽子)
年金は、生涯を通じて貯める時期と受け取る時期に分けられる。貯める時期は20歳以上60歳未満で、外国籍を含む日本国内居住者すべて国民年金の被保険者となることが、日本国の法律で決められている。
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2015-04-15 10:45