日本の対中国貿易赤字はグローバルリスク分散で反日とは無縁

  2014年は日本ではアベノミクス「第三の矢」の実現、及び消費税導入による景気への指標が気になる年でもある。   さて、去年(2013年)年末に日本政府より貿易統計が発表された。輸入が7兆1970億円で、輸出が6兆1043億円で、約1兆円の赤字だった。   2013年10月時点での報道では、大震災以降のエネルギー資源などの輸入が増加し、赤字が継続していると紹介されていた。しかし年間移動累計で輸出入の推移を見ると、リーマンショック以降、日本の輸入の底は、2009年12月で、2010年1月以降は一貫して上昇している。たまたま偶然にも2011年の震災以降の9月に輸出入が逆転して貿易赤字国に転じ、その後も一貫して貿易赤字が続いたということだ。   対中貿易に限ってみても同様である。リーマンショック以降輸出入の落ち込みが回復したものの、東日本大震災の影響で、対中国輸出が低迷。一方で、輸入が一貫して増加し、対中国貿易額は5兆円近くも赤字を記録した。これは最近15年間ずっと同じであり、貿易赤字の構造は変わっていない。日本にとって中国は、全世界との貿易のうち輸入は23%、輸出は18%を占める世界最大の貿易相手国である。   中国への輸出の上位3カテゴリーは「電気28%」、「一般機械16%」、「原料別製品11%」の3つで(いずれも2013年10月)、これらのカテゴリーのトレンドの変化の理由をもっと深堀りする必要がある。  中国については最近、残念なニュースが続いているのも事実だ。尖閣諸島をめぐる問題と靖国参拝等。何が正しいかは、専門家に任せるとしても、日本の報道を見る限りでは、「中国けしからん節」が横行し、日中のトップ同士もの対話が出来ず、現実の世界は止まっているような錯覚を受ける。でも実際は、中国からの輸入は過去最高を記録しているし、観光客も戻ってきている。現実は動いている。  貿易統計を見ても、尖閣問題に端を発した国有化宣言の2010年、昨年の反日デモ以降も輸対中国出は、その前に発生していた低迷傾向が続いていたと分析できる。低迷の原因は東日本大震災を契機に、日系企業が全世界におけるバリューチェーンを見直したことや、世界的に収益向上のための体制を変更したことだ。  つまり日本企業のグローバル体制リスク分散、東南アジアへのシフトを図っていることが貿易にかんする数字に反映したわけで、反日とは全く無縁だ。もちろん、中国に対する貿易・投資のレベルが現状でいいかどうかということとは別問題だ。  ちなみに中国の視点からすると、日本は一貫した貿易黒字国である。中国にとって、経済が、スローダウンしGDP成長率7%を落ち込む可能性があると言われている中で、貿易の落ち込みは避けたいところだ。現実問題として日本を叩いて、経済的にメリットはあるだろうか?  中国による日本たたきは事実としても、その要因は日本が憎いのではなく、中国政府の国内問題が大きな要因とと考える。防空識別圏の問題は正にそうだ。実際はそういうことはしないと考えられるが、日本が中国からの輸入をストップすれば、中国が困るのは目に見えている。数字を背景に分析していくと、違う風景が見えてくる。  私は今年(2014年)になり「ライス回顧録」という本を読みはじめて、強く思った。以下抜粋の文章である。米国のロシアからのアラスカ買収に例えての言葉で、報道機関に繰り返し言っている言葉でもある。  「トップニュースばかりに目を向けている人が、歴史的な評価を得る大きな仕事をすることはないだろう」  中国のニュースは正にこれに当てはまる。トップニュースなど表面的なことに流されず、本質を見極めて、歴史的な評価を得られるような仕事を今年もしていきたい。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
2014年は日本ではアベノミクス第三の矢実現、及び消費税導入による景気への指標が気になる年でもあります。
2014-02-03 09:30