【相場の福の神トップインタビュー】RS テクノロジーズ、再生ウェーハで世界トップシェアの地位を固め飛躍する

 RS テクノロジーズ <3445> は2015年3月24日に東証マザーズに新規上場したばかりだが、2010年創業の新興企業でありながら既に再生ウェーハメーカーとしては世界のトップシェアを獲得。積極的な投資によってシェア拡大を図っている。同社の代表取締役社長の方永義氏(写真:右)に、相場の福の神として活躍するSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:左)が、今後の成長戦略を聞いた。 藤本 御社の生い立ちと、特長は? 方 シリコンウェーハ再生事業をコア事業にしています。もともとはラサ工業が行っていたビジネスをラサ工業の事業撤退を受けて承継し、設備等を購入することによって、事業を立ち上げました。シリコンウェーハ再生事業は、ラサ工業が1985年に日本で初めて立ち上げた事業です。独自の高品質な再生技術に特徴があります。当社は2010年12月に設立し、2011年1月に事業を開始しました。  各種電気製品や自動車等の基幹部品となる半導体は、円盤状のシリコンウェーハからつくられます。半導体産業とは、半導体の材料となるシリコンウェーハを作るメーカー、そして、ウェーハにIC回路を書き込み、1個1個のICチップを切り取る半導体メーカー、さらに、ICチップを組み込んでパッケージにするアセンブリメーカーから成り立っていますが、当社の再生シリコンウェーハを使用するのは、半導体メーカーです。  半導体メーカーには約700の製造工程があります。この工程ごとに、正しく作業が進んでいるのかをチェックする「モニタウェーハ」が使われます。モニタウェーハはチェック作業の後に廃棄されるのですが、当社は、この廃棄されるウェーハを半導体メーカーからお預かりし、新品同様に再生して、半導体メーカーにお戻ししています。  このような「再生ウェーハ」の需要は、半導体生産で使用されるシリコンウェーハ全使用料の約21%の量で需要があります。需要の要因はコストダウンで新品ウェーハ価格に対して約4分の1で再利用が可能です。当社の再生ウェーハは、新品と同様の品質で再生できる他、研磨と合わせて化学的な膜剥離を行うためウェーハ表面のダメージを最小限にとどめ、再生回数も多くできる特長があります。また、ウェーハ表面の金属不純物、特に銅を除去するための独自ノウハウに強みがあります。  このウェーハの表面には、銅、アルミ、ニッケルなどの物質を使用して膜が生成してありますが、現在、使用されている全ての膜および金属不純物を効率的に除去できます。、特に銅の除去については世界で唯一の再生メーカーであると自負しています。 藤本 大きな半導体の市場の中にあって、再生ウェーハというニッチな分野に着目されて事業展開をなさっていますが、今後の成長戦略は? 方 中・長期的に5つの方針を持っています。  第1に、生産設備の新設・増強計画を着実に進め、生産力を拡大します。国内で約52億円、台湾で25億円の投資計画を着実に実行して生産能力を高めます。国内では宮城県の三本木工場の設備増強で、現在の月産16万枚の300mm再生ウェーハの生産能力が月産18万枚に増強する他、次世代の450mm再生ウェーハも月産1万枚の生産が可能になります。450mm再生ウェーハにも研究機関からの引き合いがあり、徐々に浮上すると思います。 また、台湾国台南市の台南工場は、世界トップの半導体メーカーTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の隣接地に建設します。今年6月から300mm再生ウェーハの製造を開始し、16年前半までには月産10万枚生産する計画です。台南工場の本格稼働で、300mm再生ウェーハは月産28万枚体制になります。  第2に、この生産力増強によって現在300mm再生ウェーハ世界トップのシェア(19%)を一段と拡大します。月産28万枚が安定供給できれば、世界シェアは24%程度に拡大できる見通しです。さらに生産設備の増強によって、向こう3年~5年で再生ウェーハの世界シェア40%をめざします。  第3に、シェア拡大を半導体市場の伸長する需要拡大を伴った成長につなげます。IT分野の調査会社である英Gartner社の予測では、シリコンウェーハの出荷面積は2018年にかけて毎年4%程度の成長が見込まれ、300mm再生ウェーハの需要に換算すると、2014年実績と比較して2018年度には月産24万枚増の需要が見込まれます。  第4に、当社の特長である銅の金属膜を除去できる技術を生かして、現在は破棄されているモニタウェーハの再生市場を開拓したいと考えています。製造ラインの汚染問題への配慮などから国内半導体メーカーでは、銅の除去について慎重な姿勢を取っているところが少なくありません。当社の銅膜剥離の技術について理解が得られれば、破棄するしかなかったモニタウェーハの再生へのニーズが高まると考えています。  第5として、中国の半導体マーケットを本格的に開拓します。中国市場は半導体のマーケットとして大きな可能性があります。現在、中国では200mm以上のシリコンウェーハはほぼ全量を輸入に頼っている状況ですが、徐々に技術的なキャッチアップが進み、再生ウェーハへの需要も拡大していく見通しです。当社では既に複数の中国の半導体メーカーから受注があり、中国での大口径半導体市場の立ち上がりに合わせて、本格的な展開を考えています。 藤本 足元の業績は、2015年12月期が増収ながら減益の見通しです。2016年12月以降に回復を見込まれていますが、この業績見通しの背景は? 方 2015年12月期は、新規設備投資による償却増や、設備の移転による一時的な支出によって営業利益ベースで約6億74百万円の減益要因が発生するため、営業利益は9億27百万円と前期比20%減益になる見通しです。ただ、翌16年12月期には国内の新設設備や台湾での生産がフルで寄与してくるため、営業利益は18億20百万円とほぼ倍増を見込んでいます。  また、今期の設備投資については、国内の52億円の投資金額について、約半分を国からの補助金でまかなうことができました。これは当社の最先端技術の認知とともに、東日本大震災の被災地である宮城県で新たな雇用を生み出す事業として評価していただいたのですが、補助金をいただいたことで投資負担が相当抑えられたことは、当社の成長には大きな追い風になっています。 藤本 為替の前提条件が2015年度~2017年度を1ドル=109.5円とされていますが、御社の業績は為替の変動で、どのような影響を受けますか? 方 当社は売上高の70%がドル建ての輸出なので、円安は収益の押し上げに働きます。14年12月期ベースで為替の影響を計算すると、1ドルの円安が収益を3000万円程度押し上げる計算になっていました。今期から台湾での生産が加わるため、為替の影響は読みにくいところがありますが、1ドル=120円台で着地すれば、予想収益は上振れすると見込まれます。 藤本 半導体事業というと、巨額の設備投資が必要なものの、いわゆるシリコン・サイクルによって設備の陳腐化のリスクを抱えているというイメージがあります。御社が抱えるリスクとは? 方 再生ウェーハのビジネスは、一般に持たれるような半導体事業でイメージされるような大きな投資リスクは負っていません。特に当社は、生い立ちがラサ工業の事業を承継するスタートですので、かつての生産設備のインフラを継続して使わせていただいているというメリットがあります。当社の主力である三本木工場は、ラサ工業が当時使っていたクリーンルーム設備などを、そのまま使わせていただいています。  半導体工場の設備投資の半分はクリーンルームなど生産インフラを構築するために使われますが、当社は、その部分をラサ工業が設置したインフラを賃借で使わせていただき、そこへ生産機械を置かせていただいているのです。たいへん恵まれた環境で事業展開できていると感じています。このコスト優位性は、当社が創業からわずかな期間で黒字化できた大きな要因ですし、今後の成長を見通す上でも大きな優位性になると思います。  当社のリスクは、一部の半導体メーカーへの過度な売上依存になることだと思います。半導体メーカーは、かつてほどシリコン・サイクルによる収益の変動に悩まされることはなくなってきていますが、やはり、商品を提供する完成品メーカーのデバイスの好不調の影響を色濃く受ける傾向はあります。それだけに、当社では世界中の半導体メーカーと幅広く取引関係を構築・維持していくことが重要な経営課題であると認識しています。  現在、台湾のTSMCが世界の半導体ファンドリー市場シェア55%を占めるトップで、当社の売り上げに占めるTSMC社のシェアは38%です。台南工場は、TSMC社が主要な納品先となりますが、過度にTSMC社に売り上げを依存しないよう、グローバルに顧客を求めていく姿勢を堅持したいと考えています。  世界的に見て、半導体の需要は、世界の人口増、新興国の経済発展、また、先進国のデバイス用途の多様化(「マシンtoマシン」や「IoT(モノのインターネット)」など)などを背景に、需要が拡大する見通しにあります。世界的な半導体メーカーとバランスの良い取引関係を維持し、この半導体市場の拡大を企業成長につなげていくというのが当社の基本的な戦略です。(編集担当:徳永浩)
RS テクノロジーズは再生ウェーハメーカーとしては世界のトップシェア。積極的な投資によってシェア拡大を図っている。同社の代表取締役社長の方永義氏(写真:右)に、相場の福の神として活躍するSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:左)が、今後の成長戦略を聞いた。
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2015-04-21 20:00