「NISA」は利用者の声を聞きつつ普及・定着めざす=金融庁
2014年1月にスタートした「NISA(少額投資非課税制度)」は、スタート当初に500万件を超える口座が開設されたとみられている。金融庁では2014年2月13日に「NISAの日 シンポジウム」を開催し、一層の認知度の拡大と利用促進をめざしている。金融庁総務企画局政策課総合政策室の課長補佐、田畑仁氏に、NISAへの期待を聞いた。
――NISAを導入した意図は?
2014年1月から始まった「NISA」が普及・定着することによって、自助努力に基づく家計の資産形成の支援・促進、また、経済成長に必要な成長マネーの供給拡大の両立を図ることが期待されています。
日本の個人金融資産は約1600兆円という大きな規模になっていますが、このうち半分以上を預貯金が占めるという状況にあります。この個人金融資産の預貯金比率は、諸外国と比較すると大変大きく、この資金を株式投資などを通じて成長分野に供給していくという流れをつくることが、デフレ脱却をめざす日本において、重要な成長戦略になると考えます。
また、家計の資産形成についても、日本では、物価安定目標を掲げて、一定のインフレ率が期待される状況に持っていく金融政策が取られています。その中で、預貯金に資産を集中させることが必ずしも正解なのかどうか、それぞれのライフステージに応じて見直すことが必要になってくるのではないでしょうか。NISAは、そのようなことを考えていただくきっかけとしての意味合いも大きいと思います。
すでに、550万件以上の口座開設申し込みがあったと聞いています。国民の大変高い期待・関心のもとでスタートを切ることができたと感じていますが、大切なのは、口座の開設件数ではなく、口座の使われ方だと思います。
――NISA口座の使われ方とは?
NISAの制度設計における特徴として、毎年100万円を投資上限額としており、コツコツと投資時期を分散して資産形成することを想定していること、商品を売却しても非課税投資枠の再利用はできず、中長期投資により適した仕組みとなっていることが挙げられます。時間的な分散や、中長期保有を通じて、リスクを分散しつつ資産形成を図る、といった使い方が適しているといえるでしょう。
また、少額投資という枠組みを活かして、新たに投資を始める方々に、投資のきっかけとして使っていただきたいという思いが込められています。その点で、初めて投資をされる方々には、投資リテラシーを高めていただくための、しっかりしたサポートが行われ、NISAに合った投資で成功体験を積んでいただくことが大事です。
――金融庁としてNISAの普及について取り組んでいることは?
NISAの認知度を高め、広げていくために、広報活動は重要です。すでに、政府広報オンラインにはNISAを紹介する専用ページを設けています。また、金融庁のホームページでもNISA関連の情報を積極的に発信したほか、NISAがスタートするまでは、Twitterの公式アカウントを通じて毎週NISA情報を発信してきました。
そして、2月13日を「ニーサの日」とし、金融庁が主催するシンポジウムを東京を皮切りに、名古屋、大阪で開催します。この「NISAの日 シンポジウム」は、日本証券業協会、全国銀行協会など金融団体の共催で、さらに、これら団体によってつくされた「NISA推進・連絡協議会」が後援しています。日本全国の金融機関と、その関係者が揃ってNISAの普及活動に取り組もうというシンボル的な取り組みになると期待しています。
聞いているところでは、「NISAの日」に合わせて、NISAに関する催し物を検討していただいている金融機関もあるということですから、今後、恒例イベントとして2月13日を中心としたNISAの普及活動が定着していくことを期待しています。
また、今回のシンポジウムでは、重要な柱の1つとして、「NISAを語ろう」と題し、会場との対話の時間を設け、来場された方々から直接、NISAについてのご意見を聞かせていただく機会をつくっています。各方面から、NISAの制度改正の要望をいただいていますが、一般の方々の声を聞くことによって、よりみなさんが使いやすい制度になるよう、今後の制度改正を含めた議論に活かしていきたいという考えです。
――より良い制度にするための改正のポイントは?
NISAの利便性を向上するため、やや異例のことですが、金融庁として制度がスタートする前の段階から政府に対して制度改定を要望しました。その結果、2013年12月に示された税制改正大綱においては、NISA口座を開設する金融機関について、1年単位での変更を認める、また、NISA口座を廃止した場合、再開設することを認めるということが盛り込まれました。今後、国会で法案が審議される見込みです。
NISAは固まった制度ではなく、必要があれば改善していく姿勢が必要だと思います。引き続き、NISAについては、投資家のすそ野を広げ、経済成長に必要な成長資金の供給を拡大するという視点から、実績や効果を検証しつつ、より利便性の高い制度になるよう検討を重ねていきたいと考えています。「NISAの日 シンポジウム」などで、広く利用者の方々の生の声を聞いていくのも、そのような取り組みの一環です。
――NISAについての今後の期待は?
NISAは、これまでの様々な制度にも増して、投資に親しみのなかった方にとって「投資を始めるきっかけ」となりうる制度であると考えています。これからコツコツ資産形成を始めようという方にとっては、年間100万円までの投資上限があるといっても、そのリターンが一切非課税となるというNISAのメリットは、大変魅力的なものといえるのではないでしょうか。また、「少額投資非課税制度」という制度自体が、「少額から投資することができる」という気づきにつながるといった指摘がされています。
「投資」というと、「怖いもの」、「(ギャンブルのように)悪いこと」と受け取られている方もいらっしゃるとは思います。もちろん株式などへの投資には必ずリスクは存在しますが、NISAは、中長期的な安定した投資により適した制度として設計されています。是非、NISAを通じ、株式や株式投資信託への投資による資産形成を検討していただきたいと思います。
また、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」にも触れられていますが、NISA口座を取り扱う金融機関の方々には、NISAを通じて投資を始める方々に対して、制度について適切な説明を行うとともに、丁寧なアドバイスをお願いしたいと思います。NISAが普及・定着するためには、NISA口座を取り扱う金融機関の方々の役割は大変大きいと思っています。是非、お客様の金融リテラシーの向上を促す取り組みに力をいれていただき、制度が適切に利用され、投資家のすそ野拡大に着実に結びつくよう、ご尽力いただければと思います。(編集担当:徳永浩)
2014年1月にスタートした「NISA(少額投資非課税制度)」は、スタート当初に500万件を超える口座が開設されたとみられている。金融庁では2014年2月13日に「NISAの日 シンポジウム」を開催し、一層の認知度の拡大と利用促進をめざしている。
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2014-02-03 10:00