電子書籍市場1000億円突破で「本」への意識に変化、本と消費者の情報接点が拡大中

 電子書籍の市場が2014年に1000億円を突破するほどに拡大してきたことで、消費者の「本」に関する意識が変化しつつある。生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京都渋谷区)は、「書籍・電子書籍」に関する消費者の意識調査を行うとともに、専門家等へのヒアリングを通じて、「本」を取り巻く環境の変化についてのレポートをまとめ、2015年4月23日に発表した。書籍のジャンルにかかわらず、様々なサービスが続々と登場している電子書籍は、出版業界や書店のあり方の変革を促している。画像はトレンド総研(東京都渋谷区)の「書籍・電子書籍」に関する消費者の意識調査より。  消費者への調査は、1年間に1冊以上本を読む20~40代の男女500名を対象とし、2015年4月6日~4月7日に、インターネットを通じて調査した。「紙の書籍」と「電子書籍」のどちらで読書しているかを聞くと、「紙の書籍だけを読む」が77%。「電子書籍だけを読む」は7%にとどまった。「紙・電子書籍のどちらでも読む」は16%になった。「電子書籍」が登場した当初は、閲覧可能な専用ブックリーダーが必要だったが、スマートフォンやタブレット端末などで容易に「電子書籍」が閲覧できるようになって、電子書籍との接点が広がってきているようだ。  そこで、「本」(書籍・電子書籍全般)全般との情報接点について調査をすると、「書店でのPOPなど書店員による情報」(33%)、「オンライン書店などでのユーザーのレビュー」(29%)が僅差でトップ2だった。「紙の本」と「電子書籍」は、情報収集源が類似していると考えられる。  「本」に特化していないキュレーションサービスを選択肢として、「本」の情報に触れたことがあるかを聞いたところ、33%と約3人に1人が「ある」と回答。「本と直接的に関連がない話題・情報に触れたことや、店舗に行ったことなどがきっかけで、「本を読みたくなった・読んだ経験はありますか?」という質問に対しては、約7割が「ある」と答えており、「本」と消費者との情報接点のポイントが、「本」以外の面に広がっている様子がうかがえる。  この調査結果に対し、商品ジャーナリストの北村森氏は、「電子書籍市場は2014年に1000億円を突破し、電子書籍が珍しいものではなく、生活の中に着実に根付きつつあることの表れだと言える。背景にはデバイスに対する意識の変化があり、消費者が電子書籍の本質的な価値を理解し、リテラシーが高まっていると言える」と語っている。  また、「コンテンツへの接触という側面から『本』を考えると、『本』と消費者との情報接点も多様性を増しており、消費者の情報収集は“誰が選んだ情報であるか”という点に価値を置く方向にシフトしている。特にインターネットの世界ではそれが顕著で、キュレーションサービスの台頭は象徴的と言える」という。  さらに、「『本』はキュレーションと非常に親和性が高いコンテンツ。ライフスタイル系のカテゴリのコンテンツもキュレーションとの親和性が高いが、共通しているのは、コンテンツを選ぶ“人”の視点が重視される」と分析している。「キュレーションサービスは、その分野のプロである公認キュレーターを置いたり、一般ユーザーキュレーターとして登録できたりと形態は多岐にわたりますが、いずれもインターネット上の情報を、独自の価値観や思考で収集・整理して発信しており、キュレーターの視点に、読者は価値を見出します。キュレーターという情報自体におもしろさを感じるユーザーもますます増えていくのではないでしょうか。いかに自分自身にとって価値ある情報であるかどうかが求められる動きは、さらに加速していくと考えられます」と将来を展望している。  そこで、トレンド総研では、「本」と消費者との関係性を後押しする新サービスとして、2015年3月20日より提供が開始された「本」と「モノ」のキュレーション型ECリンクサービス、「MEETTY(ミーティー)」をピックアップし、その開発の背景等を、開発担当の大日本印刷の古積満洋氏にインタビューしている。  「MEETTY」のコンセプトは、「自分にぴったりの本やモノと出会える」。目指しているのは「本を軸としたライフスタイル」を提案することだという。「MEETTY」では、キュレーター独自の本を読む視点、キュレーター自身の趣味や生活を通じた経験・感情をもとにして「自由な発想でカテゴライズしたテーマ」が設定できるため、キュレーター自身が持っている世界観をテーマに「棚」がキュレーションされ、リアルの店舗にはないような「コト」を切り口とした「棚」が生み出され、“新しい”モノとの出会い方や、買い物の仕方が実現できる。  古積氏は、「『本』を軸としているのは、出版、『本』に関わる企業として、『本』を起点に、生活者同士をつなぐCtoC(Consumer to Consumer)コミュニケーションサービスを提供していきたいという想いがあるためです。ですが、読書家ではなくむしろ、『本』のライトユーザーである方にこそ、ライフスタイルの中の『本』や『モノ』を楽しむためのサービスとして活用いただきたい」と語っている。  「MEETTY」では、「MEETTY アワード」として、より多くの人に「共感」「好奇心」「影響」を与えた「棚」を作ったキュレーターを表彰する制度を始めている。読書家で知られるピースの又吉直樹さんが「TANAYA」という謎の本屋の店主として「MEETTY」の特設Webサイトに登場し、若手芸人の方々と共に、毎月のアワードのテーマを発表し、多種多様な「棚」が生まれる後押しをしていく。  「MEETTY」は、「本」だけではなく、雑貨やインテリア、食品など、様々な「モノ」も並べることができ、いわば自分の“商店”を開くような形式で楽しめるキュレーションサービス。「本」はDNPグループのハイブリッド書店サービス「honto」と、「モノ」は約50の国内ECサイトと連携され、閲覧者が気に入ったアイテムは、すぐに購入可能。「本」に関連する新たなキュレーションサービスとして活用が広がりそうだ。(編集担当:風間浩)
電子書籍の市場が2014年に1000億円を突破するほどに拡大してきたことで、消費者の「本」に関する意識が変化しつつある。
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2015-04-27 10:45