競争が激化するSVOD市場、リニューアル「dTV」がバランス力で一歩リードか

定額制で提供映像コンテンツが視聴し放題になるSVOD(Subscription Video on Demand:定額制ビデオオンデマンド)サービスが普及し、ユーザーが好むコンテンツを、いかに価格を抑えて提供できるかなど、サービス事業者間での競争が一段と加速している。注目の商品・サービスや企業の取り組みを紹介するトレンド総研は、SVOD市場のサービス比較と消費者調査を実施し、2015年4月22日に「dTV」(「dビデオ powered by BeeTV」が名称変更)として新たにスタートを切ったエイベックスとNTTドコモのサービスをピックアップした。「他サービスとの差別化で一頭地を抜く可能性がある」と評価している。画像はトレンド総研のSVOD市場のサービス比較と消費者調査より。
トレンド総研の福田結生氏は、SVODサービス事業者(dTV、hulu、UULA、ビデオパス)のサービス内容を比較し、「ほとんどがテレビを含めたマルチデバイスに対応。対応デバイス(スマホ、PC、タブレット端末、テレビ)の数という面では、主要サービスはほぼ横並びの状態。ユーザーの視聴シーンの多様化を鑑みても、マルチデバイスへの対応は必要不可欠」と語る。その点で、「dTV」がリニューアルに際して、専用アダプター「dTVターミナル」を発売し、テレビ視聴環境を整備・強化したことを評価した。
また、「映像に限らず、書籍や漫画、音楽・音声コンテンツなど、ユーザーが多種多様なコンテンツを享受する状況下では、ニーズに合致したコンテンツが容易にみつかるなど、ユーザーとコンテンツとの最適化を図ることが、コンテンツ提供サービスの価値になる」として、「dTV」が大幅に強化した「レコメンド機能」を「他のSVODサービスと一線を画す特長」と指摘した。「dTV」のレコメンド機能は、例えば映画であれば1作品あたり1000を超える「フィルムメタ」を付与し、ユーザーの性別や年代、視聴履歴や時間などを掛け合わせ、自動的にユーザー個人に合ったコンテンツが表示される。アプリの立ち上げと同時に「ザッピングUI」で再生される仕組みとあわせて、ユーザーが好む映像と出会える機会を増やしている。
さらに、12チャンネル、約12万におよぶ豊富なコンテンツに加え、著名クリエイターを起用して制作されたオリジナル作品、また、アニメやミュージックビデオなどでの独占配信が続々と追加されるなど、エイベックスのコンテンツ提供力に裏打ちされたコンテンツの独自性がユーザーにとっての大きな魅力としている。
トレンド総研では、SVODサービスが実際にどのように利用されているのか、また、今回の「dTV」のリニューアルをユーザーがどのように捉えているのかについて、SVODの利用者500名に調査した。調査期間は2015年4月23日~4月24日。回答者のうち250名は、「dTV」の利用者とした。
SVODの利用頻度については、「2~3日に1回以上視聴する」(23%)がもっとも多く、次いで「毎日(1日に1回以上)視聴する」が20%と5人に1人だった。1週間当たりの平均的な視聴時間は、「1時間以上3時間未満」(48%)が約半数、「3時間以上5時間未満」(15%)で、「5時間以上」視聴している人は16%だった。
視聴しているデバイスは、自宅での利用の場合は、「パソコン」(67%)がトップ。「スマートフォン」(57%)、「タブレット端末」と「テレビ」がそれぞれ31%だった。自宅以外では、「スマートフォン」(62%)が圧倒的に多く、「タブレット端末」(22%)、「パソコン」(11%)、「テレビ」(3%)という結果になった。スマートフォンによるSVOD視聴はユーザーの中に定着し、特に女性では自宅でも「スマートフォン」(63%)が「パソコン」(61%)を抜いてトップになっている。ただ、自宅で視聴する際には、約3人に1人が「テレビ」を使っている他、「タブレット端末」も同様に利用されていることから、より大きな画面での映像視聴ニーズは確実にあることがうかがえる。
一方で、普段よく利用するデバイスの組み合わせについて調査すると、「パソコンとスマートフォン」(24%)が多く、「スマートフォンとタブレット端末」(8%)や「スマートフォンとテレビ」(5%)などとあわせて55%が2つ以上のデバイスを組み合わせてSVODサービスを利用している。すでにユーザーのライフスタルの中で、SVODのマルチデバイスでの利用が定着しつつあるようだ。
また、利用シーンとしては「自宅でくつろいでいるとき」(77%)が圧倒的に多く、次いで「夜寝る前」(32%)、「通勤・通学中」(18%)など、ちょっとした時間で利用する人も多い。生活スタイルに応じて、シーンに合わせたデバイスで活用している人が多く、利便性を重視したモバイル端末、クオリティを重視したテレビといった構図で、各デバイス間の連携は今後より重視されていくと考えられる。
さらに、SVODサービスを選ぶ際のポイントを聞くと、「観たいコンテンツがあるかどうか」(64%)、「コンテンツの数(全体量)」(62%)、「コンテンツの種類(ジャンル)の豊富さ」(53%)が上位を占めた。同様に、「月額あたりの価格」(58%)も約6割が重視しており、コンテンツの数と価格のバランスを見て利用するサービスを選ぶ人が多いといえる。
新しくなった「dTV」について、リニューアル後も「dビデオ」時代と同様に月額500円(税抜)と利用料金が低いことをメリットと感じる声が多かった。また、オリジナルコンテンツなどの拡充を支持する声や、専用アダプターによってテレビで視聴しやすくなったことをメリットに挙げる声も少なくなかった。
このような調査結果を踏まえ、トレンド総研は、「今秋には米映像配信サービス大手の『Netflix』が日本市場への進出を発表しており、競争が激化する中で、2015年は映像配信サービス市場において変革の年になると想定されます。対応デバイスの網羅性に加えて、『dTV』がいち早く注力してきた独自コンテンツの拡充に関しても、今後各社がサービスの差別化を目的として強化してくるポイントであると言えるでしょう。リニューアルによってバランス力の高さが目立つようになった『dTV』がユーザーとともにどのような進化を遂げるか、今後の動向に期待が集まります」とコメントしている。(編集担当:風間浩)
定額制で提供映像コンテンツが視聴し放題になるSVOD(Subscription Video on Demand:定額制ビデオオンデマンド)サービスが普及し、ユーザーが好むコンテンツを、いかに価格を抑えて提供できるかなど、サービス事業者間での競争が一段と加速している。
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2015-05-01 16:30