靖国参拝の影響による日系企業リスクは限定的

昨年(2013年)暮れに安倍首相が靖国神社を参拝して以来、また大分落ち着きがなくなってきている日中関係ですが、日系企業への影響はそう大きくならないだろうと考えています。特に、同問題が発端で強硬な反日デモや組織的な行動が発生して、日本人への人的被害が出ることは、まずありえないだろうと考えます。なにも楽観的に見ているのではなく、中国側にとって合理的メリットが見出せないので、そんな行動は取らないだろうという判断です。
中国経済には減速傾向がでており、米国の金融緩和縮小の影響も懸念されています。欧米の対中投資も好調ではなく、日本からの投資も以前と比べれば見劣りします。
人件費高騰などによる生産拠点の撤退等についても例年あることであり、極端に増えている訳でもありませんが、一定数は出ているという現実があります。
今の中国にとって、ここで暴力的なデモなどを許たのでは、世界に向けて、中国という国が、「何かがあればそういう行動によるリスクがある国だ」とプレゼンテーションをするようなものです。だから中国政府として、日本の首相が靖国神社を参拝したからといって、過激なデモなどは絶対にさせないだろうと考えます。
考えてみれば、日本の指導者が靖国神社を参拝したことで、国際世論全体が中国側に有利な状況も出はじめています。仮に反日デモという手に打って出れば、折角の優位性を失いかねません。それらを考え併せても、「リスク」はとらないと考えます。特に、尖閣国有後の暴力的なデモという「過去」があるだけに、今回は自国の立場を悪くする事態はなおさら避けるはずです。
極端な日本製品ボイコットも行われないと考えます。それを加速させれば、現在の対中投資のトレンドである市場狙いの日本企業からの投資が止まってしまいます。政治的な動きにより、日本製品というだけで、販売が見込めないとなれば撤退企業も増えることになります。
ライバルの他国企業や国内企業の立場に立てば、日本製品のシェアが落ちることはプラスに働きますので、個々の動きとしては、日本製品にマイナスの動きもありえるかとは思いますが、中国政府として組織的に日本製品を締め出すという様な可能性は低いと考えます。
もちろん、いつもお伝えする通り、日本の動きを「面白くない」と憤る中国人はいるわけですから、現地で暮す日本人の皆さんは、言動含めて十分に注意していただく必要があります。特に酒の場などでは揉める可能性が増えますので、しばらくは行動に注意すべきだと思います。
同様に、政府としての方針ではなく、行政の担当官個人の考えで日本企業に対して「意地悪をする」というようなケースはありえます。
いずれにしても、今年の中国ビジネスはコストダウンセンターから市場ターゲットへの転換が深化する1年になると思います。単純に中国を見るのではなく、アジア全体の戦略から中国を見ることも、今まで以上に必要になります。
今回の参拝は現地日系企業にとっては明らかにマイナスではあります。しかし、致命的なダメージに繋がることはないと思います。それよりも、現地で必要とされる、よりニーズに沿った商品開発を進め、よいサービスを彼らに届け、ブランディングを含めていかに市場を取るかという事に集中すべきだと考えます。
少し厳しい2014年スタートとなってしまいましたが、グローバル市場での活躍を目指されている日系企業各社様にとって今年が素晴らしい1年になりますよう、お祈り申し上げます。(執筆者:福田完次 提供:中国ビジネスヘッドライン)
昨年暮れの靖国参拝以来、また大分落ち着きがなくなってきている日中関係ですが、日系企業への影響はそう大きくならないだろうと考えています。
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2014-02-04 09:15