「剰男(売れ残った男性)」-中国男性の結婚難が深刻

日本経営管理教育協会が見る中国 第357回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員) ● 安倍首相と習近平国家主席   4月22日インドネシアのジャカルタで開催された「アジア・アフリカ会議」で、安倍首相と中国・習近平国家主席が5ヵ月ぶりに再開し、2回目の会談が実現した。中国主導で設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に一定の理解を示しながらも、安倍首相は運営方法には懸念を示している。習近平国家主席はジャカルタの前にパキスタンに公式訪問、シルクロード構想を本格始動、AIIBの設立提言など、アジア・アフリカにおいてリーダーになろうとしていることは明白だ。   国内に目を向けると、1979年から推進された一人っ子政策が男性の結婚難を引き起こしている。この政策は昨年緩和されたが、今回はその歪みについて洞察してみたい。 ● 男性の結婚難が深刻な中国   中国で今「剰男(sheng 第4声  nan 第2声)」という言葉が広がっている。日本語に訳すと「売れ残った男性」という意味である。一人しか産めないのなら跡継ぎである男の子が欲しいという親の思いから男児の出生率が女児を大きく上回り、男女の人口に偏りが生まれた。「80後、90後」の男女の人口差は300万人に上ると言われている。そのため、農村部では結婚対象となる若い女性の数が足らず、東南アジアの女性が次々と中国の農村地域に連行され、現地男性と強制的に結婚させられる事件が起きている。   あるカンボジアの女性などは、韓国でいい仕事があるという甘い言葉でつられて乗せられた船の行き先がなぜか中国・上海、パスポートを含めた所持品を全て取り上げられ連れ去られた。連れ去られた先は、田舎の農村、そこで初めて出会った中国人男性と無理やり結婚、言葉も通じない中こき使われたとのことである。   カンボジアのNGO、ADHOCが発表した「中国に人身売買されたカンボジア女性」によると、2014年の被害件数は約50件、13年の8件から大幅に増えているとのことである。   中国の農村部の嫁不足は深刻である。そこに妻となる女性を農村に輸入する人身売買ビジネスが広がった。中国人男性の結婚難が深刻になるにつれ、貧困女性の多い東南アジアに被害が広がっている。 ● 日本以上に活況な婚活ビジネス   中国では結婚適齢期を過ぎた未婚者が増え、婚活ビジネスが日本以上に盛況のようである。日本と同様、地方自治体や企業が音頭を取ってお見合い大会が開かれている。しかし、農村部で働く男性は都市部に比べれば収入が低く、農村に嫁ぎたいと思う女性は少ない。そのためにこのような人身売買が生まれてきた。   1980年~90年に生まれた若者世代は約4億人。彼らの結婚難は続くと予想されているが、一人っ子政策が生んだ人口構造の歪みを是正するのは日本以上に難しい。   経済発展は減速するも、国家としての存在感は増大させたいと躍起の中国に、35年前の政策が生んだ歪みが重くのしかかる。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)  
4月22日インドネシアのジャカルタで開催された「アジア・アフリカ会議」で、安倍首相と中国・習近平国家主席が5ヵ月ぶりに再開し、2回目の会談が実現した。中国主導で設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に一定の理解を示しながらも、安倍首相は運営方法には懸念を示している。    
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2015-05-07 16:15