中国における商業賄賂とリスクマネジメント -商業賄賂の諸像・仲介手数料

商取引の世界では日常的に行われている手数料の支払いが、商業賄賂にされる可能性があることに関して、意外に思う人もいると思います。しかし、実際中国において取締りを受けている事例も少なくありません。
■1. 中国法上、個人は仲介手数料受け取れますか
1996年11月15日の「関与禁止商業賄賂行為的暫行規定」(以下「同規定」と言います)の第七条は、
「経営者が商品を売買する際に、明示的に仲介手数料を支払うことができる。仲介者に対して仲介手数料を支払う際に必ず実際のとおり記帳しなければならない。仲介者も実際のとおり記帳しなければならない。本規定における仲介手数料とは、経営者が市場取引において仲介サービスを提供した適法な経営資格のある仲介者に対する労務報酬を指す」
と規定しています。
従って、同規定に対する解釈では、個人は適法な経営資格ある仲介者として仲介手数料を受け取ることはできません。
しかし他方で、1993年12月1日の「中華人民共和国反不正当競争法」(以下「同法」と言います。)第八条第二項は、
「経営者は商品の販売或いは購入の際、相手に対して明示的に割引することができる。また仲介者に対して仲介手数料を支払うこともできる。経営者が相手に対して割引をし、仲介者に対して仲介手数料を支払った場合、必ず記帳しなければならない。割引してもらった取引相手、仲介手数料を受け取った経営者は必ず事実とおり記帳しなければならない」
と規定しており、適法な経営資格ある仲介者という要件は強調しておらず、個人を仲介者から排除しているように見えません。
上記規定と同法の規定の違いに関して、実務上各地域の工商行政管理局の理解も異なっています。
■2. 個人に関する事例
上海市の某物流会社(以下「物流会社」と言います)がS氏ら3人と口頭で、彼らの物流会社に対する仲介業務に対して、2%の比率で仲介手数料支払う約定をしました。物流会社はその後、S氏に対して仲介手数料として、3000人民元を現金で渡しました。物流会社は記帳をしませんでした。
上海市工商行政管理局虹口分局は、S氏への仲介手数料につじて、商業賄賂として認定しました(理由は明らかにしませんでした)。
■3. 中国法上、企業は仲介手数料受け取れますか?
仲介業を専門に行っている企業であれば、当然仲介手数料を受け取ることができます。
しかし、同法第二条でも規定されている通り、仲介業を営んでいない企業が仲介手数料の名目で金銭の支払等を受けた場合に、商業賄賂として認定される可能性が高まります。
■4. 企業に関する事例
A社は某有名ブランド自動車の販売店であり、B社は自動車ローン会社です。
両者間で「代理店提携契約」を締結し、当該契約によれば、A販売店が某有名ブランド自動車を販売する際に、ローンが必要な顧客に対して、B社の自動車ローンを紹介し、B社はA販売店に対して、仲介手数料を支払っていました。
実際、A販売店はローンの紹介以外、B社の手続に何らかの手助けもしていませんでした。A販売店も手数料を受け取り後、明確に帳簿記載を行っていました。しかし、工商行政管理局は当該仲介手数料を商業賄賂として認定し、処罰を行いました。
■5. 販売店のローン紹介は違法な仲介なのか?
A販売店の経営範囲は確かに、自動車の販売に限られており、仲介業務は含まれていません。しかし、中国法現状では、法律上は自動車販売店がローンの仲介業務を行ってはならない禁止規定はおかれていません。
なお、金融業を管理監督する銀行業管理監督主管機関は、上記のような仲介行為は当該機関の管轄範囲ではないため、違法とは言えないとの見解を示しました。それでは、工商行政管理局が上記仲介手数料を商業賄賂行為として認定しました。基準はなんでしょうか。
■6. 仲介手数料が商業賄賂行為として認定される基準は何か?
金融業を主管する機関が上記仲介行為を違法な行為ではないと認めているので、仲介手手数料も正当な利益であるはずです。しかし、工商行政管理局は以下の理由で商業賄賂であると認定しました。
第1に、A販売店の紹介がなければ、顧客はB社の存在を知らなかった。第2に、A販売店の仲介業務は口頭による紹介のみであり、実際の手続はB社がA販売代理店に派遣した職員が行っていた。第3に、B社のローン金利は一般金融機関より高かったことの3点でした。
上記2つの事例いずれも、認定基準は不明確である嫌いを払しょくできません。正当な仲介業務を行って、商業賄賂行為として調査されることに注意が必要だと思います。(つづく)(執筆者:エレドン ビリゲ(額尓敦 畢力格) 提供:中国ビジネスヘッドライン)
商取引の世界では日常的に行われている手数料の支払いが、商業賄賂にされる可能性があることに関して、意外に思う人もいると思います。しかし、実際中国において取締りを受けている事例も少なくありません。
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2015-05-12 11:30