ドル/円は決め手を欠きもみ合い継続、ポンド/円に先高観=外為どっとコム総研

外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「ドル/円は当面、米経済指標を確認しながらのもみ合い相場」と見通している。「米国の年内利上げ観測に変化はないものの、経済指標は力強さを欠いている」として、ドルが上値を追うような動きにはなりにくいという。一方で、ポンド/円には「一段高の期待がもてる」と注目している。「英総選挙の結果、保守党が単独過半数を得たことは当面の政局不透明感を払しょくしてポンドにはポジティブ。また、英中銀にタカ派的な傾向が強まっており、利上げ時期の前倒し期待が浮上しつつある」と語っている。
――ドル/円は、1ドル=120円がドルの上値として強く意識される展開が続いていますが、当面のドル/円相場を見通すポイントは?
ドル/円は、年内の米利上げを想定した相場が続いていますが、ここ数カ月の米国の経済指標が芳しくない内容であるため、9月以降に利上げ時期が後退したという見方が大勢となりました。目先の利上げが遠のいた事で金融政策を織り込んでいく事が難しくなり、相場は動きにくい状態になっています。とはいえ、米FRBのイエレン議長は、「利上げ開始の判断を過度に重視すべきでない」という発言もしています。すなわち、利上げを決定したとしても、従来のようにコンスタントに利上げを継続するということを確約するものではなく、経済指標をみながら慎重に金利水準をコントロールしていくので、最初の利上げそのものに過剰に意味を求めるべきではない、というスタンスです。これにより、6月利上げを完全に否定することも出来ず、もはや利上げ時期に関しては完全に織り込む事が難しくなっています。もちろん、引き続き市場は経済指標を注意深く見る必要がありますが、たとえ米雇用統計で市場の予想を大幅に上回る良い結果が出たとしても、当面は継続的な方向感を作れない状態が続くでしょう。
とはいえ、基本的に米国の利上げ観測そのものには変化がないため、長い目で見ればドル高・円安基調であることには変わりないと見ています。また、短期的にドル安・円高に振れる可能性も考慮しておくべきです。たとえば現状、ギリシャは6月まで資金の手当てが出来ている模様で、すぐのデフォルトやユーロ離脱はないという見方が広がっていますが、それでもギリシャ関連の極端に先行き不安を煽る報道があった場合に急激にリスク回避ムードが広がる可能性はあります。そうなれば、株安・米長期金利低下→ドル安・円高が急激に進む、という流れが一時的に発生することはあり得るでしょう。
なお、そうした突発的な相場の急変がない限り、当面のドル/円相場に関しては、基本的に1ドル=118.50円~121円を中心としたもみ合い継続とみています。
――豪ドル/円が大きく動いています。豪中銀は5月5日に利下げを実施しましたが、豪ドル/円は利下げの打ち止めを感じ取って値上がりしました。豪ドル/円は下落トレンドから転換したと考えて良いのでしょうか?
豪ドル/円は上昇しましたが、先安観は強いと思います。5月6日に1豪ドル=96円に挑戦した時にも、非常に頭が重い値動きで96円に乗せきれませんでした。当面は高い水準を維持したとしても、次第に豪ドルが下落トレンドに転じることはあり得ると考えます。
ここ最近の豪中銀は政策金利の変更後、数カ月間は政策を据え置く傾向があります。5月に入ってする利下げしたこともあり、当面の豪ドル/円相場は経済指標への反応が鈍くなり、方向感は出にくいと考えています。ただ、5月8日に公表された四半期金融政策報告で、豪中銀は今後の成長率予想とインフレ見通しを下方修正しています。状況次第ではありますが、年内追加利下げも想定しての豪ドル売りが出てくる可能性はあります。
当面の予想レンジは1豪ドル=89.383円(2月3日)~97.357円(1月20日)。動き出すと、値幅は大きくなる傾向があります。また、豪州内の材料以外でも、中国の経済指標の悪化、原油価格の下落、世界的な株価の下落などは豪ドルを押し下げるきっかけになりますので注意が必要です。
――その他、注目されている通貨ペアは?
ポンド/円に妙味があると思います。ポンドについては、総選挙による与党・保守党の過半数獲得によって、先行き不安要素が1つ減りました。また、英中銀の政策スタンスに変化が見られ、さらなるポンド高につながる材料として注目できます。
保守党は2017年にEUからの離脱を問う国民投票を実施することを選挙公約にしていたため、この勝利は先々の不安定要素をはらんでいます。しかし、当面は安定政権となることで連立を巡る不安定な状況を心配する必要がなくなったために、ポンドにとってはポジティブと評価されました。
このような不安要素が減った中で注目されるのが、英中銀のスタンスです。4月の英中銀の金融政策委員会議事録に「ポンドの影響でインフレの持ち直しが予想より早まるリスク」とあり、委員会がややタカ派的なスタンスへシフトする様子が窺えました。5月13日に発表予定の四半期インフレ報告や、5月20日の金融政策委員会の議事録公表で英中銀のタカ派色がより濃くなれば、2016年早期、あるいは年内の利上げ観測にまで繋がる可能性があります。そうなると、ポンド/円は一段高へ進むでしょう。
ポンド/円の上値の目標は、2014年12月29日の1ポンド=187.789円。ここを抜けると、同12月5日の189.706円をめざす動きになると思われます。(編集担当:風間浩)
外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「ドル/円は当面、米経済指標を確認しながらのもみ合い相場」と見通している。「
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2015-05-13 09:15