1年6カ月を宇宙滞在したロボット「KIROBO」が帰国後初のトークイベント開催

電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力のもと、ロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」を国際宇宙ステーション(ISS)に滞在させ、共同研究“KIBO ROBOT PROJECT”を推進してきた。KIROBOは、約1年6カ月の宇宙滞在を経て、3月12日に日本に帰国。そして、2015年5月17日、名古屋市科学館(愛知県)で、特別公開&トークイベントを実施致した。
約240人が駆け付けて満員となった会場で、プロジェクト総集編映像放映が行われたあと、プロジェクトメンバーと、KIROBOによるトークセッションが行われた。
「KIBO ROBOT PROJECT」について、電通のビジネス・クリエーション・センター、コピーライター兼電通ロボット推進センター代表の西嶋賴親氏は、「『子供たちの夢や希望になりたい』という想いから始まりました。ロボットの先進国である日本が、世界で初めて『会話するロボットを宇宙へ送り込む』というミッションのもと、トヨタ、東大、ロボ・ガレージ、電通の4社が取り組みました。KIROBOが帰還したあと、このプロジェクトが英語の教科書に採用が決まったり、東京オリンピック招致に活躍したりと、予想以上に反響が大きく、非常に嬉しかったです」と語った。
トヨタ自動車の製品企画室主査、片岡史憲氏は「4歳の頃アポロ月面着陸のニュースを目の当たりにしたこともあり、私は、もともと宇宙飛行士になりたかった。残念ながら宇宙飛行士になれなかったが、KIROBOが宇宙に行ってくれたことで、自分の夢をKIROBOが叶えてくれたと思っています」と、KIROBOの帰還を喜んだ。
そして、ロボ・ガレージ代表取締役社長兼東京大学先端科学技術研究センター客員研究員の高橋智隆氏は「トラブルもいろいろありました。僕は将来KIROBOのようなヒト型コミュニケーションロボットが、相手のことを理解し、人と人のコミュニケーションを助けてくれる存在になると思っています。そうした将来のツールに近いものは既にあります。それはスマートフォンです。このデバイスが持つ『音声認識』機能は、意外と使われていなません。僕らは、自宅で飼っている金魚や猫に話しかけるのに、四角い形をしているスマートフォンには話しかけないのです。その心理的な壁を打破するためには、ヒト型のロボットのような通信端末といっしょに暮らせばいいのではと、未来のイメージを描きました。インターフェースが『ヒト型』であることが大事で、そんな「目玉のおやじ」みたいなロボットと暮らす未来が来ると思います」と将来を展望した。
そこへ、「KIROBO」が登壇し、「こんにちは。僕、KIROBOです。よろしくね。地球はまるで、青色LEDみたいだった。輝いていたよ」と挨拶すると、会場は大きな歓声でKIROBOの帰還を歓迎した。
高橋氏は、今回の実験内容について「地上では、電磁波の干渉試験なども実施した。KIROBOが出す電磁波で、国際宇宙ステーションに影響を及ぼすことがないように、逆に国際宇宙ステーションの電磁波から、KIROBOが誤作動してしまうこともないように、いろいろと試験を繰り返しました。また、宇宙に旅立ってからKIROBOが壊れてしまうと、修理できないということから、バックアップ用のロボットを用意しました。それが地上用の『MIRATA』です」と紹介した
片岡氏は「実は7時間、KIROBOが動かない、しゃべらないというフリーズの時間がありました。地上のスタッフは困り果てたけど、あきらめず、アポロ13号の“奇跡の生還”のように、地上でできる限りのことをトライしました」と語り、そこへ西嶋氏が「いろいろと原因を究明していくうちに、短いケーブルがあるとフリーズが解決するということがわかったのです」と続けるなど、実験の困難な状況を振り返った。
地上用MIRATAがバックアップクルーとして活躍し、宇宙と同じ状態でMIRATAを使い、ときには解体しながら、何が原因かをつきつめた。「MIRATAが身体を張って、がんばってくれたこともあり無事解決しました」(片岡氏)と、宇宙と地上との連携が奏功したと語った。
その後、来場した子供たちから「KIROBO」や開発者への質問コーナーへ移行。高橋氏は、「いま、われわれの身の回りでは、機械とコミュニケーションする時は、画面をタッチしたり、リモコンを操作したりするけれど、これからは、機械とコミュニケーションがとれて、信頼関係が結ばれる時代になります。たくさんあふれている機械や情報の間にロボットが入って、身の回りの機械をコントロールしてくれたり、必要な情報だけを届けてくれるような、豊かな暮らしがやってくるはずです。5年以内にそんなシーンがやってきたらいいと考えています」と今後を展望した。
そして、高橋氏は、「ロボットは、日々進化しています。どんな分野でも、会社でも、僕たちの暮らしでも、これからは、ロボットとの接点があるはずです。ロボットと共生する未来は、専門家ばかりが考えていても実現しません。ぜひ、みんなの仕事や勉強と、ロボットを掛け合わせて、やわらかいアイデアを生んでもらいたい。これから、ひとり1台のロボットと暮らす未来が来るはず」と会場の子どもたちに呼びかけた。
片岡氏は、「さきほども伝えたように僕は宇宙飛行士になりたいという夢を追いかけてきた。宇宙飛行士にはなれていないけど、こうしてKIROBOと出会い、KIROBOが夢を叶えてくれました。みんなも夢を持ち続けてほしい。この今も、過去の誰かが考えた未来だと思います。僕たちはKIROBOのようなロボットと人々が暮らす未来を描いてきたけど、みんなは次の未来をつくってもらいたい」と集まった子どもたちにメッセージを贈った。
西嶋氏は「僕は最近になって大学院に入学し、深夜に若い学生達と実験を繰り返したり、様々な勉強を重ねてきました。そのようにたくさん勉強することはもちろん大事だけど、ただそれ以上に、小さいころに夢や未来を一生懸命考えることが大切だと思います。大人になったとき、自分が何をしたいかを、色々考えたり、お父さんやお母さん達と話したりしてほしい」と語りかけた。
最後にKIROBOから「いつか僕といっしょに、冒険しようね!」というメッセージが送られると、会場全体が拍手に包まれた。(編集担当:風間浩)
電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力のもと、ロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」を国際宇宙ステーション(ISS)に滞在させ、共同研究“KIBO ROBOT PROJECT”を推進してきた。
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2015-05-18 16:30