「日本の高校サッカー」が中国人の心を激しく揺さぶった理由

1月13日に行われた全国高校サッカー決勝で、富山第一(富山)が2点ビハインドの後半42分から奇跡的な大逆転で星陵(石川)を下し、初の全国制覇を成し遂げました。あの中継を見て「人生、最後まで諦めちゃダメだ」と思ったサッカーファンも多かったことでしょう。私もその1人です。高校生とはいえ、鳥肌が立つような記憶に残る試合でした。
■3日で86万回も再生された「全国高校サッカー決勝戦」
しかし、そう思ったのは我々日本人だけではありませんでした。高校スポーツの大逆転劇は、すぐに中国へも飛び火しました。なんと、1月14日の新浪視頻のトップページに高校サッカーの動画が掲載され、中国メディアのアカウントを経由し、16日時点で、再生回数は86万回を超えmした。
動画は富山のローカル局が優勝当日制作した夕方のニュースリポートで、中国語の字幕もないのですが、サッカー好きの中国人にはかなりの衝撃だったようです。
人気の中国スポーツメディアのアカウントは、動画をこう評しました。
「われわれが語るべきなのは、レベルの問題だけじゃないよ。満員の6万人のスタジアム、ハイレベルな中継、スポーツバーの観客、学校のサポーター、タクシーの運転手までが注目している。ただの高校生の試合に、恐るべきことだ」
「この動画はおすすめせざるを得ない。これぞサッカー版<スラムダンク>」
「青春と熱血は満員の国立競技場上空を飛びかっている」
これを見た中国人ネットユーザーも、
「これが本当に高校生の試合なの?」
「この逆転、まるで『キャプテン翼』」
「日本人って、恐ろしい」
「中国と日本の差は涙が出るほど大きいな」
「第92回って。。。」
「こんなのうらやましい」
「見終わって泣けた。衝撃だった」
「一体うちの高校生は何してるの? 大学受験で頭がいっぱいだ」
「高校生の大会に、こんなに熱狂するなんて信じられない」
「中継がすごい。うちの国内リーグでも使わない空撮や手ぶれ防止カメラまで使っている。」
などなど、動画の様子に驚愕するコメントが寄せられました。
■読み取れる「日中の違い」と「中国人の苦悩」
このコメントからは、様々な日本と中国の違い、また中国人の苦悩が読み取れます。中国でのサッカーの人気は高いものの、長く低迷し、結果を出せない自国のサッカーは酷評され、将来に失望感が漂います。そうした中で、高度な個人技としっかりとした組織プレーを展開する日本の高校生チームがまず衝撃でした。
また、「キャプテン翼」や「スラムダンク」の漫画やアニメの世界だけと思われていた高校生の全国大会が、日本で実際に開催されていたことも衝撃だったのです。そこには技術を駆使した全国中継があり、多くのサポーター押し寄せる競技場がある。そして、プロでもない、国際試合でもない、高校生の試合に人々が懸命に声援を送って熱狂している。中国では到底想像できない光景があったのです。
■背景にある「学業最優先の教育システム」
彼らが驚く背景には、学業最優先、大学入試へ一直線の中国の教育システムがあります。
基本的に大学に進学できなければ安定した生活は実現困難であり、「もし勉強の時間を削って学校でサッカーをやらせたら、父兄から即クレーム」は現実的な反応でしょう。子どものころからスポーツに親しませるのが中国サッカー全体の底上げに不可欠と解っていながらも、どうにもならないサッカーファンのジレンマが感じられます。
さらにそのジレンマには、中国人は受験戦争のために青春を犠牲にしているとの自覚の一方で、好きなものに全力で情熱を傾けられる日本の高校生への憧れが多分に含まれています。「青春」という表現や、「感動で涙が出た」というコメントが多いところを見ると、現在多くの中国人は、選手たちのようなキラキラ光る若者らしい体験を最も求めているのかもしれません。
日本の高校生のひたむきな姿は、国や言葉を超えて感動として伝わることが解りました。またチームワークや自分の信念を貫く大切さも、動画から中国の人たちに伝わったと思います。そして、社会システムの違い、価値観の違いまでも、伝わったようです。
アニメ漫画だけでなく、双方の若者同士が現実の中で興味を持つのが重要になってきます。その1つとして高校サッカーへの反応は、新鮮でもあり大きな発見です。(寄稿者:米村美樹子 提供:中国ビジネスヘッドライン)
1月13日に行われた全国高校サッカー決勝で、富山第一(富山)が2点ビハインドの後半42分から奇跡的な大逆転で星陵(石川)を下し、初の全国制覇を成し遂げました。
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2014-02-05 09:15