USハイ・イールドは良好な投資環境が継続する、米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーのリサ・カスパリアン氏に現状と展望を聞く

「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」は、2015年4月末現在で過去1年間のトータル・リターンが19.48%と好調な運用成績を残している。今後、米FRBによる利上げが予想され、米国の金融政策が転換期を迎えた現在、これまでのような良好な運用パフォーマンスを残していくことができるのだろうか? 米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーの機関投資家ポートフォリオ・マネジャーとして米国のハイ・イールド債券市場に精通するリサ・カスパリアン氏(写真)に、米国のハイ・イールド債市場の現状と、今後の展望について聞いた。
――日本の投資信託市場ではようやく市民権を得たハイ・イールド債券ですが、アメリカの個人投資家は「投資適格債券」と「ハイ・イールド債券」の違いを正確に理解して投資しているでしょうか? 日本ではハイ・イールド債券は利回りが高いと理解はされていますが、それに付随するリスクについてはまだまだ理解されていないように感じます。
米国の投資家は、過去長い期間を通じてハイ・イールド債券に投資するミューチュアル・ファンドに投資してきているので、投資適格債券とハイ・イールド債券の違いは、ほぼ理解していると思います。
長期的なパフォーマンスを見ると、ハイ・イールド債券は、絶対リターン、および、リスク調整後リターンとも、非常にすぐれた効率的なパフォーマンスを計上してきました。ただし、個人投資家が直接ハイ・イールド債券市場にアクセスすることはできないため、ファンドを通じた投資が一般的です。
――ある報道で見たのですが、ハイ・イールド債券市場にはIPOに参加できる会員制クラブのようなものがあるとのことですが、入会条件はハイ・イールド債券を大量に購入する大手資産運用会社、またはブローカーなのでしょうか? 一般投資家と機関投資家の間でハイ・イールド債券に関する情報格差があるのでしょうか?
いいえ。ハイ・イールド債券投資に関する「会員制クラブ」のようなものはありません。私は、一般投資家や機関投資家を問わず、ハイ・イールド債券市場には入手可能、かつ、良好な情報がたくさんあると思います。
――日本ではハイ・イールド債券市場は、事実上存在していませんが、アメリカでこれほどハイ・イールド債券市場が拡大した要因は? 一方、米国ではどの程度の規模(売上・利益など)の企業であれば、市場から直接資金調達できるのですか?
ハイ・イールド債券市場は長い期間を通じて、旺盛な投資家の需要に支えられ、市場が拡大してきました。ハイ・イールド債券を含む銀行を介さない直接の資金調達額は、今日では総額2兆2000億ドル市場に成長しています。
ハイ・イールド債券市場を見ると、1100社以上の企業が債券を発行し、市場規模は1兆4000億ドルに達します。また、1本あたりの平均発行金額は約5.7億ドルです。中堅企業から、大規模なグローバル・多国籍企業を含む多様な企業がハイ・イールド債券を発行しています。
――ハイ・イールド債券市場にリスクがあるとすれば、どのようなことが考えられますか?
ハイ・イールド債券市場における最大のリスクは、デフォルト(債務不履行)のリスクです。経済環境が厳しい期間に高まります。今のところ、米国経済は緩やかに成長し、企業は依然として企業の起債環境は良好です。また、今後2年間で、大型債券の満期なども存在しないため、当面の市場のデフォルトリスクは低いと考えます。
過去12カ月間のデフォルト率は2%程度であり、信用調査機関が予測するデフォルト率は、2.5%~3%程度に収まっています。これは長期の平均年間デフォルト率5%を依然として下回った水準です。
――アメリカではFRBが利上げのタイミングを模索していますが、今回の金利正常化への動きがハイ・イールド債券市場に与える影響は?
ハイ・イールド債券は、投資適格債券よりも高いクーポンがあり、“スプレッドクッション”が存在するため、投資適格債券よりも金利上昇の影響を受けにくいという性格があります。ただ、債券という資産クラスの性格上、金利上昇の影響が全くないとは言えません。金利上昇がハイ・イールド債券市場に影響を与える際には、金利が上昇する際のスピードと変動幅に関係があります。
経済が拡大する過程でたとえ金利が上昇したとしても、高い収益力を持ったハイ・イールド債券発行企業は業績拡大の恩恵を受けます。金利が、ゆっくりと程よいスピードで上昇していく場合には、典型的なケースとして、この利上げを吸収し、ハイ・イールド債券の運用ではプラスのパフォーマンスを投資家に提供することができます。(編集担当:徳永浩)
米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーの機関投資家ポートフォリオ・マネジャーとして米国のハイ・イールド債券市場に精通するリサ・カスパリアン氏(写真)に、米国のハイ・イールド債市場の現状と、今後の展望について聞いた。
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2015-05-21 10:45