中国行政訴訟法―行政訴訟で勝てる時代が到来しました(2)

 前回に続き、中国行政訴訟法が、国民、法人の行政訴訟のための便宜を図る目的で加えた新制度を紹介します。 ■1. 人民法院は「紅頭文件」の合法性を審査できます  「紅頭文件」とは、厳密には法律用語でありません。行政機関内部でよく使われている、内部において規範力を持つ公文書のことを指します。  新行政訴訟法第53条は、「国民、法人或いはその他組織は、行政行為が依拠している国務院部門、地方人民政府及びその部門が制定した規範的文書が違法であると考えた場合、併合して当該規範的文書の合法性に対する審査を請求することができる」と規定しています。  司法解釈第2条はさらに、人民法院は上記規範的文書が違法であると認定した場合、行政行為の合法性の根拠として適用せず、かつ判決理由において説明するとしており、新行政訴訟法の下で、人民法院は上記のような規範的文書の合法性に関して直接判断することができるようになりました。  しかし、上記規範的文書には、国務院各部が制定する「規章」は含まれないため、やや不足が感じられます。なお、規範性文書の合法性の審査に関しても、当事者は具体的行政行為に対する訴訟提起と併合して請求する必要があり、その合法性の審査のみを請求する訴えはできません。 ■2. 不服申し立て行政機関、もう逃げられません  違法な行政行為に対する救済制度として、その上級行政機関に対する不服申し立ては、なじみの深い制度です。しかし、中国において、不服申し立て制度は上級行政機関が下級行政機関を庇う制度であると思われてきたし、また、不服申し立て行政機関は、元の行政行為を変更する結論を出した場合に、旧行政訴訟法では行政訴訟の被告になるため、なるべく行政行為を維持する判断を下すのはほとんどでした。  しかし、新行政訴訟法第26条第2項は、不服申し立て機関が元行政行為を維持した場合に共同被告になると規定しており、今後不服申し立て機関も積極的に違法な行政行為の是正に努めるでしょう。 ■3. 行政機関は判決の執行をもう拒否できません  行政訴訟では、「訴訟受理難、審理難、執行難」等の難しい問題がります。「訴訟受理難」とは「訴訟を受理してくれない」、「審理難」は「審理してくれない」の意で、どちらも人民法院自身の問題ですが、「執行難」は、人民法院の判決を行政機関が執行しないことを指します。新行政訴訟法では、これらの問題がすべて解決されました。特に執行難に関して、新行政訴訟法第96条は、以下のような規定を設けました。 (1) 返すべき罰金或いは給付すべき金銭に関して行政機関の銀行口座から直接支払う。 (2) 執行期間満了した場合、行政機関の責任者に対して満了日から1日当たり50人民元から100人民元の罰金を課す。 (3) 行政機関の執行状況を公告する。 (4) 監察機関あるいは上級行政機関に対して司法建議(司法提案)を行う。司法建議を受理した機関は、関連規定に従って処理し、その結果を人民法院に告知する。 (5) 判決、裁定、調停書等を執行せず、その影響が社会的に深刻な場合、行政機関の主管責任者及びそのた直接責任者を拘留することができる。情状が重く、犯罪を構成した場合、刑事責任を追及する。 ■4. 行政訴訟で勝訴できる時代が来ました  中国において、民事訴訟と違って、行政訴訟はだれもができれば避けたいと考えがちな訴訟です。その理由は主に、行政訴訟は行政機関を相手にすることであり、勝ことは難しいと考えられているからです。  しかし、新行政訴訟法の下では、行政訴訟は勝訴できる時代が来ていると思います。  なぜなら第1に、地方政府の違法行為等を中央政府は監視しきれない状況になり、裁判所の力で監視せざるを得ない状況になっているからです。第2に、司法システムによる地方官僚に対するコントロールを許可している等の原因が考えられるからです。行政訴訟における地方行政機関の力関係を排除するために、国は行政訴訟法を改正する、行政地区を跨る行政訴訟受理裁判所を設立するなどの努力をしています。(つづく)(執筆者:エレドン ビリゲ(額尓敦 畢力格) 提供:中国ビジネスヘッドライン)
前回に続き、中国行政訴訟法が、国民、法人の行政訴訟のための便宜を図る目的で加えた新制度を紹介します。
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2015-05-21 13:45