中国における商業賄賂とリスクマネジメント -商業賄賂の諸像・独占販売契約

表題を見て、独占販売契約も商業賄賂として認定されるのと驚く人もいるでしょう。しかし、地域によって商業賄賂として認定している工商行政管理局は多くあります。
■1.商業賄賂として認定された事例
独占販売契約を締結した行為が、商業賄賂として認定された事例として有名なのは「青島ビール事件」でしょう。青島ビールと言えば、日本でも有名な中国のビールであることはご承知のとおりです。
2006年に河南省洛陽市工商行政管理局は、青島ビールの洛陽市販売店が市内の30軒のレストランと独占販売契約を締結し、金銭を供与する代わりに、青島ビールだけを扱ってもらい、不当な利益を上げているとして取締りを行いました。
その後も青島ビールは、いろいろな地方で同じく取締りを受けています。
■2. 商業賄賂ではないと認定された事例
上記の青島ビールに対する処罰と逆に、裁判所で逆転勝利を収めたのは、福建省龍岩市のビン西ホテル事件です。(「ビン」は門がまえの中に「虫」)
2003年に龍岩市工商行政管理局が、吉馬会社がビン西ホテルに対して、独占販売契約を締結し、ビン西ホテルは9カ月間にわたり、吉馬会社から7万人民元以上の金銭を受け取り、これが商業賄賂にあたるとして認定し、行政処罰を行いました。
ビン西ホテルは、当該行政処罰行為を違法な行政行為として裁判所に訴えを提起し、二審を経て勝訴を勝ち取りました。
■3. 独占販売契約の内容は何ですか
とにかく、酒類販売業者とレストラン、ホテルの間でよく行われている行為です。酒販売者がレストランやホテルに対して、自社の酒のみを販売してもらうために、毎月1いは1年毎に一定額の金銭を支払うことを言います。
さらに、レストランやホテルの従業員に対しても、自社酒を積極的にお勧めしてもらうために、例えばビールの場合、ビール瓶の蓋1個に対していくらを支払うとの約定もします。レストランでお酒を注文する際に、従業員が強く勧めする酒はほとんど上記のような方法を取っている会社のものです。
■4. 裁判所が行政処罰を取消した理由は何ですか
ビン西ホテルの場合、工商局は行政訴訟の一審、二審とも敗訴でした。
一審判決の理由は、ビン西ホテルの独占販売契約行為は「その他の経営者の適法な権益を侵害し、社会秩序を乱す」という実質的要件を満たしておらず、単に金銭を受け取っただけで商業賄賂行為として認定するのは妥当ではない、でした。
さらに、工商局は当該金銭に関して第三者は帳簿に明示的に記載しないで代金を値引きしたこと或いは第三者が代金等以外に不当な利益を供与したことを立証せずに商業賄賂行為として認定することは違法であるとしました。二審判決も一審判決を維持しました。
■5. 行政訴訟も勝訴できると信じましょう
近年行政当局は盛んに、商業賄賂、環境分野等のさまざまな分野で行政調査権を発動し、企業に対して処罰を行っています。
しかし、上述のとおり、処罰裁量権を不当に行使している行政機関も少なくありません。昔は行政機関を訴えてもどうせ勝てないだろうと思われていましたが、そのような時代はもう過去となりつつあります。違法な行政処罰に対して、法律という武器をもって、きちんと対応すれば勝訴できると信じましょう。(つづく)(執筆者:エレドン ビリゲ(額尓敦 畢力格) 提供:中国ビジネスヘッドライン)
表題を見て、独占販売契約も商業賄賂として認定されるのと驚く人もいるでしょう。しかし、表題のとおり、地域によって商業賄賂として認定している工商行政管理局は多くあります。
china,column
2015-05-21 13:45