A-REIT、過去3年の年率平均20%超成長で注目高まる豪州REITの魅力
世界のREIT(上場不動産投信)の中で、最大の米国に次ぐほどの歴史と規模を誇るオーストラリア(豪州)のREIT市場が、徐々に存在感を高めている。リーマン・ショックからの立ち直り局面で欧米や日本・アジアの市場にパフォーマンスが劣後していたが、世界的な量的金融緩和を受けて過去3年間では年率22%の高いパフォーマンスを残している。世界のREIT市場のパフォーマンス比較でも、2013年4月末から2015年4月第3週まででは、第1位の欧州(45.8%)に次いで30.7%と、日本(25.7%)、米国(17.4%)を超えるパフォーマンスになっている。DIAMアセットマネジメントが2015年5月21日に開催した豪州REIT市場についてのメディア向けセミナーを取材した。
先進国の中で、金利水準が高い国として豪ドル、豪州債券に対する投資家のニーズは強い。国内の公募投信で豪ドル債券に投資するファンド数は56本、豪州株式に投資するファンドは19本と、人気のあるカテゴリーだが、豪州REITに投資するファンドは6本(うち4本は2015年3月以降に設定)と少ない。
■米国に次いで日本と並ぶREITの市場規模
豪州REIT市場の創設は1971年と米国(1960年)、オランダ(1969年)に次ぐ歴史があり、市場規模(2015年3月末)も約9.8兆円と世界最大である米国(約88.6兆円)に次いで日本(約10.1兆円)と肩を並べるほどの規模がある。にもかかわらず、日本で豪州REITへの投資が普及しなかった背景について、DIAMアセットマネジメントREIT運用グループ グループリーダーの佐藤紀行氏は、「豪州REITは日米とは違って収益の90%以上を配当するなどの規制がなく、リーマン・ショック後に無配になったところもある。このため、リーマン・ショック後の回復局面で世界のREIT市場に対して豪州REITのパフォーマンスが劣後するということもあった」と語っている。ただ、「近年は、配当状況は平常に復し、豪州経済のファンダメンタルズに則して投資判断ができるようになってきた」とし、豪州REITの復調とともに豪州REITファンドへの資金流入も活発になっているという。
■小売売上高の堅調を背景にREITパフォーマンスも好調持続
DIAMアセットは業界に先駆けて4年前から世界のREIT運用を自前の運用に切り替え、世界各国のREITについて、CFOやCEOとの面談・取材を重ねながらREIT運用にあたっている。佐藤氏は、「オーストラリアの不動産証券化は先進国の中でも相当に進んでいる。シドニーの空港から市街に向かうことを考えても、空港や幹線道路は100%証券化され、市街地のビルも70%は証券化されているという状況。一時期は、あまりに証券化が進んでいるため、豪州REITは国内に有望な投資先を見いだせなくなって積極的に海外投資を行っていた時期がある」というほど、豪州には豪州REITにとって安定した基盤がある。
豪州REITは、現在49銘柄が上場しているが、機関投資家が投資可能な流動性がある銘柄は31銘柄。また、セクター(業種)別構成比率は、小売47.6%、複合27.5%、産業11.7%、オフィス10.7%、特殊1.8%、住宅0.3%、ヘルスケア0.3%になっている。日本のJ-REITがオフィス中心に構成されていることとは異なる比率だ。佐藤氏は、「世界の標準的なREITは小売セクターが中心。総合スーパーなどの大型店をアンカーテナントとし、専門店を組み合わせたショッピングモールが典型的なREITの投資案件になっている。オーストラリアの小売は、2000年以来堅調に続く個人消費の拡大を受けてポジティブな経営環境にある。また、豪中銀による度重なる豪ドル高けん制発言で豪ドルの水準は対米ドルで低下し、この影響は、国内の消費市場にプラスに働いている。実際に、豪州では豪ドル高で進んだネット通販を通じた海外購入が国内に回帰しているという現象も起きている」と語り、豪州の小売売上高の伸長が豪州REITのパフォーマンスにプラスに寄与するとの見方を示した。
■国債との利回りスプレッド、FFO倍率などで「心地良い」水準
一方、豪州REITの現在の価格水準について、2013年3月末時点で豪10年国債利回りが2.32%に対して配当利回りが5.42%であり、「利回り格差が3%程度というのは、豪州REIT市場の歴史からは割安でも割高でもない水準」と解説。また、REITの水準を測る指標として用いられるFFO(Funds From Operations)倍率の水準が2010年に20倍を超えていたものが、2014年予想では15倍程度にまで低下してきていることを紹介し、「FFO倍率の観点からも、豪州REITの水準は、心地の良い位置にいるとみることができる」と語っていた。
■A-REITファンドは毎月200円の分配金で純資産500億円突破
その後、DIAMアセットマネジメント情報サービスグループ グループリーダーの花村泰廣氏が、同社が運用する「DIAMオーストラリアリートオープン(愛称:A-REIT)」(設定日:2012年6月21日)と、同ファンドの関連資料について紹介した。
5月19日に発行された「ファンド通信」において、5月5日に実施された今年2度目の利下げについて「10年国債利回りなどの金利は当面、低水準で推移し、リート市場も底堅く推移するとみられます」と紹介。また、2015年2月から1万口当たりの分配金を毎月200円に引き上げて以降、ファンドの純資産総額が急拡大し、2015年4月末には純資産総額が500億円を超えたことを報告した。
そして、花村氏は「個人投資家の間で高金利の豪ドル建て資産についてのニーズは強く、豪ドル債券などは相当広く投資されているが、A-REITも豪ドル建て資産の分散投資先のひとつとして検討していただきたい」と語っていた。(編集担当:徳永浩)
世界のREIT(上場不動産投信)の中で、最大の米国に次ぐほどの歴史と規模を誇るオーストラリア(豪州)のREIT市場が、徐々に存在感を高めている。DIAMアセットマネジメントが2015年5月21日に開催した豪州REIT市場についてのメディア向けセミナーを取材した。
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2015-05-22 20:45