中国は一部地方の景気失速に危機感、底割れ回避に必死の下支え=大和総研

 大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は「中国:景気底割れ回避に必死の下支え」というレポート(全10ページ)を2015年5月22日に発表した。実質GDP成長率が7.0%と6年ぶりに低い伸び率となった中国では、地方経済に目を向けると「景気失速」といえるほど成長が鈍化している事例があり、中国では追加金融緩和などの景気下支え策が継続されるだろうと見通している。レポートの要旨は以下の通り。 ◆2015年1月~3月の実質GDP成長率は前年同期比7.0%と、6年ぶりの低い伸びとなったが、これはあくまでも平均である。地方別には遼寧省同1.9%、山西省同2.5%など重工業依存度や資源・素材依存度の高い一部地方の景気は失速といえる状況に落ち込んでいる。 ◆その後も中国の景気は一段と減速している。2015年1月~4月の固定資産投資は前年同期比12.0%増と、1月~3月の同13.5%増からも減速。4月の実質小売売上は前年同月比9.9%増と、相対的に堅調だった消費にも減速感がでてきた。実質小売売上の伸びが10%を割り込んだのは、旧正月の時期のずれの影響を除けば、2004年10月以来となる。 ◆景気下支えを目的に、中国人民銀行による金融緩和は本格化しているが、大手行の預金準備率は18.5%と高く、追加引き下げ余地は大きい。 ◆地方政府融資平台のプロジェクトについては、5月15日に財政部、中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会が、融資継続を指示する旨の「意見」を発表。その内容をみると、建設プロジェクトの継続が最優先され、銀行融資の健全性維持は脇に置かれた感が強い。 ◆景気下振れリスクは依然として高く、今後も必死の下支えが続こう。少なくとも2014年秋までは、無駄な投資と借金を抑制し、産業構造の高度化や成長の質的向上を目指すという明確な政策意図を持った景気下支え策が実施されてきたが、下振れリスクが高まるにつれて、改革による質的向上というよりも、景気底割れ回避が前面に打ち出されるようになってきた。投資・投機の増大を容認した住宅市場のテコ入れ策然り、地方政府融資平台プロジェクトの継続最優先然りである。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、実質GDP成長率が7.0%と6年ぶりに低い伸び率となった中国では、地方経済に目を向けると「景気失速」といえるほど成長が鈍化している事例があり、中国では追加金融緩和などの景気下支え策が継続されるだろうと見通している。
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2015-05-25 08:30