「出国停止」中国に住む外国人にとっての最大のチャイナリスク

先日までのニュースで、産経新聞社のソウル支局長が出国停止になったという話をよく目にした。この件に関して日本の報道は、報道の自由を侵害するとか、人権侵害だという論調だったのをよく覚えている。
中国でも「出国停止」という措置が頻繁に行われているという事を皆さんはご存知だろうか。私の聞いた所によると、実に上海市だけで、1万人以上の人間にこの措置が取られているという話である。出国停止が掛かっている人の90%以上は、中国籍の人間だが相当数の外国人もいるとの事だ。
中国で「出国停止」を掛けられる内容は大きく以下の3通となる。
1. 刑事事件
2. 民事訴訟
3. 労働争議
ここで、問題となるのは民事訴訟と、労働案件で「出国停止」の措置を当局が掛ける事が出来るという点である。
刑事事件は当たり前としても、民事や労働仲裁案件で出国を制限されては、私たち外国人にとってダメージは計り知れない。
この仕組みは、多くの中国人が脱税して海外に逃亡する等の行為を防ぐためとの話であるが、最近は中国に住む外国人にとっての最大のリスクと考えられるようになっている。
それは、外資企業で労働争議が起きた際に、董事長や総経理といった要職者に対して出国制限を執行して雇用サイドに圧力を加え、労働仲裁案件をより有利に進める事が可能になるからだ。近年、この措置の乱用のきらいのあるケースを散見するようになってきている。
この話を聞いて皆さんは「駐在員は大変だ」と思うかもしれませんが、この件に関して大変なのは駐在より、日本サイドから非常勤で、董事長や董事として名前を登録している人間である。
つい最近、私は労働仲裁案件で解決のために入国した所、既に出国停止措置が取られていた為、出国不能になったという日系企業の役員の話を聞いた。
駐在員は基本的に中国で生活基盤を持っているので、多少長丁場になっても生活にすぐ影響は出ないが、出張ベースの人にとっては一大事だ。
労働仲裁委員会からは郵送で現地法人宛に、通知されていたようですが、内容を確認せず放置していた為に、全く気が付かず中国に入国してしまったとの事だった。中国では通知書がEMS等で郵送されてくる。誰か(送付先の誰でも可)が受け取った瞬間に、有効性を持ってしまう。
このケースの場合、案件を解決させるか、相応のデポジットを当局に積まない限り出国が認められる事はない。まるで蟻地獄のように該当者を待ち構えている訳だ。
労働争議や民事案件が発生した時は、速やかに該当者または責任者を出国させ、その上で事態を処理する事が一番重要になってきます。犯罪でもなく、日本では全く考えられない内容だが、従業員を守る為に、チャイナリスクとしてしっかり認識する必要があるだろう。(執筆者:武田 康夫 提供:中国ビジネスヘッドライン)
先日までのニュースの話題で、産経新聞社のソウル支局長が出国停止になったという話をよく目にした。この件に関して、報道の自由を侵害するとか、人権侵害だという論調だったのをよく覚えている。
china,column
2015-05-27 12:15