中国の金融政策の現状と課題、大和総研が経済成長鈍化への備えの必要性を提言

 中国の景気下振れリスクの増大に対応した金融政策は、供給サイド(銀行)の貸出しを増やすばかりでは、将来的な不良債権が増えるリスクを高める。中国は、日米欧の量的金融緩和について研究を進め、今後の対応を準備する必要がある。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2015年6月1日、『大和総研調査季報』(2015年春季号)に「中国の金融政策の現状と問題点、必要とされる将来への備え」(全10ページ)を発表した。中国人民銀行の金融政策を振り返るとともに、今後の課題を展望している。レポートの要旨は以下の通り。  中国人民銀行はマーケット機能を重視した金融政策体系の構築に取り組んできたが、それでもなお中国で最も有効な金融政策は窓口指導や貸出総量規制である状況に変わりはない。  足元の景気下振れリスクの増大に対応するため、中国は金融緩和を実施している。中小・零細企業向けの貸出を増やすという中国人民銀行の政策的意図を実現するために、窓口指導や貸出増加指示など行政指導的な政策が実施されようが、こうした貸出を行政指導によって増やせば、貸出の質が劣化し、将来的な不良債権が増えるリスクが高まることには注意が必要であろう。  これまで、窓口指導や貸出総量規制が効果を発揮してきたのは、潜在的な資金需要が大きいなか、供給サイド(銀行)の行動を変えることが有効な金融政策手段であったためである。しかし、中国の成長性が中長期的に一段と低下し、資金需要が大きく減っていけば、この前提は大きく崩れる。例えば、景気刺激を目的に、供給サイド(銀行)へいくら働きかけても需要サイド(経済、企業)のニーズがなければ、金融緩和策が効果を発揮できないことは、日本の経験が示す通りである。中国が今からその研究を深め、将来に備えるのに、決して早すぎることはあるまい。
中国の景気下振れリスクの増大に対応した金融政策は、供給サイド(銀行)の貸出しを増やすばかりでは、将来的な不良債権が増えるリスクを高める。中国は、日米欧の量的金融緩和について研究を進め、今後の対応を準備する必要がある。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は中国人民銀行の金融政策を振り返るとともに、今後の課題を展望している。
china,economic
2015-06-01 10:15