ドル/円は長期上昇トレンドに転換、ユーロ/ドルは不安定局面に=外為どっとコム総研

1ドル=125円に乗せたドル/円相場の見通しについて、外為どっとコム総合研究所の研究員、川畑琢也氏は、「今回の125円乗せによって、ドル/円は長期トレンドが下落から上昇に転じたことが確認された。当面は上昇後の調整局面入りになるだろうが、再び上昇に転じて1ドル=130円に向けた動きも期待できる」と、当面の見通しを語っている。一方、ユーロ/ドルには、当面は不安定な値動きが予測されるとする。また、「1日当たりの値動きの値幅が変わったことを十分に意識して、無理のない投資戦略を組み立てることが重要」と語っている。
――6月2日に1ドル=125円の乗せたドル/円相場は、今後どのように見通していますか?
今回の1ドル=125円乗せは、ドル/円の長期トレンドを考えると、大きな意味があります。1985年のプラザ合意以来、ドル/円(月足)は長期的に上値を切り下げるダウントレンド(円高トレンド)をたどり、2011年10月に1ドル=75.32円まで下落しました。その安値を付ける前の高値は、2007年6月の1ドル=124.12円だったのですが、今回は、この高値を明確に抜き去ったことで、長期トレンドが下落から上昇に転換したとみることができます。
一方、ドル/円の週足でみたサイクルは前回のボトムから36週後が今月(6月)、46週後が8月に相当します。直近の2回は、高値更新後に調整の下押しがサイクルボトムとなり、そこから再び上昇という流れでしたので、今回も調整局面では買いを狙えると考えます。
当面の上値は、2014年12月安値115.550円から、2015年2月高値122.022円の値幅である6.472円を2015年2月高値に乗せた1ドル=128.494円がひとつのメドになると思います。この水準を抜けると1ドル=130円の大台へ向けた動きも期待できるでしょう。また、この間には、2002年12月高値の125.680円、2002年3月安値の126.400円などがあります。
1ドル=125円台に乗せたことによって、月足や週足では、そのような高値を狙える上昇トレンドに転換したと考えられます。
ただし、日足の足形は、6月1日の陽線を2日は陰線が被せる「包み足」といわれる形になっており、これが高値圏で現れると目先の調整を意味します。長期のトレンドは上昇に転じたものの、足元は調整入りが考えられます。その際の下値のメドは、2013年からの上昇波で下値を支持してきた一目均衡表の基準線(1ドル=120円近辺)が一つのメドです。また、2013年1月から4度の調整局面を調べると、下落幅は4.44%~9.59%になっており、これを1ドル=125.040円という高値を起点として計算すると、119.488円(4.44%)~113.051円(9.59%)になります。
したがって、当面予想されるレンジは、上値は1ドル=128円、下値は120円と考えます。
――ユーロ/ドルは6月2日にギリシャ問題の進展を感じさせる報道が出たことなどによって、大きく値上がりし、1ユーロ=1.1ドルを越えました。当面の見通しは?
ユーロ/ドルについては、ECBと米FRBの金融政策を巡って、さまざまな情報が出やすく、大きく動きやすい局面に入っています。ECBのテーパリング観測がくすぶる中、6月2日のユーロの上昇は、インフレ動向に気を配っているECBに対し、発表されたユーロ圏のCPI(消費者物価指数)が市場の予想(+0.2%)を上回る+0.3%だった事や、ギリシャの問題の進展を期待させる報道が相次いだ事から、ユーロが大きく上昇した。
ただ、米国の雇用統計の発表等によって、米国の利上げ観測が高まれば、一転してドル高に振れることも予想され、その時々の情報によって価格が反応する不安定な相場が続きそうです。ギリシャ問題は、このまま協議が続くばかりでは、6月末に向けてリスク要因として強く意識されることになります。
テクニカル的にみても、2日の上昇によって一目均衡表の転換線を抜けて上値余地の拡大が考えられるものの、1ユーロ=1.1516ドルの水準には基準線があり、2014年4月高値1.39933ドルから2015年2月安値1.04623ドルまでの下げの3分の1戻しである1.16393ドルなど、1.15ドルから上には複数の目標値があります。このため、力強い上昇局面が続くとは考えにくい展開です。
下値は、日足の一目均衡表の転換線である1ユーロ=1.10136ドル近辺、または、雲の上限である1.09562ドルに向けた一段安はあり得るとみます。したがって、当面予想されるレンジは、上値が1.15ドルで、下値は1.08ドル程度と考えます。
――その他、注目されている通貨ペアは?
ポンド/円が、いわゆる三役好転など非常に力強い上昇局面にあります。リーマンショック前の高値1ポンド=251.070円から2011年安値の116.800円の下げの2分の1戻し(183.935円)を抜けています。次の節目である2008年3月安値192.460円を越えれば、1ポンド=200円にトライする動きになると思います。
ただし、今年4月の1ポンド=175円割れの水準から、5月末には190円台乗せと、急速に上昇した後であり、上値の重さも意識される値動きになっています。ここから押し目を待って投資のタイミングを図りたいところです。
これまでの上昇局面においては、週足では一目均衡表の雲の上限が強力な下値支持線として機能してきました。現在の水準は、1ポンド=180円近辺です。また、日足では今年4月以降は引値で転換線がサポートされる流れが続いています。現在の転換線は1ポンド=189円近辺ですが、この水準を引値で下回るようであると、基準線(1ポンド=185円台後半)に向けた下押しも考えられます。
現在、1ドル=120円台を超えてきたため、クロス円の1日の値幅が大きくなってきています。一日のドル/円の平均高安を見ても1ドル=100円以下の水準で推移していた2012年では60銭弱でしたが、今年に入ってからは約90銭となっています。ポンド/円は1ポンド=200円に接近していますので、こちらも一日の平均高安は2012年の1円20銭弱から今年に入ってからは1円70銭程に上昇しています。このように、値幅の水準が変わってきていることを十分に意識してFX投資に向き合うことが重要になっていると思います。(編集担当:徳永浩)
1ドル=125円に乗せたドル/円相場の見通しについて、外為どっとコム総合研究所の研究員、川畑琢也氏は、「今回の125円乗せによって、ドル/円は長期トレンドが下落から上昇に転じたことが確認された。当面は上昇後の調整局面入りになるだろうが、再び上昇に転じて1ドル=130円に向けた動きも期待できる」と、当面の見通しを語っている。
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2015-06-04 11:15